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Outdoors & Design 22

ツール・ド・ニッポン
長崎&福岡

海でひとつになる

アウトドア愛好家でありデザイナーでもあるジェームス・ギブソンは、彼の2つの情熱である「アウトドアとデザイン」を融合させ、日本のさまざまなプロジェクト、アート、クリエイティブな活動やブランドに光を当てている。

02/19/2026

冬よ、さらば!待ちに待った春がすぐそこまで来ている。この2日間、冬と春のせめぎ合いのような暴風雨に見舞われた壱岐島と志賀島をサイクリングしていた。志賀海神社 沖津宮の寒禊に参加するため、白装束に着替え始めたときに、どうやら、このせめぎ合いの勝者は春になる予感がしてきた。

今回の旅は、小松空港からANAの小型プロペラ機に搭乗することからスタートした。この機体に乗り込む時はいつもドキドキする。博多空港で、PAPERSKY Tour de Nipponのサイクリスト仲間たちと落ち合い、その後、高速ジェットフォイルに乗り、壱岐島に渡った。

車、飛行機、バス、ボートを乗り継ぎ、そして、今は自転車に乗りながら、寒禊に参加するために海に向かっている。morino café @tenで一休みして、地元の食材を使ったランチに舌鼓を打っているうちに、メンバー全員と打ち解けてきた。いつもながら、PAPERSKYは、世界各国から冒険好きなメンバーを集めてくる。

雨、サイクリング、雨天のサイクリングが僕たちの共通の話題で、日本国内のみならず、参加メンバーの母国のインドネシア、シンガポール、台湾、中国の話題も盛り上がった。

北風が吹き荒んでいたので、一時は小休止しようかというムードもあったが、我々は雨で視界を遮られながらも、笑みを絶やさず、一方に壱岐の土台石、反対側には荒れた海を見ながら、壱岐島の海岸線を走り続けた。

小さな漁師町、勝元に近づいてきた。ここには Island Brewery の醸造所がある。かつては、麦焼酎(壱岐は麦焼酎作りが盛んな土地)の醸造所だった場所をリノベーションして造られた Island Brewery は、年季が入った商店街に新風を巻き起こした。

美しいタップルームで、メンバー数人はお土産に瓶ビールを購入。Golden Aleは一番人気で、僕がその美味しさを保証する。出来立ての名物菓子「アルプス」を求めて川島栄月堂へ飛び込んでいるメンバーもいた。レモンケーキも絶品だった。

身体が徐々に冷え込んできた。風が出てきたので、最終目的地に到着する前に、その日はサイクリングを切り上げることにした。自転車から降りると、暖かく快適な自動車に乗り換えて、猿岩に向かった。

この場所をどう説明したらいいだろう。自然によって造られた奇岩だが、そっぽをむいた猿のように見える。聞くところによると、壱岐島が流れてしまわないように神様が建てた八本柱のひとつらしい。インスタの投稿を覗いてみると、わざとバナナを付け足したり、猿が口をすぼめてキスしようとしている合成写真などがたくさんあって楽しい。

僕たちは平山旅館に戻り、ゆったり風呂に浸かることにした。雨に濡れた衣服を脱いで、ゴールデンエールの生ビールで喉を潤してから、1500年以上前に発見された、日本で最も古い名湯のひとつである温泉に飛び込んだ。一日中サイクリングをした後に浸かる温泉はなんともいい気分。

温泉から上がり、もう一回ゴールデンエールを飲みながら、おいしい料理に舌鼓。なんて気持ちいいんだろう。おいしい余韻を感じながら、寝床についた。

そして朝がやってきた。

朝6時半に起きると、ひとりで朝風呂を浴びて、みんなで朝ごはんを食べた。名残惜しいが、そろそろこの素敵な旅館を後にする時間が迫ってきた。これまでの旅で、この旅館の人たちほど優しく歓迎してくれて、助けになってくれた人たちはいなかった。野菜多めで、肉が少なめという僕のリクエスト、料理によってはチーズなし、もしくは多めというルーカスのリクエスト、その他の食物アレルギーにも快く対応してくれた。

前日、びしょ濡れになった靴は、朝までに完全に乾かしてくれていた。みんなでワイワイしながら、インスタ用の写真を撮って、宿の人たちに数え切れないくらい、ありがとうとさよならを言い合った。

二隻の小型フェリーを乗り継いで、あちこち港を行き来しながら、志賀島に到着。僕たちは再び自転車に乗って集結した。今日は、この島の海岸沿いの風光明媚な場所を時計回りに回る予定だ。

志賀海神社で桜を愛でつつ、遺跡を探訪し、「SHOPヒロ」で5種類のワカメを試食し、店内の絵を楽しみながら、金印公園にも立ち寄った。ここは、みんながインスタ投稿に忙しかったので、一体何が見どころだったのかは正直わからない。そして、いよいよ身震いするような荒々しい海に入っていく禊の儀に参加する時間がやってきた。

みんなで禊用の白衣に着替えることにとまどう間も無く、いきなり雰囲気が変わり始めた。白い短パンとTシャツは、2日前にネットで購入したもので、僕はその時になって、禊の儀式で海に入ることに気づいたのだった。予め予約はしていたし、海に入って祝詞を唱える神主さんの後について行くことは名誉なことなので、この儀式への参加を諦めることは考えられなかった。

ためらいがちに海に入る人がいるかと思えば、サーファーの仲間は勢いよく海に飛び込んでいった。なかにはかなり時間をかけてから、荒波の中に突入していく人も。ほとんどの参加者にとって、ちょっとカオス状態だったが、神主さんは身を屈めながら海面から顔だけを突き出して、僕たちのために繰り返し祝詞を唱えていた。

雨が止み、太陽が金色の砂地を照らしていた。

海岸線を歩いていると、寒さが身に染みてきた。気温は8℃だったが、今は海風が素肌を直撃し、寒さが厳しくなってきた。海中の温度も一桁台だったのではないだろうか。

その後、砂浜に戻ると、思いもよらないことに気持ちがほぐれてきて、多幸感のようなものが一気に全身に巡り始めた。僕たちはみんな、海、そしてこの島、ここにいる生き物とともにいるという感覚が湧き上がってきた。一体感に包まれ、子どもに戻ったような不思議な気持ちになり、ビーチからウキウキした気持ちで近場の温泉へ歩いて行った。

僕たちは祓い清められたのだ。

忙しい日々を過ごしていると、僕たちは離れ離れになっているような気持ちになることがある。インスタグラムはときにその慰めになるけど、自分の仲間たちだけではなく、僕たちが生きている自然界と一体になれた経験をシェアすることほど素晴らしいものはない。肉体的な繋がりとコミュニティーの絆ほど強固なものはない。これはみんながおざなりにしたり、言い訳をしながら避けて通ったりしてはいけないことだ。

グループでサイクリングに出かけたり、冬の海で神主さんに誘われる禊の儀などに参加して、その機会を逃さず、味わってほしい。そうすれば、あなたはもっとクリエイティブになれるし、思いやりを持てる人になれるはずだし、みんな同じ思いを共有することで、この神秘的な地球という惑星でひとつになれる。こういう感覚を忘れてはいけない。

仲間に別れを告げることが辛くなってきた。ハグをして、フェリーに乗り込み、島のみんなの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。島も、お世話になった人たちもゆっくりと遠のいてきた。後ろ髪をひかれつつ、僕たちは家路についた。

James



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