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さまざまに活躍する籠|暮らしに生きるサルデーニャの手仕事(1)

島の中東部、オリスターノより少し上に位置するサン・ヴェロ・ミリス。伝統的な籠を編む女性がいるという情報を頼りに町へ入った。いい感じにくたびれた帽子を被ってたたずんでいたおじさんに道を尋ねると、それなら案内するよと、なんと […]

04/08/2020

島の中東部、オリスターノより少し上に位置するサン・ヴェロ・ミリス。伝統的な籠を編む女性がいるという情報を頼りに町へ入った。いい感じにくたびれた帽子を被ってたたずんでいたおじさんに道を尋ねると、それなら案内するよと、なんと営業中だった自分の店のシャッターを下ろし、荷台にボンベをたくさん積んだ緑色のトラックに乗りこんだ。私たちも慌てて車に乗り、おじさんを追いかける。いくつかの角を曲がり、商店街を抜け、住宅街へ。
やがて、黄色いレモンの実と白いマーガレットがこんもりと茂った小さな一軒家に到着した。出迎えてくれた家の主は、ともに身長150cmもないであろうご夫婦。イタリア語とまったく異なるサルド語を話す小柄な彼らは、花のあふれた住居とも相まってまるで妖精のよう。おとぎ話のようなシチュエーションだ。
さて、やっと出会えた籠編み職人のパルマス・ジョヴァンナさん、67歳。4歳ごろから母親を真似して編んでいたというから、籠編み歴はなんと60年以上ということになる。リクエストすると、自分の身長よりも長いイグサを取りだし、慣れた手つきで籠を編みはじめた。細いイグサを数本まとめて編みこむのが、このあたりの技法の特徴。中心に張った刺繍布は、伝統的には民族衣装の布を用いる。中心から外側に向けて編んでいくいわゆる一般的な籠のほかに蒸籠のような籠もあり、こちらはカヴァテッリ(パスタ)をつくる道具だという。現在は実用的な用途だけでなく壁に飾るインテリアとしての需要も高いというが、籠というのはどんなライフスタイルでも役立つ生活道具だといえる。
Palmas Giovanna
Via S’Uraki 48, San Vero Milis
TEL: 0783 53424
» PAPERSKY #44 Sardegna | FOOD Issue (no.44)
Photography: Luca Gabino Text: Mick Nomura