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PAPERSKY INTERVIEW 尾崎“Jackie”光輝/アウトドアギアクラフトマン

, 2019/06/06

新進気鋭のガレージメーカー「JMW:Jindaiji Mountain Works」を主宰する尾崎“Jackie”光輝さんは、カリスマ的人気を誇る某テントメーカーの縫製クラフトマンであり、アウトドアファッション誌で道具に纏わる連載も持つ、日本のオルタナティブなアウトドアカルチャーのなかで知る人ぞ知る人物。2年前、そんなジャッキーさんと自転車で台湾を縦断する旅を行った筆者が、台湾「HIKE & BIKE」特集にちなみ、あらためてその旅を振り返ってみました。
 
—2年前にふたりで旅した台湾の自転車旅行は、北部の台北から最南端の墾丁まで、東海岸を通って台湾をほぼ縦断する行程を5日間で目指す旅でしたよね。

台北からとにかく南を目指す大縦走でしたね。このルートでワクワクしたのは、行く前にネットで調べても情報があまりなくて、調べてわかったこととしては、東海岸は台湾の原住民の人たちがいまもたくさん住んでいる、昔ながらの台湾が残っているエリアだということ。僕のイメージだと台湾ってもっと開かれていると思っていたんだけど、土着的なものがまだ残っているというか、手つかずな感じがしましたね。それは大都市が集中する西海岸と違って、まだハイウェイが通ってないというのが大きいのかもしれない。
 
—ふたりとも初めての海外自転車旅でしたが、輪行バッグや自転車用のダンボール箱を用意できれば、自転車を入れたその隙間に荷物も入れられるので、バックパックのような感覚で輪行バッグが使えて、意外と便利でしたよね。

空港までの足と箱やバッグを旅の間どこに保管できるのかということさえクリアできれば、海外に自転車を持っていくこともそんなに難しいことはないね。
 
—1日目は台北から峠を越えて東海岸の宜蘭まで進みましたけど、台北から1時間も走らないうちに深い山になって驚きましたね。

台北ってじつは山とすごく近い。1日中、峠を走って、ついに東海岸の海が見えた時は感激しましたね。「ひと山越えて自分の足でここまで来たんだ!」って。この時は初めての台湾だったけど、まず、どこに行ってもご飯がおいしかったのが印象的でした。観光地でもなんでもない寂れた集落にも絶対に宿も食堂もあって、そんな場所にあっても味つけのセンスがいい。それと東海岸を走ると、台湾は南の島なんだなということを感じましたね。だけどビーチには人がいない。墾丁あたりまで行くと人が増えるんだけど、それまでの区間は、きれいだけど誰もいないビーチ沿いをクルージングする感じのルートでした。
 
—意外に、というと失礼かもしれないけど、道路の舗装もよくて走りやすかったですね。

バイクツーリストには優しい感じがしましたね。どこへ行っても自由に自転車の旅ができる気がした。基本的に大きな国道には自転車レーンがあるし、国を挙げて「環島(台湾を自転車で一周すること。そのための標識も全島に整備されている)」を推しているせいか、日本のようにトラックのおっちゃんとかも幅寄せとかしてこないし、自転車を認めてくれている感じがした。あと南の島だからかみんなのんびりしているというか、運転のマナーも東海岸はよかった気がする。台北とか大都市は少し怖いだろうけどね。おかげで純粋に自転車を漕ぐことと、街まであと何キロかなとか、今日の寝床はどこにしようとか、シンプルに自転車の旅だけに没頭できたよね。檳榔屋のかわいいお姉ちゃんとかは探したりしたけど。酒にも女にも目もくれず、ずっと旅に集中してた感じでしたね。
 
—でも、基本的に旅の間に話してたのは下ネタが多かったような…
「あの檳榔屋のばあちゃんも昔はセクシーで派手な服とか着てたんだろうな」とか、そんなことばかり言ってたね(笑)
 
—南に行くにつれ、どんどん景色が変わって行きましたよね。水田が続いていたのがお茶畑になったり、ジャングルになったり。だいたい朝8時くらいに宿を出て、ちょっと走って10時くらいに軽く何か食べて、また走って…

1時か2時くらいになってお腹が空いたら適当な食堂に入って、また走ってね。
 
—あと、台湾にはかなりの田舎に行ってもセブンイレブンとファミリーマートがあるのは助かりましたね。売られているものもほとんど日本と同じで、冷房も効いてるしイートインスペースもあって。

毎日、午後4時半から5時くらいにコンビニで最後の休憩をして、そこでその日の終着地を話し合って、たとえば10km先の街に泊まるか、もしくはもっと頑張って25km先の街まで行くか…とかね。10km先だと、1日の行程としては少し短いけど、25km先まで行くとなると1時間半くらいはかかる。しかも地図をよくよく見るとアップダウンが激しい。どうする?とかね。でも、結局いつも先に進む方を選択してましたね。最後の1〜2時間のライドは、体力的にも精神的にも厳しかったけど、カタルシスもあって、印象に残っている場所は結局そういう瞬間なのかなと思います。5日間で台北から墾丁まで行く計画だったけど、正直、僕は最初、無理だろうと思ってた。でも1日目、2日目とだんだんスイングしてきて、3日目、4日目になると「もしかしたら行けるのでは?」「今日がんばれば行けるよ!」ってなってきて。普段だったら「もういいんじゃない?」って諦めそうな状況でも、そんなふうに「行こうよ!」みたいになるのが旅のいいところかも。
 
—テントや寝袋も持って一応バックパッキングの装備で行ったけど、結局不要でしたね。

街に行けばシャワーも冷房もコンセントもある宿に、ふたりで1泊3,000円ほどで泊まれるから、わざわざキャンプをする必要はないし。野宿する理由がないのに無理して野宿するというのは、むしろ不自然というかリアルじゃない。
 
—最低限の着替えとバッテリー、ナビ用のスマートフォンとWi-Fi接続さえあれば、台湾の自転車旅行は他に何もいらない。それくらいの身軽さで旅をするのがいちばん楽しいですよね。

自転車はフィジカルエリートじゃない僕たちに夢を見させてくれる乗り物なんだよね。そうじゃなかったら1日に100kmなんか移動できないじゃない? 人体を拡張してくれるものだからね。しかも電気も油圧も使わないで、100%人力なんだからすごい。これはたぶん神様がくれた乗り物なんだと思う。そうじゃなかったらこんなに人間の骨格にフィットするわけがないもの。まさに人間のためにつくられた乗り物じゃないかな?
 
—というか、自転車は最初から人間のためにつくられた乗り物ですよね…

でも、僕らがハイキングを始めたときは衣食住の荷物を背負って1日20kmくらいは移動できるってことに驚いたじゃない? そのあとトレイルランニングを始めたら、1日に30〜40kmくらいは普通に移動できるようになって、距離の概念が変わった。さらに自転車に乗ると100km以上移動できるわけで、一気に距離が3倍〜4倍になった。だから距離が伸びれば伸びるほど自転車らしい旅になるよね。
 
—そうですよね。「自分たちの力だけで台湾を縦断したんだ」っていう感慨は歩き旅でも得られるけれど、2週間はかかる。でも自転車ならそれが5日でできてしまう。

だから、やっぱり自転車の魅力の本質ってそこなんだよね。スピードが速いから、誰にでもラクに距離が伸ばせること。
 
—それで距離を長く移動すればするほど流れ者的な感覚が強まっていって、これぞ旅をしているって気になってくる。

歩き旅なら1〜2週間かけてじわじわ高まっていくような感慨が、自転車は距離が稼げるだけ景色もどんどん変わっていくから、もっと短い期間でハイになれるのかも。やっていることといえば自転車漕いで、メシ食って、漕いで、メシ食って、寝てっていうそれだけなんだけど(笑)。でも自転車の旅は楽しいから、もっとみんなにやってほしい。それを広める使命感すら感じているよ。まだこの旅の感覚を知らない人たちに対してね。
 
—「台湾の自転車旅は身軽にできる」って言ってましたけど、それなら日本だって同じですよね。

いまの時代は道具がすごく軽くコンパクトになっているからキャンプ装備を積んでもかなり身軽だし、それと民宿や安いホテルなんかを繋いでいけば、たぶんどこまでだって旅できる。もっと言えば世界中どこだってそんなふうに旅できるかもしれない。だから本当にどんどん自転車で旅に出てほしいよね。
 
—最後になりましたが、ジャッキーさんの手がけるブランド「JMW」のことも聞かせてください。

去年の12月に始めたばかりの若いブランドなんだけど、アウトドアで僕が好きなのはハイキング、バイク、源流のフィッシングだから、とりあえずそれに使える道具をつくっていきたいと思っている。なかでもハイキングは僕にいろんな人との出会いやものづくりを教えてくれたものだから、やっぱりブランドのベースになっているかな。歩くだけでなく、「こんなにチープでペラペラな道具でも山で寝ることができるんだ」とか、いろいろなものの考え方を教えてくれたのがハイキングだからね。それに自分の大好きな3つのアクティビティの道具を自分自身で縫って制作できれば、小ロットでも出していけるなと思って。あと、うちは犬も飼っているから、散歩に使えるものもつくれたらいいかな。いずれにしてもまだ始めたばかりだし、最初は手を大きめに広げていろいろ試しながら制作して、何年か経ってうちのブランドはこれなんだなって思えるようなものができればいいなって思っています。
 
尾崎“Jackie”光輝 Mitsuteru“Jackie”Ozaki
日本のMYOG(ギア自作)シーンの草分けにして、ULカルチャーの有名人物。いままでに製作したULシェルターは1,000張以上のギアクラフトマン。自身もULハイキングや渓流釣り、バイクパッキングなどを楽しむ。2018年より自身のブランドJMW(Jindaiji Mountain Works)を始動。

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