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かわしまようこ/草作家|PAPERSKY INTERVIEW

, 2018/07/02

長いこと想いを寄せていたハワイの地にようやく訪れることができた、かわしまようこさん。ハワイの自然の優しくて大きな包容力でもって、ちょっぴり疲れてしまっていた彼女の心身は深く癒された。そして、日常からときにはきちんと離れることと、それでも日常にきちんと向き合うことの大切さを再認識したのだ。
 
—ハワイ島に行ってきたそうですね。初めてだったというのは意外でした。

ずっと想いはあったんだけれど、先延ばしにする性格みたい(笑)。とはいえ今回は、どこかに行かずにはいられない心境になっちゃったっていうのが正直なところ。今自分に必要なのはもう一度、自分と自然とつながることだと思ったんです。そういうテーマで時間や空間を人に提供している自分自身がそれを十分にできていないのを実感したので、どこでもいいから旅に出たい!って。
 
—ひと月ほどの滞在だったそうですが、特定の目的はなく?

滞在先の「root down farm」(p.92参照)で毎日数時間お手伝いをするのと、ワークショップとセラピーのセッションをいくつかやったくらい。それ以外のときはだいたい、ジャングルを散歩していました。ただただ歩いて、ぼーっとして。それで、時間に縛られることが人の感覚をどれだけ狭めるかがよくわかりました。時間を気にしないでいい時間をつくるのは大事だね。自分が空っぽになって自然を感じていると、感謝の気持ちだけになる。「マハロ」って言葉があるでしょう? みんなが使うのがわかった気がしました。
 
—充実してたんですね。ところでセラピーの施術をしているんですか?

これまで自然と遊び、雑草をとおして自分とつながるっていう時間をつくってきたけれど、悩みを抱えた方が参加されることもやっぱり多いのね。幸せを感じられない人は、自分とのつながり、つまり自己肯定力が弱いんです。自然と向き合うことで自他を赦せるようになっていくんだけれど、それって時間がかかるでしょう? 反対に、自然に心を開いたことで社会となじめなくなる方もいらっしゃる。そういう方のために私がもっと何かできないかなと思って、いろんなお手当て法を今、勉強してるんですよ。
 
—新たな展開ですね。もともとようこさんが触れ合いたいのは草であって、人ではありませんでした。

そう。自然を守りたくて活動してた私には、人間なんてむしろ自然を破壊する困った存在だった。で、自然を好きになったら汚さなくなるだろう、自分の暮らし方を見つめ直すようになるだろうと思って、どこにでも生えている草の魅力をみんなに知ってもらえたらって活動してたんだけど。でもね、震災があって、私、変わったの。ほんとに絶望して、自分の活動の意味がわからなくなってしまった。被災地に対して何もできない自分にもまたショックでね。それで自分がすごく寂しくなって、それまではどちらかというと他人ばかりに目を向けていたのを、自分を見つめるということに大きくシフトしたんです。もっと強くなりたくて、震災の半年後、『13人のグランマザー』のひとりであるシャーマンのおばあちゃんに会いにアマゾンに行くっていう人がいたから私も連れていってもらって。そこで体験させてもらったことで、いろんなことがわかって。自然環境は、人の心の不調和が影響してくるわけで、それが戦争にもつながってくるんだと。平和には人の心がいちばん絡んでいて、ひとりひとりの心の調和が最も大事なんです。本当の意味で健康にならないと。そのきっかけになる時間をつくりたいって思うようになったんです。
 
—最初は草自体が目的だったのが、今は手段というか、道筋を照らすものに変化した?

やっていることの表面は同じだけど、意識の向け方が変わりましたね。それでセラピーとかいろんなお手当て法を勉強してるわけだけど、私、勉強が苦手だから、ほぼ自分実験なんですよ。うまくできているもので私は体が弱いから、調子が悪くなるたびにいろんな治療法を実践してみていて。なかでもヒプノセラピーの体験が私にはとても大きかった。
 
—ヒプノセラピー?

催眠をかけることによって、顕在意識から潜在意識に意識をおろす療法のこと。私、腱板損傷になって、いろいろやっても治らなくて、ヒプノセラピーを受けたのね。そうしたら自分の体に感謝の気持ちが湧き上がってきたから「ありがとう」って伝えたら、長く続いていたひどい痛みが一瞬で治ってしまったの。それで、いろんな病気の原因は、自分の体との会話不足にあるんじゃないかと気づいて。そういうわけで自分でもヒプノセラピーをやるようになったんだけれど、実際、ほとんどの原因がそれですね。難病の人でさえ、自分の体の声を聞いて「ありがとう」って伝えると、痛みがすっと消えてしまう。潜在意識のなかで心の傷を癒すと、苦しみが苦しみでなくなるというか、問題が問題ではなくなるんですよ。アマゾンではシャーマンのおばあちゃんが命をかけて私に向き合ってくれた。人を癒すということの意味や意義をありありと体験させてもらったんです。自分が誰かにやってもらったことを、今度は自分が誰かにできるって、すごく嬉しい。大変だけど、幸せなの。
 
—人を癒すことが、自分の幸せにつながる。

そうなの! それで、グループや個人でセッションやリトリートをするんだけど、自然とつながって、人とつながって、自分ともつながって。最後には半分くらいの人が泣いちゃうほど、いい時間なのよ。ほんとに幸せな時間。おかげで、執筆したり展覧会をしたりができなくなっちゃったんだけど(笑)。ハワイの自然がまさにそうだった。ただ深くて優しくて、あるがままを受け入れてもらえているという感じ。人はそこに、すごく安心感を感じますよね。
 
—どんな状況であっても、その安心感でもって自分を肯定できれば、その人は幸せになれますよね。

ほんとにそう。本来はどんな状況でもOKって思えるはず。でもそう思えないのはなぜ?っていう。すべての出来事は、それを確認するための作業のようなものだなって思います。自分を知ることが、自己肯定力につながるから。病気の治療っていうと、症状を治そうとするでしょう? 鼻水が出ていたら、それを止めようとする。だけど、鼻水が出るのはたとえば体が冷えているからで、じゃあなぜ体が冷えているのかというと、冷たいものを食べていたから。じゃあなぜ冷たいものが欲しくなるのかっていうと……ってどんどん掘り下げていって、やっと大元の原因に気がついたら、それだけで原因自体がほどけちゃったりすることもあるわけ。シンプルなことだけど、自分とじっくり向き合う必要があるから、苦しみを伴うこともある。準備ができていなくて逃げてしまう人だっている。だから、もっと楽しく向き合いながら自分の本当の原因に気づいて、楽しみながらどんどんよくしていける場をつくりたいと思って。それが、リトリートをやっている理由でもあります。
 
—沖縄はリトリートに向いた土地なのでしょうか?

そう思います。日常につながっていると、どうしてもスイッチが切り替わりにくい。沖縄は本土と気候も違うし、飛行機でないと来られないから、沖縄に来たっていうだけで気持ちが切り替わりやすいと思います。でも、それで一気に性格が悪くなる人もいるんだけど(笑)。
 
—解放され、いい方向にいくとは限らないのですね。

反対に、都会ですごく性格悪く働いてる人が、すごくよくなるケースも。ほんと、いろんな人がいますよ。でもいずれにしても、沖縄はスイッチが切り替わりやすい場所ではありますね。私自身が今回ハワイに行ったことで、日常から離れるよさっていうのを実感しましたが。
 
—それは人が旅をする理由のひとつかもしれません。 

近所を普通に散歩することでだって、それなりに日常から離れることはできるとは思うんだけど。やっぱり時間と空間、距離っていうのも大切な要素だなってことを今回のハワイで感じました。
 
—強制的に自分を別の場所に置いてしまうというか。

そうそう。日常は日常でちゃんと向き合う必要はあって、日常でしか癒せない部分もあるし、旅でしか癒せない部分もあって。自分でしか癒せない部分もあるし、他人にしか癒してもらえない部分もある。すべてバランスで、全部が大切だなと思うけどね。心の傷って、本当に影響が大きくて大変。でもそれがあるからこそいろんな体験ができる。だから、すべてがいいことだって思ってます。
 
—悲しみや苦しみでさえ宝である、と。

ほんとに。私自身がそうなんだけれど、辛い思いが深ければ深いぶん、幸せを味わえる。味わう準備ができているし、その権利がある。だから、そういう機会や環境をいっぱいつくりたいんです。
 
—ようこさんの目標は昔から、世界平和でしたもの。

言葉にすると大げさで、ちょっと恥ずかしいけどね。平和活動のつもり。
  
—でも世界平和とは結局、ひとりひとりがそれぞれに幸せを感じることだから。

ほんとにそれしかないって、すごく思う。自然と会話ができると平和になると思うんだ。草花の力って、ほんとにすごいんです。
 
かわしま・ようこ Yoko Kawashima
1974年、鹿児島県生まれ。作家、雑草案内人、こころと体の案内人、ヒプノセラピスト。2000年から草花の仕事を始める。現在は沖縄県在住。「五感で遊ぶ、五感で食べる、おきなわリトリート」を地元で開催する他、全国で雑草教室を開催し、草を摘む時間のなかで、健康的な生き方、暮らし方を発信している。著書に『草かざり』(ポプラ社)、『道ばたに咲く』(地球丸)、『草と暮らす』(誠文堂新光社)など。 www.kawashimayoco.com
 
» PAPERSKY no.56 HAWAII | RETREAT Issue

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