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雲と光が複雑に変化するレマン湖の光景|フェルディナント・ホドラー

スイス人にとって「国民的作家といえば?」と問えば、多くの人がフェルディナント・ホドラーを挙げるだろう。そのくらいホドラーは国民に愛されている画家だ。生涯をスイスで過ごし、人物を描いた以外に、各地を旅して、アルプスの山々や […]

09/04/2017

スイス人にとって「国民的作家といえば?」と問えば、多くの人がフェルディナント・ホドラーを挙げるだろう。そのくらいホドラーは国民に愛されている画家だ。生涯をスイスで過ごし、人物を描いた以外に、各地を旅して、アルプスの山々や湖をテーマにした風景画を多数残した。
世界には、類似するものの反復やシンメトリーをなす構造がいたるところに存在すると考えたホドラーは、それらを「パラレリズム(平行主義)」と名づけ、リズムや構造を見出そうと試みる。彼が描いた風景はスイスのあちこちにあるが、今回足を運んだのは、南東部に位置するレマン湖地方。『シェーブルから見たレマン湖』は生涯をとおして、20点ほど描かれている。ワインで有名なラヴォー地区のシェーブルからキュリーまでの道のりの途中に「ホドラーの道」と呼ばれる森の小径があり、小高い丘の上からゆるやかに弧を描くレマン湖を眺めることができる。おそらく絵はこの途中で描かれた。
複数ある同名作品はどれもアングルは同じだが、雲がリズミカルに描かれていたり、リフレクションしていたり、湖の色も光線の加減によってコバルトブルーやエメラルドグリーンとさまざまだ。絵と同じ場所から眺めていると、レマン湖にかかる雲の流れは速く、湖の光も複雑に反射することに気づく。ホドラーが同じアングルで何枚も描いたのは、写実的な表現から抽象絵画へのスタイルの変化もあるが、湖の表情がめまぐるしく変わることもまた、描きたいと思った理由のひとつだったのかもしれない。
眼下に広がるレマン湖は、木々が緑を深くし、少し民家が増えたこと以外、150年前と変わらない光景だった。
 
フェルディナント・ホドラー/Ferdinand Hodler
1853年、ベルン生まれ。1889年、『夜』で注目を浴び、象徴主義の画家として有名に。同じ題材と同アングルで違う表現をする作品を多数残した。1918年没。
 
◼︎取材協力
スイス政府観光局
スイスインターナショナルエアラインズ
スイストラベルシステム
 
» PAPERSKY no.54 SWISS | LANDSCAPE ART Issue