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豊嶋秀樹/クリエイター|PAPERSKY Interview

, 2017/05/31

豊嶋秀樹さんは紹介の難しい人だ。主にアートの世界で作品制作や展覧会企画、空間構成などを手がける人、というのが「正解」かもしれないし、大阪のクリエイティブ集団grafの立ち上げメンバーであったことや、奈良美智氏の大規模な展覧会『Yoshitomo Nara + graf A to Z』の展示において中心的な役割を担ったことなどは、代表的な「仕事」といえるかもしれない。けれどそれだけでは、豊嶋さんの人間像を言い表すことはできない。ときにアウトドアイベントのオーガナイズを行ったり、ときに本を書いたり、毎年、夏は青森でねぷたを担ぎ、冬はスキーのため北海道にこもり……それら仕事とそれ以外の活動に分け隔てなく情熱を注ぎ込んでいる。ただ、ひとつ言えることは、豊嶋さんはいつも1箇所に留まらず、移動を続けているということ。
 
―豊嶋さんは絶えず移動を続けているイメージがあるんですが、今はどんな感じで動かれていらっしゃるんですか?

年末年始はいつも大阪の実家で過ごし、それから今住んでいる福岡に帰って、10日間くらいいて、1月の末からは北海道です。昨年11月にはひと月ほどインドのハンピという場所でクライミングしてましたね。北海道には7年前から毎年来ていて、3月半ばまでいることもあるし、用事があれば一度帰って、また来るときもあります。まあ、要するにパウダースノーの時期はべったりこっちにいる(笑)。今年は2月に福岡の知り合いがクライミングジムをつくるというので荷物を北海道に置いたまま一時帰宅して、3週間くらい内装工事を手伝って、その間に東京とか宮城にも寄りつつ、また北海道に戻ってきました。この後は本州の山を滑りながら福岡に帰るつもりです。でも、春山を滑るためだけに全国行脚するのって大変だしお金もかかるじゃないですか? 数年前にそれをやったんだけど、お金を消費するばかりでちょっとよくないなと思って。それで、去年『岩木遠足』という本を出したときに、その本のトークツアーで全国をまわったんだけど、そういうトークツアーとアウトドアの活動を引っつけちゃえば生活しながらスキーしてまわれるって思った。だから今年は昨年7月に札幌で行った『ホーリーマウンテンズ』っていう展覧会のトークツアーを青森、仙台、山形、東京、山梨、金沢、京都って感じでやりながら福岡に帰ろうと思います。
 
―どこが家かわからないですね(笑)

2017年でいうと今のところ圧倒的に北海道が家ですね(笑)。福岡にいるときは、具体的な仕事をしていることは少ないですね。仕事があるときは福岡以外の場所に行くことがほとんどで。
 
―そういう状態はどのくらい続いてるんですか?

もしかして20歳のころにアメリカのアートスクールに行ったときからかも。それ以来、同じ部屋に3年以上住んだことがないんですよ。いまの福岡の家が3年を過ぎて最長なんですけど、家がなかったこともあるし(笑)。そういう意味では、生活自体が旅な状態がずっと続いてる。でも、ドラマチックなことは何もないですよ。昔から遊牧の人とか行商の人とか、生活が旅だった人っているでしょ。あの人たちもべつに旅行してたわけじゃなくて、単に移動することで営みが成立するからしてただけで、僕も福岡にいるだけではほとんど収入もないし、仕事や用事があるから動いてるだけで、いわゆるバックパッカーみたいな旅人じゃないんですよね。自分が行きたい場所に行ってるわけでもないし。
 
―でも、その場その場でおもしろいことや興味のもてるものを発見していくのは得意そうに見えますけど。

環境とか状況って向こうからやってくることが多いから、そこには最大限コミットしていこうと思ってますけど。福岡に引っ越したのも福岡出身の妻が住みたいって言ったから。その前は東京に住んでたけど、仕事も地方や海外がほとんどだし、家賃も高いし、それなら住む場所はどこでもええかと。それで福岡に来たら物価が安いから中古の家が買えて、もう家賃稼ぐためには働かなくてよくなった(笑)。
 
―そうして引っ越された九州でも昨年は九重連山で『ハッピーハイカーズ法華院ギャザリング』というハイカーのためのキャンプインイベントをオーガナイズされましたよね。それはどういったきっかけで始められたんですか?

九州に来たら一緒に山に登るような友だちもいないし、東京のハイカーズデポみたいにハイカー同士のハブになっている場所も特にない感じがしたから、みんながつながれる場づくりができたらいいなと思ったんです。引っ越したばかりのころに福岡で「山と道」の夏目(彰)くんと小さいトークショーをやったことがあって、そこに来てくれてたお客さんに「こんなことやろうと思ってるんですけど…」って話をしたら、「ぜひぜひ!」ってなって。そういう出会いを手がかりにすこしずつ広がっていった感じ。
 
―そこから2年くらいであのイベントが実現するというのもすごいですね。

そういうことをやったらいいんじゃないかという気持ちはもってたけど、そのために人を集めなきゃとかは思ってなかったし、具体案はとくにないまま出会った人によって変わっていった感じですけどね。でも、ギャザリング自体はイベントでしかないから。
 
―イベントよりもそこにコミュニティが生まれることが大事?

みんながつながっていくための拠り所というか、ある集合体にとっての祭りよね。やっぱり何かを一緒に共有したり、つくったりっていうのがなくてただつながろうというのは難しかったりするから。でも、そういうつながりがあると自分にとっても福岡がいい環境になるし、みんなにとってもいい環境になるかもしれないなって。今滞在している北海道のニセコって場所も、最初は知り合いがいたわけじゃないんやけど、テレマークスキーを通じて結構な広がりでいろんな人と知り合えたし、青森にも奈良さんの展覧会をやったときの友達が今でもいっぱいいて、そういうちょっとした知り合いが日本中あちこちにいるのも事実で。だから、最近はプロの居候を目指してる(笑)。座敷わらしみたいに、いたら逆にみんなにありがたがられるような。
  
―青森ではねぷた祭りにも毎年参加してるんですよね?

今年で10年目になるんですけど、毎年参加させてもらってて。青森には最初、奈良さんの展覧会で行ったんだけど、今はもう圧倒的にねぷたの友達のほうが多くて、ちょっと笑える。最近は仲よくなったけど、外から来た人でねぷた祭りに10年連続で来て、毎年出てる人なんてあまりいないから、「あの人は何者なんやろ?」って思われてると思う。
 
―「普段何をやってるんですか?」って訊かれても困りそうですね。

肩書きがいつも困るんですよね。最近もっとわからなくなってるし。
 
―「プロの居候です」と(笑)。居候の秘訣って何かあるんですか?

ありますよ(笑)。居候だからお客さんじゃないわけで、まずはその家に必要とされる役割を果す。北海道で去年までお世話になっていた夫婦の家ではふたりとも忙しいんで、ごはんの用意とか掃除とか家事は僕がやってました。そうしたら結構歓迎されて、「次はいつから来るの?」とか言われるようになった(笑)。旦那のほうはメタボ予備軍だったんですけど、僕がベジタリアンなので、一緒に強制ベジタリアン生活にして、ダイエット成功させて。もう元に戻っちゃったみたいですけどね(笑)
  
―すごい!

今年から居候させてもらってるカフェでは常連の奥様方を相手に南インドの料理を「こうやって手で食べるんですよ」とか紹介しながら、一緒に食べるっていう会をしてるんですけど、それが意外と人気があって。今月またやることになって、人数も増えてる。
 
―座敷わらし化が進行してますね。 

今も将来の展望とかあるわけじゃないですけどね。テレマークスキーも一所懸命やってたら、よく「スキーの先生を目指してるの?」とか訊かれるんですけど、今はとにかく上手になりたいだけで、もし上達したらそのとき考えればいいって思ってるんです。単にビジョンをもってないとも言えるけど、今は今のことを一所懸命やっておいて、3年後のことは3年後の自分に考えさせたほうが絶対に精度が高いでしょ? 「3年後の自分に任す」というか。なんか言い訳っぽいけど(笑)。でも、今の自分だって5年前の自分は確実に想像つかなかったし、描けなかったビジョンを生きてると思うんで。
 
―それは良い言い訳だと思います(笑)。

『ハッピーハイカーズ』みたいなイベントにしても、僕はキャスティングが命だと思っているんです。映画みたいにその役に合った人を探すキャスティングじゃなくて、出会ってしまった人で何をやるかだけど、それで半分以上決まってくる。そこにいいマインドの人が集まったら、何が起こったとしてもいいと思うし。だから、そういう人が集まる場をつくることはすごく重要で、居合わせた人にそういう何かが起こるような時間なり空間なりがあればいいんじゃないかな。
 
―豊嶋さんが移動を続けているのも、そんなふうに人のつながりをたどっているような気がします。 

まあ誰かがいるからそこに行ってるわけですからね。
 
―「縁」というか。 

縁っていう言葉つかったことなかった! そやね、縁やね! 縁は自分ではつくれないから人任せな感じがしっくりくる(笑)。
 
豊嶋秀樹(とよしま・ひでき) 
1971年、大阪生まれ。1998年、graf設立に携わる。2009年よりgm projectsのメンバーとして活動。作品制作、展覧会企画、空間構成、ワークショップなど幅広いアプローチで活動している。近年はハイキングをはじめテレマークスキーやクライミングにも傾倒、2017年は山と道との全国キャラバンツアーを行う予定。編著書に『岩木遠足 人と生活をめぐる26人のストーリー』(青幻舎)がある。

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