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石を買うつもりじゃなかった |PAPERSKY book club

, 2016/12/19

きっかけは、ブックフェアでアーティストの下道基行がブースを出していて、彼が富山県の黒部市美術館で行った『風景に耳を澄ますこと展』の図録を申し込んだこと。その時に「石は大・中・小のどれにする?」と訊かれ、勢いで「大」と答えたことも忘れたころに、図録と一緒に大きな石が届いた。黒部川の河口、扇状地の浜辺にあった石は、長い時間をかけ角が削られころんとした形をしている。下道いわく「木星のような石ころ」がこのあたりには無数にある。展覧会ではその石が町でどう利用されているかを観察し、発表した。漁網が飛ばないよう重しに、隣の家との境界線に、漬物石に…、生活の工夫から生まれた石の居場所はてらいがなく美しい。

『Stone Dealer 石屋さん』は、群馬県の鬼石(現藤岡市鬼石町)という過疎の町に滞在した、桑原真理子による聞き書き集。神流川上流の三波石峡で産出される、白い縞模様が特徴の三波石と呼ばれる岩石が町の名産で、その石を販売する石屋と呼ばれる人たちがいる。彼らはトラックに石を積み込み、全国に売りにいった。豪邸の庭石として重宝され、行って帰ってくれば何千万、何億もの売上になったころもあったという。しかし1957年に三波石峡が天然記念物に指定されたことで、石の持ち出しができなくなってしまった。今はとうにバブルも過ぎ去り、石を買う人は激減。彼らのビジネスが成り立たなくなって久しい。桑原は何も知らないことを武器に、石屋たちに質問をする。どうやって入手するんですか? 「いい石」ってなんですか? 石は好きですか? 値段や価値はどう決めるんですか?

嫌がっていた彼らが、徐々に本音というか石に対する思いを語り始める。お金のためにやっていたという人もいれば、自己流の石の良し悪しを熱弁する人もいる。最後に彼女は、石屋の茂木さんと一緒に「いい石」を探しにいく。

こんなにもハッキリとした形があるのに、その役割も価値も人それぞれなのが石のおもしろいところだ。

さて、届いた石を手に僕は考える。ペーパーウェイトには大きすぎるし、ブックエンドにするには丸すぎる。結局なんとなく棚に置いて眺めるだけの存在に落ち着いた。これはこれで石の居場所なのだと自分を納得させた。
 
風景に耳を澄ますこと 下道基行 黒部市美術館
Stone Dealer 石屋さん 桑原真理子 Torch Press

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name
黒部市美術館
place
富山

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