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Lady Jayne’s Alchemy ガーデンから生まれる、奥深い発酵の世界

, 2016/11/01

すべての始まりは、自宅でつくった手製のビネガーだった。知るほどに奥深さを増す「発酵」の世界に魅せられた女性は、小さなガーデンから、次々と新しい食の世界を創造していく。美しき「魔女」の、森のアトリエを訪ねた。
 
「最近はキムチづくりも上手になったの」。
リビングの脇に無造作に置かれているのは、韓国式の大きなキムチ壺。蓋を開けなくても、ふわりと唐辛子が香る。

ハドソンの町から車で40分。森に囲まれるようにして立つ愛らしい小屋が、ジョリー・ジェーン・エムディさんの自宅兼アトリエだ。が、絵画や彫刻をつくっているわけではない。キッチンの棚という棚に並ぶガラス製のジャー。彼女は「発酵」をテーマに酢やキムチなどの食品をつくる発酵アーティストであり、同時にさまざまなハーブを使ったコーディアルやスキンケアアイテムをつくるハーバリストでもある。

彼女が発酵の魅力に目覚めたのは、調理師専門学校を出て、ブルックリンのレストランでシェフとして働いていたころ。「10年くらい前、ニューヨークや西海岸では、健康志向の人々の間で酢を飲む習慣が根づきつつあったの。でも普通のビネガーはすごく酸っぱいでしょう! 体にいいとわかっていても、毎日飲むのは辛いの。もっと飲みやすいビネガーがつくれないかと思って自作したのがきっかけね」

試行錯誤した結果、フルーツの種や野菜の皮など本来なら捨ててしまうようなものと、飲みかけのワインを自然発酵することによって、酸味が控えめでフルーティなビネガーをつくれることがわかった。発酵に使うのは空気中にある天然の菌のみ。素材や季節によって、できる酢の風味がまったく違うとのいうのも驚きだった。
「ここに移住してから本格的に発酵について学び始めたの。独学だから毎日が実験みたいな感じね。畑で穫れた野菜でピクルスを漬けたり、キムチに挑戦したり。やりたいことが無限に広がっていくの」

ジョリーさんの夫は、今ハドソンで最も勢いのあるレストラン「Fish & Game」(P.46)のオーナーシェフ。店で使うビネガーはもちろん、料理に使うハーブやエディブルフラワー、カクテルに使うコーディアルなどはすべて彼女のガーデンから生まれたものだ。さらに自家製の梅干しやキムチなど、アジアの発酵食品のフレーバーが「Fish & Game」の料理をより個性的に、奥深いものしているのはまちがいない。
「発酵食品をつくるのは純粋な興味もあるけれど、もうひとつは保存食という意味合いもあるの。アップステートは冬が厳しくて、ときとして大雪が降ることもある。『Fish & Game』では、できるかぎりローカルな素材を使いたいと思っているけど、どうしたって真冬にトマトは穫れないでしょう。だから夏の間にトマトを瓶詰めにしておくの。最大限にフレッシュなフレーバーを残せるよう工夫してね。ピクルスもキムチも梅干しも同じ。この夏は400kgのトマトを瓶詰めしたのよ」

なるほど。発酵食品や保存食が進化する根底には、食材が乏しくなる冬の食卓を豊かにするという万国共通の理由があるのだ。しかもビネガーづくりの材料となるのは、本来レストランの廃棄物になる食材。無駄なく合理的に素材を使うという点も、彼女にとっては重要な要素だ。
「最初、ブルックリンの自宅でつくったビネガーと基本的なつくり方は変わっていないの。野菜や果物の皮、キャベツの芯、ニンジンの葉の部分。あとはお客さんに出せなくなった古いワイン。全部捨ててしまうものだけど、そこからおいしいビネガーが生まれるって、すてきじゃない?」

野菜や果物など、食べ物を隅々まで大切に使う。それはローカルのつくり手への最大限のリスペクトでもある。
「Fish & Game」は2015年、全米で目覚ましい成功を収めたレストランとして名誉あるアワードを受賞した。国内外から注目を浴び、予約が殺到する店になっても、ジョリーさんのこつこつとした手仕事のスタンスは変わることはない。
「夫も私も、とにかく自然のなかを歩くのが好きなの。めずらしい花やハーブを見つけたら持ち帰って、図鑑で調べてみる。食べられるものなら、どんな料理に合うか、カクテルに添えてみたらどうかとか相談しつつね。その過程がすごく楽しくて。発酵食品も同じで、毎回がトライアンドエラーの繰り返し。すぐには答えが出ないからこそ、興味が尽きないのよ」。

彼女のガーデンを歩きながら、日本でいうエゴマの葉を見つけた。「これは生春巻きに入れるとおいしいんですよ」と言うと、「それはナイスなアイデアね! すぐに試してみるわ」とジョリーさん。「今、味噌づくりや麹を使った発酵にも挑戦しているところ。日本の発酵食品はすごく奥深くてエキサイティングね」と、実験中の発酵ジャーを次々と見せてくれた。
「畑やガーデンを歩いていると、どんどんアイデアが湧いてくるの。インスピレーションの宝庫、いいえ、クラスルームといったほうがしっくりくるわね」とジョリーさん。ガーデンのなかでひとつひとつの発見に驚き、それを「食」という形で表現していく。アップステートの豊かな自然が、彼女にとっては最高の先生なのだ。
 
» PAPERSKY #51 Upstate New York | Farm & Table Issue

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