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摩訶不思議な植物のデザート、愛玉子

雰囲気のある古い建物の赤い扉をおそるおそる開けると、日差しがやわらかく届く空間があった。すべての調度品がほどよく配置され、休日の午後のようなのんびりとしたムードをつくっている。しかし「時常在這裡」は本来、行列ができる人気 […]

01/03/2016

雰囲気のある古い建物の赤い扉をおそるおそる開けると、日差しがやわらかく届く空間があった。すべての調度品がほどよく配置され、休日の午後のようなのんびりとしたムードをつくっている。しかし「時常在這裡」は本来、行列ができる人気店。パティシエのアーロン・シュさんとデザイナーのマオさんの共同運営で、週の半分は店として営業、もう半分はアトリエとして稼働している。
雑誌も古道具も、置いてあるものは日本のものが多く、キッチンには日本で買いつけてきた古いかき氷機まで。そういえば表の赤い扉の横には、日本の玄関先でよく見かけるような郵便受けが飾ってあったっけ。訪れてのっけからリラックスしてしまった要因はここにあったわけか。そしてもうひとつの理由は、ていねいな語り口と、はにかみながら微笑むアーロンさんの人柄によるものだろう。
さて、そんな彼が紹介してくれたのは愛玉子。王道のデザートだが「つくり方を知っている人は意外に少ないから」とアーロンさん。台湾固有のイチジク科の植物、愛玉子の種子の部分を乾燥させて使うのだ。つくり方はいたって簡単で、水のなかでこれを揉むと、愛玉子に含まれるペクチンが作用し、水がみるみる固まりゼリー状に。魔法のような現象に「おお!」と歓声を上げる一同。しかしこの凝固力は長くはもたず、1~2日経つと水に戻ってしまうという。固まるのも不思議なら、消えてなくなるのも不思議。まったくおもしろい植物だ。愛玉子そのものには味があまりないので、好みで味をつけるといい。アーロンさんのお気に入りは黒糖とレモン。こっくりした甘さとさわやかな酸味が、夏の終わりの午後にふさわしかった。
» PAPERSKY #49 Taiwan | COOK Issue