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  • Photography: Luca Gabino
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サン・ピエトロ島を目指す南海岸線のドライブ

, 2015/02/26

サルデーニャ島へ旅をするなら、弾丸ツアーは似合わない。州都・カリアリを拠点に、海岸線に沿ってスルチス諸島へ向かう、2日半のショートトリップ。旅の途中で、さらに小さな旅へ出よう。レンタカーを借りてカリアリを出発してすぐ、視界の両サイドに水が見えた。左はアフリカ大陸を望む大海、右は内陸部に続く浅瀬である。その浅瀬の、鏡面のごとく景色を反転して映している水面に、ポツポツと点々を発見した。「フラミンゴじゃない!?」、車内がにわかに沸き立つ。フラミンゴはアフリカとか南米とか強烈に暑い地域に生息しているものと思っていたから、ちょっと意外だった。本来は渡り鳥であるフラミンゴはサルデーニャを気に入ったらしく、この何十年かは渡らずに居着いているらしい。曇り空と水面のグレー、水面の藻のライトグリーンに、フラミンゴのペールピンク。野生のフラミンゴとの思わぬ遭遇に気持ちは高揚する反面、眼前に広がる景色はくすんでいて、しんとしている。地中海の明るいイメージとは違う美しさだ。

午前11時、強風に潮の香りが混じったプーラ岬に着いた。ノーラは紀元前8世紀ごろにフェニキア人がつくった街だが、その後カルタゴ、古代ローマと支配が移り、現在、ここには2~3世紀の街が丸ごと遺跡として残っている。東西の海の見晴らしが利くこの場所は重要な交易拠点であった。北アフリカやスペインなどからも人々が訪れて地中海じゅうのものが集まってきていたから、海を越えた国のものもここでたくさん出土するらしい。国内では唯一完全な形で残っているという円形劇場の、ステージの背後は海。絶好のロケーションの劇場は、いまも現役でコンサートなどに使われているという。ここは公衆浴場、こっちは公衆トイレ、海に面したいちばんいい場所には権力者の邸宅と、かなり具体的に街のようすがわかる。いま自分が立っている石畳も当時の人々が使っていた往来だ。想像をたくましくさせれば、4,000人が住んでいたという街の活気あるようすが脳裏に浮かびあがってくる。目を高台にやると、こっちを見下ろすように塔が建っている。あれは西暦568年にスペイン人によって建立されたものだと教えてもらい、なーんだ新しいのかと思った直後に、いやいや、それだって十分に古いじゃないかと思い直す。まったく、時間感覚がおかしくなってしまう。

正午すぎ、再び車を走らせる。道端にはアカシアとアスフォデルが花盛り。こちらでは生でよく食べるフェンネルもわんさか生えている。ホテルや別荘が点在しているが、3月のこの時季は閑散としている。しかしシーズンオフも捨てたものではない。ビーチを独り占めしほうだいだからだ。気になるビーチを見つけては、そのたびに車を停めて見にいった。親密な空間をつくっているプライベートビーチがそこここにあり、サーフィンやカイトサーフィンの姿も少しは確認できる。おとなしいジャーマンシェパードがひとり、どうやら海に入っているらしい主人の帰りを待っていた。

15時半、サンタンティオコ島に到着。車という車が茶色く汚れているのは、サハラ砂漠の砂をかぶっているからだ。ここがイタリア本土よりもアフリカ大陸のほうが近いことを思い知る。これから2泊お世話になるB&Bで荷物を下ろして、今日の行程は終了だ。

翌朝、近所のバールで簡単な朝食を済ませ、フェリーで30分の距離のサン・ピエトロ島へ。海上を進むうちに陽が射してきて、到着するころには海の色も鮮やかなブルーになっていた。島唯一の街、カルロフォルテの明るい街並に出迎えられ、気分はすっかり晴れやかに。港に面した目抜き通りには魚屋、八百屋、土産物屋など小さな商店が並んでおり、冷やかしながらぶらつくのが楽しい。ここは世界有数のトンノ(マグロ)漁の地だ。そんな島で、トンノを店名に冠したレストランでランチをするのが今日の楽しみなミッションだ。レストランの予約時刻までのつなぎに、窓を開け、大音量でラジオをかけてドライブをすることにした。マニアには垂涎ものの缶詰工場の跡地など廃墟も目にする一方で建設中と思われるリゾートホテルもあったが、いずれにしてもやはり人気はない。海の美しさは特筆に値するし、ダイビングスポットやサーフエリアもあるから、きっとたくさんの人がこの島でヴァカンスを過ごすのだろう。

住宅街の入り組んだ路地の先に、目指すAl Tonno di Corsaはあった。前菜のカポナータからメインのステーキまでトンノ尽くしに舌鼓。マグロは日本人には非常に親しみのある魚だけれど、オリーブオイルとローズマリーの風味で食べるのは新鮮だ。これまでサルデーニャで食べてきた素朴な料理とは一線を画す洗練された演出と味だった。「地元民は、昔は本当によくトンノを食べてましたよ。1本丸ごと食べるから家族だけでは消費しきれず近所のみんなで食べたものです。そうやってこの店も始まりました」と話してくれたのは、オーナーシェフのセコンド・ボルゲーロさん。「料理において最重要なのは食材。旬であること、新鮮であること、お客さんにすべてを見せられること。だから背景のわかる地元の食材しか使いません」とも語ってくれた。ドルチェとミルト、コーヒーまでフルコースを堪能してから店を出ると、シエスタの時間。街はひっそり静かになっていた。再びフェリーに乗りこみ、サンタンティオコ島に戻る。ぽかぽか陽気にワインの余韻と船のほどよい揺れで、いい気分の帰路になった。

カリアリに帰る日は一転、陽射しの強い夏日になった。行きのように寄り道しなければ、100km弱の道程などスーペルストラーダ(自動車専用道路)であっけないほどすぐである。

カリアリには市民が公園のように気軽に利用しているPoettoというビーチがあって、ちょうど日曜日だったから、子連れの家族やデートのカップル、犬の散歩の人もたくさん出ていた。急に暖かくなったせいで、ダウンジャケットからトップレスまで人々の格好はまるでばらばらだったが、セリエAの地元チーム、カリアリ・カルチョと、ローマはラッツィオのチームウェアを着ている人もちらほら。彼らと私たちは、これから同じ場所へ向かう。そう、この小さな旅のハイライトにセッティングしたのは、セリエAの観戦なのだ。自分の名前入りのチケットはすでに入手してある。セキュリティの観点から、チケット購入の際には身分証明書を提示し、それがチケットにも印刷されている。こういうところに、さすがサッカーの国だなと妙に感心してしまう。

スタジアムは老朽化のため、半分以上の客席をクローズしていた。古いスタジアムだから電光掲示板もない。そのうえ、オーナーの采配ぶりに不満を表明するためカリアリのサポーターはチャントをせずに静観している。もとより試合内容も盛りあがらず、変に静かなゲームだった。結局ホームチームが負けてしまってなんとも味気なかったけれど、ゲームでのファンの態度とか、試合後に場外で仲間同士がアッバアルデンテを酌み交わしているところとか。そういう場面ひとつひとつを見かけるにつけ、ヨーロッパでのサッカーの根づきかたに羨望を覚えたのだった。

そんな思いで締めくくった、サルデーニャの南端をふちどり小島へと移動したショートトリップ。それはリゾートアイランドのオフの顔が見られた、小さな旅だった。
 
» PAPERSKY #44 Sardegna | FOOD Issue (no.44)

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name
Nora
place
サルデーニャ
address
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phone
070 920 9138
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