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アシリ・レラ/アイヌ活動家|PAPERSKY Interview

, 2015/01/06

日高山脈から流れる沙流川沿いに開けた山裾の集落、北海道平取町二風谷。ここでは山と川からの豊かな恵みを得て、昔からアイヌの人びとの暮らしと文化が営まれてきた。その末裔である山道康子さんは、彼女を慕う多くの人たちから、アシリ・レラさん(アイヌ語で「新しい風」の意)と呼ばれている。二風谷ダム建設で揺れる時勢を受けて15歳からアイヌ女性活動家として奔走し、アイヌの文化継承と職業訓練のためにアイヌ語学校を設立。その傍ら事情がある子どもを引き取り育てあげてきた。世界各地で儀礼を行い先住民族との交流も多いアシリ・レラさんを、彼女が主宰する「アイヌモシリ一万年祭」の会場に訪ねた。
 
―おいたちから聞かせてください。

今から68年前の2月のことでした。私は雷が落ちたときに生まれたそうです。私を雷神の生まれ変わりと火の手を恐れた両親は、一度私を外に捨て、拾って東の方角から家に入れて「この子が落ちていました。人間の子として入れます」と、カムイに申し送りをしました。そうやって人間の子として授からせてもらう儀式をしたそうです。

貧しくても道徳を重んじる両親のもとで、私は山や川で熊の子みたいに遊んでいた子どもでした。学校をさぼってばかりいる私を見かねて家庭訪問に来た先生に対し、母が「普通の子といろいろ違うのでご迷惑をかけますが、やる気になったら学ぶでしょうしやる気がない時に押しつけてもやらないでしょう」と笑って追い返したのを覚えています。子を守る愛の強い人でした。父親はアイヌ民族のアイデンティティを確立しようと猛烈に勉強し、尋常高等中学校を優秀な成績で卒業した人でした。教師を志しましたが、アイヌであるがゆえに夢は叶わず、山奥に引きこもり、炭焼きで生計をたてていました。

当時の北海道では、線路の敷設工事やトンネル工事でアイヌや朝鮮人、日本の囚人が奴隷のように働かされる状況が続いていました。父は工事現場に炭俵を3つか4つ売りに行っては、帰りの炭俵にひとり入れて逃がすということもしていました。アイヌよりも悲惨な扱いを受けていた朝鮮人の男がこう叫ぶのを聞いたそうです。「茅葺きの家に逃げろ」。アイヌの家に逃げ込めば生きて帰れると。そういう話を仲間としては「こんなことが許されてはいけない」と話す父の姿をよく見てきました。「もしかしたらうちの父親、政治犯かもしれないな」と思いながらね(笑)。
 
―アシリ・レラさんのさまざまな活動は、そんなご両親の姿を見ていたから?

そうです。自然のあらゆることを教えてくれました。動物が木の実を食べて排泄することで種を撒いていること、リスは冬眠のために埋めた木の実の食べ残しが翌年には発芽し、森をつくること、川岸に柳を植えると根が張って護岸になること、柳の根の下に魚は産卵し、天敵から卵を守ること……いろんなことを教わりました。小学6年くらいになると、父は急に厳しく読み書きを教えるようにもなって。当時は多くのアイヌが借用と偽られて土地を奪われていたので字の勉強は重要と思ったのでしょう。

山が開発され、洪水はひどくなる一方で、アイヌ研究が始まり、学問という名のもとに先祖の墓がどんどん掘り起こされていました。最終的に日本人はみんなアイヌのルーツである縄文人が原点だという結論に達したけど、骨は持ち主に返してほしいと憤りを感じていたんです。だけど厳しい時代を生きてきたアイヌの老人たちは「日本語を話せ」と言う。アイヌ語は記憶伝承だから、しゃべらなくなると、子どもたちは覚えられなくなる。思春期の多感な時代にいろんな思いが渦巻いていた私は、中学校の卒業式にアイヌの鉢巻きマタンプシをいつもと同じように巻いていきました。そうしたら「それを外すなら卒業証書をやる」と言われました。私は卒業証書をビリビリに破いて、運動の世界に飛び込んだんです。
 
―このアイヌモシリ一万年祭も今年で26年目になりますが、一万年という言葉にはどんな思いがあるのでしょうか。

一万三千年前は日本も大陸と陸続きでした。当時はアイヌの祖先である縄文人が南までいて、後からきた渡来の文化と融合して日本の文化が形成されているので、もちろん日本人は混血だし、アイヌも今は赤ちゃんに蒙古斑が出るようになりミックスが進んでいます。長い間、血と破壊の歴史は繰り返されたけど、一万年前はすべての人は神の子で、大地はウレシパ・モシリ(互いに育ち、育み合う大地)だった。だから一万年前の原点に戻ろうという思いがあります。会場のあるここは、新冠の御料牧場建設のために強制移住させられたアイヌがいた場所。同じように労働に従事して亡くなった朝鮮人、日本人の慰霊も兼ねて毎年お盆の時期に行っています。
 
―この一万年祭に数日滞在して驚いたのは、子どもの数が多いこと。ステージに子どもが自由にあがって大人とやりとりしては、降りていく姿が印象的でした。また、アイヌ語学校の歌と踊りを見せていただきましたが、歌と踊りのなかに、人間関係の間合いのとり方など教育的な教えが込められているようにも思いましたね。

アイヌは見て覚えることを大事にしているんです。昔はまわりに子どもがいたり、赤ん坊が這っていたりしても邪魔にすることはなかった。子どもは見て覚えるものと知っていたから。今も私はそのやり方でやっています。学校の子どもたちは小さいときから見てやってきたから、踊っているときに小さな子が這い上がってきても邪魔だと思わないんです。やっぱり子どもは大人と一緒に学んでいくのがいちばんです。かつて父親はこんなことを言いました。「仕事ではない。食べることではない。お金を得ることではない。人間関係がいちばん大変なんだ。これができる子になったら、世の中は怖くない」って。人間関係がもつれて、トラブルが起こるから嫌になるわけでしょう? 相手の心をわかってあげられる子になれば、世の中で楽に生きていける。それがアイヌの子育て。人間らしい人間に育つ方法です。
 
―人間らしい人間とはなんでしょうか?

それは、人は人を殺しちゃいけないということ。人は人を裁いちゃいけない。人の悪口を言ってはいけない。人を悲しませてはいけない。人は地上に生まれたら、生きる権利がある。食べる権利がある。そして幸せな心で生きる権利がある。これを破ると人間としての安住はありません。これが人間らしい人間です。
 
―アイヌの神様のこと教えてください。

まず、私たちは偶像崇拝をしません。その代わり、天地、太陽や月、森、火山の火、水……自然のなかのあらゆるものにカムイがいます。それらは人間が絶対につくれないものであり、人間が絶対に勝てないものです。
 
―世界各地の先住民族と交流があるそうですが、どのような出会いがありましたか?

ネイティブアメリカンやオーストラリアのアボリジニ、ニュージーランドのマオリ、ハワイ、ロシア、台湾、いろんなところに行かせていただきました。タスマニアでは“大地の人”という意味のクーリーというアボリジニに会いました。彼らも白人社会の文明を押しつけられた人たちでしたが、「魂は売らない」とはっきり言って、カンガルーの踊りなど披露してくれました。わずかなお金のために羽毛布団の原料となる鳥をたくさん捕らねばならない彼らは、胸が傷むと泣きながら話してもくれました。水のダムができてさらに水不足が起こったとも言っていました。世界で起きている先住民族の問題は同じですね。

でも最近、変わり始めましたね。白人でもネイティブの人を好きになって結婚する人もいる。神々は今混ぜているのかなと思います。魂のいいところを残すために工夫している。きっとその人たちが地球を元に戻すのかなと私は思っています。
 
―読者へメッセージを。

私は歳だからやがて死んでいくだろうけど、これからの若い人たちには、ぜひ木を植えてほしいと思います。木を植えて森をつくれば川がきれいになり、魚が産卵にきます。まず森です。動物や鳥、魚を必要な分だけ食べて生きていける命の森。私たちのイオル(生活基盤)は森から始まり、川を流れ海から戻ってくる。

もしも森や川や太陽が「ああ疲れたから休むか」と休んでしまったら、私たちは生きていけない。酸素がなくなり呼吸もできなくなる。そういうことを多くの人は忘れてしまいました。でも元に戻すのは、人間にしかできません。動植物を守ることができるのも人間なのです。ものを言わないからよいのではなく、ものを言わずに森を再生してくれている彼らのことを忘れてはいけません。

カムイは動植物も、我々も同じようにつくられました。ただし、山や森を守るために、私たちに言葉を与え、歩くことを教えた。そして、死んだ人たちと動植物を恐れないように、人間に火を与えました。だからカムイノミ(祈りの儀式)は必ず火を焚くんです。煮炊きや、水を使って消すことも教えた。それをおろそかにすると火事になるけれど、山で火を焚いたり、鈴やラジオなどで自分の存在を知らせれば、動物は寄ってきません。そのように、私たちは彼らの代弁者であり、火を持って掟を守ってきたのだから、それを忘れてはいけないのです。
 
Asir Rera(アシリ・レラ)
日本名、山道康子。1946年、北海道平取村生まれ。15歳で民族問題や環境保護活動、平和活動に取り組み始める。二風谷でアイヌ民芸店を営む傍ら、1979年に「沙流川を守る会」を立ち上げ、1989年にフリースクールも兼ねた「山道アイヌ語学校」を設立(2009年に閉校)。同時にお盆の時期に「アイヌモシリ一万年祭」をスタート。ネイティブアメリカンやアボリジニなど世界各地の先住民族を訪ね、シャーマンとして各地で儀礼も行い、交流にも努めている。
 
» PAPERSKY #46 Northern Japan | Jomon & Craft Beer Issue

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