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A Mt. Climbing Priest 登山道を外れて

先日、奥穂高岳南稜というルートを登ってきた。このルートは岳沢から北アルプスの名峰奥穂高岳へ突き上げる岩稜で、三つの岩峰「トリコニー」がシンボルになっている。南稜ルートは今からちょうど100年あまり前の1912年に初登攀さ […]

09/03/2013

先日、奥穂高岳南稜というルートを登ってきた。このルートは岳沢から北アルプスの名峰奥穂高岳へ突き上げる岩稜で、三つの岩峰「トリコニー」がシンボルになっている。南稜ルートは今からちょうど100年あまり前の1912年に初登攀された。登ったのは日本アルプスをヨーロッパに知らせたイギリス人宣教師ウォルター・ウェストンと明神池の畔に暮らした猟師であり山案内人の上條嘉門次。ウェストン50歳、嘉門次64歳での冒険登山だった。まだ誰も登ったことのない岩稜を、ルートを探し求めながら、当時の装備で、しかも一日で上高地から奥穂高岳に登頂して下山したと言うから驚きだ。南稜は、日本アルプス黎明期に登られたクラシックルート中のクラシックルートである。
岳沢上部の雪渓を詰めて取り付く。ルンゼ状の岩場や草付き、薮を登ってトリコニーへ。トリコニーは硬い岩の弱点を突いて登る、快適な岩稜クライミングだ。浮き石が多い岩峰を越えると傾斜が緩くなり、ガレ場を登ると稜線上の南稜の頭に到着する。奥穂高岳山頂はすぐそこだ。変化に富み、弱点を突いた合理的なラインが魅力である。
夏の南稜ルートは初級バリエーションルートである。バリエーションルートとは一般登山道でないルートのこと。いわば登山道を外れた登山ルートである。登るにはクライミングギアや登攀技術を要するが、クライミングに慣れた経験者と一緒ならバリエーションルート初心者でも登りやすいし、まずはガイド登山に参加してみるのも有効な方法だろう。
地形図を広げると登山道は破線で記されている。しかし登山ルートはそれだけではない。実は他にもたくさんあるのだ。整備された登山道を外れて山と戯れる。今まで見られなかった風景に出会い、山がいっそう広がりをもちはじめ、もっと自由な登山の魅力に気付かせてくれる。