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輪島塗 3|千年続く生活様式 赤木明登

, 2013/02/12

あらゆる伝統がかたちを変えている。だが、日本のすべての伝統工芸のなかで、漆器ほど著しい変化を見せているものはない。輪島では、ひとつの椀や盃ができるまでに数名の職人の手と、さまざまな技法や工程が必要である。だが需要が減少の一途をたどり、職人の家に生まれた者が稼ぎのよい仕事に就くようになった結果、塗師は自分の専門外の技能も習得しなければならなくなっている。しかし最近では、ひとつのことに集中して打ちこめる空間を求めて田舎に移り、工芸の道に答えを見いだしている職人がいる。赤木はそんな職人のひとりだ。先人たちに敬意を抱きながらも、現代人が求める漆器を生みだし、衰退する伝統に新たな息吹を吹きこんでいる。

赤木は以前、東京の大手出版社で編集者として働いていたが、輪島に移り住み、漆職人になる道を選んだ。「漆器に惹きつけられた理由は本当のところよくわかりません。恋に落ちるときと同じです」、椀の前に座った赤木は語る。輪島に家族と移住して、まず4年間、熟練した下地職人の岡本進のもとに弟子入りし、技術を学んだ。現在は自分の工房をもち、数人の弟子とともに漆器を制作している。

赤木にとってこの仕事は、雑誌の編集とさほど変わらない。どの漆器にも、さまざまな職人の手と素材が必要だからである。ひとつの椀ができあがるまでに多くの作業が必要であり、ひとつの椀のなかにさまざまな素材が使われているから、漆器には価値があり、値段も高くなる。漆器の本当の価値は、乾いた塗料の下に隠された椀の心意気にあると赤木は語る。「漆にはほかの素材にはない、心を震わせる感触がある。椀を口に当ててみれば、そのことがわかります。口当たりはやさしいけれど、漆はさまざまな成分が混ざることで、ガラスのように硬くなるのです」。

その価値は、椀を日常的に使うことによってわかるという。「見ただけでは価値はわかりません」。赤木はこれを、工芸品の世界にある大きな問題だと考えている。つまり工芸品が日用品ではなく、鑑賞用の美術品になると、昔の生活を伝える物証として寺院や美術館に収蔵されるようになることだ。赤木はこの「伝統工芸品を鑑賞する」文化を変えたいという。「美術品としての力もありますが、使うことにより、食生活がより楽しくなり、食事がおいしくなります」と彼は語る。「プラスチックは冷たく、生命がありません」。

彼は椀の生命を引きだせる職人になることを目指し、漆器づくりをしているという。「これは千年ほど前からよく使われてきた器。つまり器の形というDNAがこうして受け継がれている。その意味を理解して、いまからさらに未来へとこのDNAを伝えていくことが大変重要なことではないかと思うのです」。

赤木明登(あかぎ あきと)
塗師。1962年岡山県生まれ。
編集者を経て、1988年に輪島へ移住

This story originally appeared in Papersky’s SWISS | water issue (no. 40).

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name
赤木明登
place
石川県輪島市

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