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  • MIEPHOTOGRAPHY: ©式年遷宮広報本部+TYO

マンジョット・ベディ 伊勢神宮「式年遷宮」への想い

, 2012/12/17

来年は20年に一度の伊勢神宮の大祭、式年遷宮が行われる。持統天皇在位の690年以来、実に1300年にも渡って受け継がれてきた式年遷宮。神々が鎮座する社殿を造り替え、御装束などの調度品も一新する、国をあげての大祭である。その式年遷宮にともなうプロモーションを担い、平成16年から伊勢神宮式年遷宮広報本部より依頼を受け、宣伝活動に携わる外国人クリエイターがいる。インド出身のクリエイター、マンジョット・ベディ氏だ。TOYOTAレクサスやプリウスの広告を手がけ、国内外の広告の現場で活躍する彼は、知人に誘われて訪れた伊勢で、これまでに経験したことのない感動を覚えたという。そしてその伊勢での体験を多くの人に、多くの日本の若者に届けたい、その熱い想いが伊勢神宮式年遷宮広報本部側の想いと重なり、今回の式年遷宮にまつわる一連のプロモーション広告につながった。かつて外国人が踏み入れたことのない領域に足を踏み入れ、日本の信仰の象徴ともいえる伊勢神宮と対峙したマンジョット氏に、伊勢への想いをうかがった。

「僕が初めて伊勢神宮を訪れたのは、平成15年。日本で20年ほど暮らしていたので、ある程度日本の文化や伝統にはふれていたのですが、日本のもっと奥まで五感でふれたいという思いもあって、知人に連れられて訪問しました。実際に訪れてみると、伊勢のことも、神道のことも知らない、ましてや自分の宗教ではない信仰の場所なのに、大変感動したんです。宇治橋を歩いて五十鈴川を渡っていくと、川のせせらぎや葉っぱのゆらぎ、やさしい風、玉砂利の音…まわりの現象が五感に響いてくるんですね。しかもそこは1300年もの間、いやもっと昔から1ミリも変わっていない景色が広がっている…。そう思ったら、体に電気が走るくらいの衝撃を受けました。2歳の時にインドを出て、ヨーロッパ、イギリス、アメリカ、オマーン、サウジアラビア、日本と、いろんな国を転々としてさまざまな国の文化にふれてきた自分が、こんなにも感動したのはなぜか? 日本人でもない自分がこれほどに感動したのはなぜか? 不思議に思いましたね。そしてその時に、自分が何かしなくてはならないという使命感も感じて。「広告でコミュニケーションの仕事をしているなら、この感動を人々に伝えなさい」と伊勢の神様から言われているような気がしたんですよ」

伊勢から戻り、早速、伊勢神宮のことや式年遷宮について調べ出したマンジョット氏。そこで驚いたことは、日本人のなかに式年遷宮を知らない人がいるという事実だった。

「感動して東京に戻って、まわりの日本人に式年遷宮のことを聞いてみたら、式年遷宮のことを知らない、文字すら読めない人がたくさんいたんですよ。日本の一番大事なお祭りであるはずなのに、学校では教えていないのか、親から子へ伝えていないのか。正直、驚きましたね。特にこの20~30年前くらいから、日本では伊勢に限らず文化を継承するという意識が薄まっているんですね。式年遷宮は日本の伝統、技術、文化を後世に確実に残すために、20年に1度、1300年もの間、受け継がれている行為であるのに、そのことを知らない日本人がいることに危機感を覚えて。1300年続いてきたものが、この先、100年、200年先にどんな風になっていくんだろう…?と考えた時に、これからも永遠にこの行為が受け継がれるよう、コミュニケーションという立場でできることをしなければ、と改めて思ったわけです。それで、伊勢神宮式年遷宮広報本部へのプレゼンテーションに参加し、結果、平成25年の式年遷宮に向かって、平成16年からプロモーションの仕事に関わらせてもらうことになりました」

前代未聞の外国人によるプレゼンテーション。伊勢神宮式年遷宮広報本部の反応はどのようなものだったのだろうか?

「20年に一度、ということは、例えば今、30歳の人が次に遷宮を迎えるのは、50歳。その時、その人に子どもがいたとして、実際に遷宮のことを知らなければ、子どもたちに語り継ぐこともできないわけですよ。つまり今回の遷宮を20代、30代の人たちが体験しなければ、次につないでいくことができないかもしれない。だから僕はこの世代のひとりでも多くの人たちに、伊勢に興味を持ってもらいたい。そのきっかけをつくることが僕の役目だと伊勢神宮式年遷宮広報本部の関係者に伝えたんです。0から1を生まなければ、2も3もない。今回、僕がやりたいことは、伊勢への興味をもってもらうためのきっかけづくり。つまり0から1を生むことだと。そのためには難しいことを語るのではなく、広告のビジュアルを通して感動を伝え、実際に伊勢に足を運んでもらうきかっけを提供したいと伝えました。もちろん賛否両論でしたけど、最終的には関係者に納得していただけて、式年遷宮に向けたクリエイティブを請け負うことになりました。

僕自身も今回の件では、いろいろ考えさせられましたね。そもそも広告のプロモーションというのは、サイクルが短いんですよ。広告の命はとても短い。僕は1クリエイターとして、ディレクターとして、カメラマンとして、次の世代に何を残せるのか…と考えたら、何も残していないことに気がついたんです。だから伊勢神宮式年遷宮広報本部のプロモーションでは、次の世代とのコミュニケーションという点も意識して取り組みました。20年に一度ということは、このまったく同じ風景を見られるのは、40年後なんです。その間に嵐が来るかもしれない、何があるかわからないと思うと、目の前にある風景は歴史的な瞬間でもあるわけです。だから次の世代のために、この瞬間を残したいという気持ちで撮影しましたね」

実際に完成したビジュアルは、今までに撮られたことのない伊勢神宮の表情。その作品をマンジョット氏は、外国人だからこそ制作できたという。

「もともと僕は伊勢のことをあまりよく知らなかったんですよ。今となっては恐れ多くてできないことばかりですが、当時の僕は、自分が初めて訪れたときの感動を伝えたいという一心で、伊勢神宮式年遷宮広報本部に押し掛けました。でも僕が一歩踏み出さなければ、これまでと変わらない伊勢の表情しか映し出せなかったと思う。だからこの写真や映像をみて、今の伊勢、新しい伊勢を感じてほしいですね」

平成15年に初めて伊勢を訪れて以来、幾度と伊勢を訪れてきたマンジョット氏にとって、改めて伊勢神宮とはどんな場所なのだろう?

「知れば知るほど奥が深い。伊勢神宮は感動の宝庫ですね。行くたびに発見があって、いろんな気づきを与えてくれる。そんな大切な場所です。でもどうして伊勢神宮がこんなにパワーがあるのか? 伊勢って何のなのか? 考えた時期があるんですよ。それで見いだした答えは、「伊勢は生きている」ということでした。2000年も前から消えない火があって、毎日、神様に食事を捧げ、神様はそこにいらっしゃる。だから伊勢神宮の敷地内にある木や葉、水、土、生き物すべてに緊張感があるんだと思ったんです。その緊張感が、初めて僕が伊勢を訪れた時に感じて、感動したんじゃないかと。それが伊勢の魅力なんでしょうね。

それと参拝するというのは、お願いするための場所ではないと思うんですよね。感謝の気持ちを伝える場所であって、こうしてここまで導いてくださったことへの感謝。こうして生かしてもらっていることへの感謝。感謝の気持ちを伝えて、頭を下げる行為。それはとても気持ちのいい行為だと思うんです。その感覚も今回の遷宮を通じて、多くの人に知ってもらえればと思いますね」

式年遷宮PR映像
式年遷宮に関する詳細:伊勢神宮
式年遷宮特設サイト

マンジョット・ベディ
1969年インド・ニューデリー生まれ。外交官の父の影響で、2歳でインドを出てからオーストラリア、ハンガリー、イギリス、オマーン、サウジアラビアなど、アジアやヨーロッパの国々を転々として育つ。17歳で来日。1997年、映像制作会社(株)TYOに入社。カメラマン、アートディレクター、クリエイティブディレクターとして数々のTVCM等の制作に携わる。2006年、(株)TYO 1stAvenue事業部を設立。広告制作の枠を超え、企業のコンサルティングやビジネスに関わるコミニュケーションモデルも提供している。

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