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  • Photography: Cameron Allan Mackean
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3本の絹糸に魅せられて|金森鯉実|阿波踊り 2

, 2012/06/13

鯉実がまだ幼いころ、祖母が毎日三味線の稽古をしていた。ぴんと張られた3本の絹の弦を大きな撥で打つと、リズミカルなピーン、ピーンという音が家じゅうに鳴り響く。鯉実が三味線を弾きはじめたのはまだ6歳のころだった。「おばあちゃんの三味線を手にとって、遊び半分ではじいて音を聞いていました」。

祖母の三味線で遊んでいた彼女はいまや、豊かな経験と技能をもつ有名な三味線奏者に成長した。日本でもっとも名の知れた歌い手であり三味線奏者のひとり、お鯉さんの一番弟子でもある。6歳のころから、大人にまじって全国各地でお鯉さんの傍らでともに三味線を演奏してきた。「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ」のお囃子で知られているお鯉さんの「徳島盆踊唄(よしこの)」は、日本で初めて生産された紙製のレコードに収録され、全国に阿波踊りを広めるきっかけにもなった。お鯉さんは2008年、101歳の誕生日まであと数日というところで、桜が花をつけるのを見てから息を引き取った。「お鯉さんは、亡くなる直前まで三味線を弾き、謡っていましたよ」と、鯉実は回想する。

お鯉さんのもとに弟子入りを決めたのは、お鯉さんの人柄にひかれたことと、彼女が自分と同じ徳島の生まれだったからだ。三味線の弾き方は地域によって大きく異なる。鯉実は自分の故郷の奏法を学びたかった。「ここの三味線は小さめの音で、とても速いテンポで弾くんです。北のほうの弾き方はもっと音が大きいの」。三味線の音色は、鯉実が三味線奏者として参加する徳島の阿波踊りでも欠かせない要素になっている。「三味線も踊りに大きな影響を与えています」と鯉実は言う。「私はいつも踊り手の足の運びや動きを見ながら、鼓舞するように弾いています」。

三味線のリズミカルな響きは踊りのバックミュージックであり、ペースを決めるものであるが、それ以上の意味をもつ。徳島の踊り手たちは、三味線こそが人々を捕える阿波踊りの魔法、つまり単調な音楽に合わせて何時間も踊った後に必ず訪れるトランス状態のカギだという。「何時間も休むことなく弾いていると、手がひどい筋肉痛になりますが、弾いているときはまったく意識せず、ずいぶん後になってから痛くなることが多いです。その場にいるときは、無我の状態になっていますからね」。阿波踊りの起源は、飲んで騒ぐ祭りだった。だがお酒の力を借りなくても、踊りによる身体的な疲労感が彼らに不思議な高揚感をもたらす。三味線にぴんと張られた3本の弦が、彼らを別の世界へと誘っていくのだ。 

金森鯉実
三味線奏者。「お鯉さん」の一番弟子
「お鯉さん 百歳のよしこのへ」www.okoisan.com

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name
金森鯉実
place
徳島市
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www.okoisan.com

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