Menu Links
  • TEDxTohoku / Oikawa Denim

「復興」とは何か~TEDxTohokuが伝える東北の今

, 2011/11/29

2011年3月11日の東日本大震災は、圧倒的なスケールで私たちの日常を飲み込んだ。地震とそれに伴う津波による壊滅的な被害。絶え間なく続く余震。予断を許さない福島第一原子力発電所事故の状況。たとえ被災地域から離れていても、誰もが固唾を飲んでニュースを見守り、震災について語り合う…そんな時期がしばらく続いた。

しかし、私のように都会の忙しい毎日を過ごす多くの人達にとって、今や震災の記憶はかなり遠いものになりつつあるのではないだろうか。節電の夏も過ぎ、避難所も閉鎖され、報道から伝わる情報はますます断片的なものになった。頭では分かっていても、自分達の日常と、被災地域の現状との距離はますます離れていく。

そんな中、「震災を経験した1人1人が復興について考え、東北・日本の現状について、当事者意識を持って向き合おう」と若者達が立ち上がった。彼らはそのメッセージを、世界各地で広く行われているカンファレンス形式のイベント「TEDx」として世の中に発信しようと、今回の「TEDxTohoku」を企画したのだった。

10月30日、会場の仙台市・東北大学川内萩ホールには大勢の来場者が詰めかけた。オーガナイザー代表の挨拶の後、山木屋太鼓「山猿」の生演奏で幕を開けたTEDxTohoku。 この太鼓チームが拠点としていた福島県川俣町の山木屋地区は、 福島第一原子力発電所事故により、 4月から計画避難区域の指定を受けている。苦境の最中にある彼らが、故郷の美しい自然を思い浮かべながら演奏したという「雷神山」。力強い和太鼓の音がホールを揺らし、笛の音が美しく響き渡る。客席の誰もがその情感溢れる演奏に引き込まれた。

**

今回のTEDxTohokuでは、12名の登壇者がプレゼンテーションを行った。その顔触れは幅広く、自らも被災しながら当地で精力的に活動を続けている人、離れた地域から現地入りし、独自のプロジェクトを立ち上げて復興支援に取り組んでいる人、中には、今日のイベントの為にアメリカからやってきたプレゼンターもいた。

特にオイカワデニム社長の及川秀子氏のプレゼンテーションは、ものづくりの盛んな東北を象徴する体験談として、多くの人に感銘を与えるものだっただろう。低価格ジーンズが市場を席巻する中、他社の追随を許さない高度な技術力で、世界的な評価を受けているオイカワデニム。共同創業者であったご主人の他界、バブル崩壊など、幾度かの経営危機を乗り越え、2006年には世界で初めて麻糸とデニムをかけ合わせた、独自のブランド「Studio Zero」を立ち上げた。

そうして世界での評価を確立しつつある中で、拠点とする気仙沼市本吉町を津波が襲う。高台に建てていた新しい工場を残して、倉庫・工場・オフィス、そして及川秀子氏も含めて多くの従業員の自宅が失われてしまった。高台に残った工場は緊急の避難所となり、地域住民達と助け合いながらの避難生活がしばらく続いた。

そして、震災からおよそ1ヶ月後、 生活インフラの復旧も進まない中で非常用電源を用いてミシンを動かし、 オイカワデニムは事業を再開する。 世界を相手にするものづくりのメーカーとして、また地域住民の心の支えとして、工場を操業することが何よりも重要な復興へのメッセージであったことは想像に難くない。

同じ頃、津波で流された倉庫にあったジーンズが山林の木から見つかった。「デニムは人生に似ている。一度失敗してもくじけても、その都度強く立ち上がればいい。」及川秀子氏のデニムを想う気持ちが込められた製品。あれほどの津波に遭っても、ほつれ一つ無いまま発見されたそのジーンズは、オイカワデニムの確かな技術の、そして復興のシンボルとして、人々に大きな希望を与えたのだった。

**

カンファレンス終了後の懇親会では、プレゼンターも交えた多くの参加者が手作りの料理と地酒を味わい、自分達の活動について、東北のこれからについて語り合った。バスで仮設住宅からやってきた地元民、自ら被災地に移住して復興支援に取り組む人、建築・ランドスケープデザインの専門家や海外の研究者など、国や立場を越えた様々な人達が、 東北の現状と未来に強い関心を持ち、このTEDxTohokuに足を運んでいた。

私も参加者の1人として、3月11日のこと、そして今も復興への努力が続けられていることを、多くの人達が心に留めてほしいと願って止まない。

TEDxTohoku
http://tedxtohoku.com/
(近日中に当日の模様を紹介する映像アーカイブが公開される予定です)

Tags: ,









JVC × OLD JAPANESE HIGHWAY 羽州街道編 vol.1 羽州街道

PAPERSKYと旅のセレクトショプ「THE NORTH FACE globe walker」が提案… »STORY

Old Japanese Highway vol.7 イザベラ・バードが歩いた秋田/青森

旅のセレクトショップ、globe walkerと行く、古道の旅。今回はイギリスの旅行家、イザベラ・バ… »STORY

夏、みちのくの山旅へ|PAPERSKY mountain club

夏が来ると思い出す山がある。福島、山形、新潟の三県にまたがる飯豊連峰である。槍ヶ岳は知っていても飯豊… »STORY

紅花染トートバッグ Safflower Dyed|PAPERSKY STORE

山形・米沢にて紅花染めを手がける「新田」とつくった、淡い紅色が華やかで美しいトートバッグ。山形産の最… »STORY

SHE EXPLORES | Biking Rural Japan By Jules Davies

アメリカを拠点に活動する写真家・Jules Daviesが手がけるメディアサイト「SHE EXPLO… »STORY

Tour de Nippon in Akita Tazawako Movie

2017年9月に開催したTour de Nippon in 秋田/田沢湖のレポート動画ができました。… »STORY

柴田慶信商店の曲げわっぱ|日本のつくり手 第11回

くるっと曲げられた円筒形のデザインと美しい木目、そして木の香りが漂う曲げわっぱ。秋田杉を使った曲げわ… »STORY

far ride magazine | Tour de Nippon in 秋田/田沢湖 レポート

韓国・ソウルを拠点に、世界の自転車旅を紹介するサイクルマガジン「far ride」にて、秋田で開催し… »STORY

Feel Nippon! 心の故郷・秋田をバイク&キャンプで満喫した週末旅

あきたこまちの収穫を目前に控え、黄金色の稲穂の海が広がる初秋の秋田。“秋の田んぼ”と書く秋田で、この… »STORY

マップでめぐる秋田|+10 City Maps No.21 Akita

PAPERSKYがセレクトした街の魅力をマップで伝える「+10 City Maps」。第21弾は、西… »STORY

JVC × OLD JAPANESE HIGHWAY 六十里越街道編 vol.3 山伏

PAPERSKYと旅のセレクトショップ「THE NORTH FACE globe walker」が提… »STORY

JVC × OLD JAPANESE HIGHWAY 六十里越街道編 vol.2 山菜

PAPERSKYと旅のセレクトショップ「THE NORTH FACE globe walker」が提… »STORY

「ツール・ド・ニッポン in 秋田/田沢湖」秋田新幹線チケット購入について

9月23日(土)・24日(日)に秋田/田沢湖エリアで開催する「ツール・ド・ニッポン in 秋田/田沢… »STORY

JVC × OLD JAPANESE HIGHWAY 六十里越街道編 vol.1 六十里越街道

PAPERSKYと旅のセレクトショップ「THE NORTH FACE globe walker」が提… »STORY

Old Japanese Highway、日本の古道 vol.3 六十里越街道

庄内地方と山形県内陸部を結ぶ唯一の街道として開かれた、六十里越街道。国府と郡の役所を結ぶ官道として、… »STORY

ニッポンの魅力再発見の旅 秋田/田沢湖

秋田犬、あきたこまち、温泉、田沢湖、稲庭うどんにいぶりがっこ……私たちが知る秋田のキーワードは、どれ… »STORY

“Good People, Town, Shoes” vol.2 あきた森の宅配便 栗山なつこさん

屋根のない場所すべてを楽しむための革新的フットウェアを展開する、アメリカ・ポートランドに本拠を構える… »STORY

参加受付中!リボーンアート・ウォーク @ 宮城県石巻市 Reborn-Art Festival

旅を通じて、旅する身体を取りもどす―そんなスペシャルなツアー「Reborn-Art Walk(リボ… »STORY

ツール・ド・ニッポン in 秋田/田沢湖 参加募集スタート

ツール・ド・ニッポンが初秋の旅先に選んだのは、秋田。内陸にある〝田沢湖エリア〟を自転車で満喫する1泊… »STORY

澤田教一写真展「生誕80周年 澤田教一:故郷と戦場」青森県立美術館

青森県立美術館にて、「生誕80周年 澤田教一:故郷と戦場」が開催されます。1936(昭和11)年に青… »STORY

WORKING FISHERMAN vol.2 南三陸町歌津泊浜 金比羅丸 髙橋直哉さん

ノルウェー発祥のアウトドアブランド、ヘリーハンセンは、1877年、商船隊の隊長だったヘリー・J・ハン… »STORY

重たい曼荼羅の下に座る|山伏ー山の行者たち 3

見上げると、いまは亡き人々の写真が隙間なく貼られた壁が目に入る。念入りに仕立てられた装束に身を包んだ… »STORY

修行者を支える存在|山伏ー山の行者たち 2

山伏は死に臨むため、白装束に身を包み、大きなほら貝と杖を手に山に入っていく。9日間を山中で過ごす「秋… »STORY

肉体は宙を舞い、消えていく|山伏ー山の行者たち 1

出羽三山の深い霧のなかに消えていく人影は、山伏である。人目を忍び、儀礼を重んずるこの修行者たちは、千… »STORY

会津への旅 #3 美しき織姫の住む村 からむしの里・昭和村

福島県奥会津の山中に位置する昭和村。冬場、雪に閉ざされるこの村では、古くから「からむし」の栽培が盛ん… »STORY

会津への旅 #2 縄文時代より受け継がれる 雪国の手仕事

山深い木々のなか、他の樹木に絡まりながら成長し、秋には甘酸っぱい実をたわわに実らせるヤマブドウ。福島… »STORY

name
TEDxTohoku
link
tedxtohoku.com

© 2008-2018 Knee High Media. All Rights Reserved.