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  • Photography: Takeo Okuma

日本の出番|英語で陶磁器は“china”、漆器は“japan”

, 2011/06/13

「英語で陶磁器は“china”、漆器は“japan”」と聞いたのは中学生のころ。なんだか嬉しかったことを憶えている。辞書を引くとたしかに“japan”は漆・漆器とある。でも悲しいかな、漆器を“japan”と言って海外で通用することはまずないそうだ。

日本の漆器産業を取り巻く環境は厳しい。ライフスタイルの変化にともなう漆器離れ、安価な海外生産品の流入。近年、漆器産業に従事する人の数はますます減少する一方だという。私自身も小さいころはあまり漆器が好きではなかった。艶やかに加飾された朱の器や、黒光りしたお椀を、怖いと感じていたこともある。漆器は現代の生活シーンになじまないものだという偏見もあった。いま思えば「いい漆器」というものに出会っていなかっただけなのかもしれない。

漆器の印象が変わったのは谷崎潤一郎の『陰影礼賛』を読んだとき。漆の艶というのは闇のなか、行灯やろうそくの光でぼんやりと照らされた空間でその本領を発揮するものだというようなことが書いてあった。昼間でも薄暗い日本家屋のなかでなら、あの艶感もほどよい演出となって独特の存在感を発しながら空間に調和していたのだろう、そんなふうに思えたのである。現代のように明るく陰のないような食卓で違和感があるのも無理はないのかもしれない。

最近、魅力的な漆の器に出会った。岡山県で工房を構える仁城義勝さんの碗だ。存在感のある美しいフォルム、力強さと上品さが絶妙に溶けあっている。仁城さんは、漆の世界では基本的に分業化されている複数の工程をすべてひとりでおこなうそうだ。益子で活動する若手木漆工芸家、松崎修さんのお盆にも惹かれた。刳ものといって木材から彫刻のように彫りだして形をつくる。素朴で味わい深い魅力がある。焼きものだけでは食卓の風景はもの足りない。“japan”の出番はまだまだあるようだ。

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岡山

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