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独特の高揚感を感じる島|サンディー

, 2010/12/30

1980年代から「サンデイー&ザ・サンセッツ」として数々の作品をワールドワイドにリリース、AIM (マレーシアにおけるグラミー賞)受賞など、世界に通用するアーティス卜として活躍してきたサンディー。近年はハワイ音楽に力を注ぐ傍ら、東京でフラ・スタジオを主宰し、さらにフラの正当的継承者であるクム・フラの称号を授かるなど、個性的な活動を続けている。そんな彼女が、実は長年想いを抱き、憧れていたタヒチ。世界を旅し、辿り着いた楽園で感じたエナジーは、やはり格別のようで。

タヒチへの想いと、禁止令

──サンディーさんはずいぶん前から強烈にタヒチを意識していたそうですが、どうしてですか?

1970年代から、ハワイに住む私の踊り仲間が、よくタヒチへ行っていました。彼らから、あなたも踊りをやっているなら“ヘイヴァ・イ・タヒチ”という芸術祭を絶対に観た方がいいよ、と勧められていて。そして私は踊り以上にタヒチ音楽に血が騒いていたから、実際に行って空気を昧わって、素晴らしい音楽が生まれる理由を探したいと考えていました。ただ、へイヴァ・イ・タヒチの時期はホテルや祭典のチケットを取るのがとても大変で、機会が訪れるのをずっと待っていました。自分自身に用意ができれば必ずそこに行ける、と私は信じているタイプなので」

──ハワイのフラの恩師から“タヒチ禁止令”を出されていたそうですね?

「そうなんです(笑) 。フラの修行時代、私があまりにもタヒチ音楽と踊りが好きだったから、クム・フラ(=古典フラの正統的伝承者)になるまで、タヒチに意識を向けてはいけない、という命令が出たんです。だからタヒチという言葉も耳に入れないようにするくらい、ずっと我慢して、2005 年にクム・フラになった瞬間、“今だ、行く!” という気持ちが爆発してしまい(笑)」

──実際に訪れてみて、印象はどうでしたか?

「空港についた途端、ハワイとは違った、ちょっと湿ったアジア的な空気を感じました。やや哀愁を帯びたというか、ミステリアス&セクシーというか。光の感じも花の香りも、不思議と恋をしたくなる空気でしたね」

──今まで何度タヒチへ行きましたか?

13回です。でも本当に行ってよかった。私の中に埋まり込んでいたものがきれいに吹き抜けて、広い大きな空が開けたような感じになりました。解放されましたね。それにまだまだ魅力の尽きない場所だなあ、と思いますし」

──特に印象的な場所はありましたか?

「ここ2回ほどは生徒さんたち(※彼女が主宰するサンディーズ・フラ・スタジオ)とヘイヴァ・イ・タヒチを観るために訪れたのですが、ボラボラやマルケサスなどの離島が本当に素晴らしかったです。ボラボラの海の色といったら、何これ? バスクリン入れたの? 絵具を流したの? と勘違いするような鮮やかさで」

(横にいたマネージャーの小田島さん) 「生徒さんたちの中には、あまりに締麗な海の色を見て美昧しいだろうと思ったのか、いきなり飲み始めたりした人もいて。でも実はものすごいしょっぱいんですが…(笑)」

「海を見て感激して泣いちゃった女の子もいましたね。確かに、私も心臓が震えるのを感じました。船着き場でエアポートパスを降りた途端に広がる美しい世界にショックを受けてしまって。海や空の色で癒されたいなら、ボラボラ、ライアテア、モーレアあたりがいいと思います」

──サンディーさんから見たタヒチ人の印象は?

「さほど深くつき合ったわけではないのですが、オシャレでエレガン卜で開放的で優しくて、あと独特のフランスの影響を感じました。そしてとにかく、女の子たちが締麗で、男たちが美形! 細いし、スタイルも良いし、美しきDNA の持ち主というか。それとハワイ人と違って、あまり太っていなかった(笑)。」

──今後じっくり滞在しながら、してみたいことは?

「ハンモックに揺られながらボラボラの海をぼーっと眺めていたいですね。バスクリン色の海に溶け込んだりしながら。夜になると、どこからともなくタヒチアン・バンジョーの音が聴こえて太鼓の音がしてきて、島唄のような旋律を歌うお婆ちゃんの声が聞こえてくる。年に一度、1 ヶ月くらい時間を作って充電できたら幸せですよね」

──これまで世界中を旅したサンディーさんにとっても、タヒチは特別な場所なんですね。

「子供の頃から憧れていた場所に来ている、という実感がありますから。音楽を聴くだけで涙が出てくることもあるし、目の前で何百人もの踊り手がダンスすると、もう、“素晴らしき快感の金縛り”に襲われてしまいます(笑)」

 
強烈なエナジーを秘めた、タヒチアン・ミュージック

──先ほど話に出た芸術祭“ヘイヴァ・イ・タヒチ”はどのようなお祭りなのですか?

「毎年7月に行われている、タヒチの文化・芸能の祭典。毎日色々なイベン卜が、例えばカヌー大会やコブラの皮剥ぎ大会なんかもあるようで、ポリネシア中から人が集まって競技に参加していました。その締めくくりが音楽と踊りなんですよ」

一ーその芸術祭の時期にサンディーさんもパフォーマンスされたのですか?

「そうですね、2006年にタヒチヘ行ったときに。タヒチの有名なグループ“OTAHITI E”等が普段、ショーをしているホテルでパフォーマンスしました。地元の人も温かく迎えてくれましたし、とてもリラックスして踊れました。ハワイで私が所属するグループのダンサーたちも来ていて、20人ほどで一緒に踊って。とても面白い体験でしたよ」

──へイヴァ・イ・タヒチはタヒチ最大の、また世界的に有名なお祭りですよね?

「そうですね、本当に大好きなお祭りです。私にとっての“世界三大祭”のひとつでもありますし。200人ものダンサーが50人ほどのミュージシャンと一緒に目の前で踊って、そんなグループが次々登場するのですから、すごいゴージャスですよね。竜宮城を思わせるような踊りの中には、ポリネシアの歴史やストーリーも含まれていて、とても興昧深くて。これはタヒチでしか体験できないです」

──きっとものすごい迫力でしょうね。ちなみにサンディーさんにとっての“世界三大祭”、残りのふたつは、何ですか?

「ニュー・オーリンズのマルディグラと、リオ・デ・ジャネイロのカーニバルですね。すべて音楽と踊りのカーニバル。ミュージシャンとして体験できるお祭りなので、得るものが多いんですね」

──サンディーさんがずっと憧れていたタヒチ音楽とは、どのようなものなのですか?

「私にとっては、真ん中から光が放射線状にぶわーっと吹き出るような感覚があり、大地の正直なハートビートというか、地球のエナジーを感じる音楽だと思っています。ときめきに近いのかもしれない。そう、タヒチ音楽は“地球のときめき”なのかもしれませんね。あれだけ美しく、きらびやかな音楽や踊りが生まれるということは、その根元にはきっと、大きなエナジーがあるのでしょう」

──それはどのようなエナジーだと、思いますか?

「ものすごくポジティブなもの。どんな状況にあっても音楽を奏でて踊りを踊れば浄化される。だから足を踏みならせば、踏みならすほど、太鼓を叩けば叩くほど、自分が大地と天をつなげるような存在になれる、そういうエナジーですね。両手を上に挙げると天に触れているようで、足の下には地があって、“じゃあ踊ろうか?” みたいな、そういうノりも感じたり(笑)」

──なんか最高ですね、タヒチって。そんな想いが凝縮された『Sandii ‘s Tahitian Passions』に続く第2弾アルバムを制作するんですよね?

「そう、春くらいにリリースできればと思っています。前作は昨年ハワイから日本へ航海したホクレア号に捧げたものだったのですが、今回はもっとタヒチアン・ポップスや卜ラディショナルを中心に、それを私なりの解釈で作ってみました。私は現地の人間ではないし、そこで生活している訳でもないから、自分自身のフィルターを通してタヒチ音楽を生み出すことしか出来ない。だから旅人の感覚で、その素晴しさを紹介しています。“歌う兼高かおる、タヒチの旅(続く)”という感じですね(笑)」

 
ポジティブな思考を得るための、旅という行為

──サンディーさんはここ数年、ハワイやタヒチを含めた“太平洋= Pacific Ocean” をテーマに音楽活動を続けていますよね? 何故このエリアを強く意識するのですか?

「Pacific Oceanって、“究極のピース”と名づけられた場所ですよね。そんなネーミングも大好きだし、そして実際に日本もその一部であるわけだし。私たちはアトランティスというよりも、ム一大陸の子孫だと思っています。子供の頃から太平洋を中心とした地図を見て育ったから、ここが私たちのMother Land なんだな、と強く感じるんです。だから私にとっては“ I’m from Pacific” という方がしっくりくるような気がしていて。生まれた土地の文化はそれぞれが大切に自覚するべきだと思うけれど、国境は必要ないと思うし。面倒くさいですよね、パスポートを持って入国検査とか荷物のピックアップとか。あれがなかったら、ずっと旅人でいたいです」

──サンディーさんが‘旅を繰り返していたのは、いつ頃ですか?

「80年代、ワールド‘ツアーへ出ていた時期ですね。ほとんどスーツケースひとつで暮らしていました」

──旅の中で特に印象に残った場所はありますか?

「そうですね、バリ島はとてもスペシャルな場所だったし、ポリネシア全体からは、とてもゆったりとした豊さを感じました。だって、アイスランドでバケーションするよりも、短パンで過ごせた方がいいじゃないですか」

──じゃあ、基本的に南が好きなんですね? それに何より太陽が重要ですね。

「そう、太陽はとても大切です。タヒチの太陽はポリネシアにしてはちょっと湿り気があるけど、夕日がとても綺麗でした。私はいつも裸足でいたいし、布一枚で暮らせるのが理想です。汚れても洗えば泳いでいる聞に乾いてしまうのって、いいですよね。そんなシンプルなライフスタイルに、すごく憧れますから」

──それは多くの人が思い描く理想というか、楽園そのものでしょうね。

「たくさんの人に、美しい場所を旅して感じとってほしいですね。やはり“楽園”と名のつくところへは、行けるならなるべく早く行った方がいいと思います。楽園の持つスペシャルな空気って、放っておくと皆が襲いかかつて、やがて薄れていくものですよね。ただ一度体験した人ならば“それを守らなきゃ”という気持ちになると思うから、逆にそれを昧わって何かに気づいて、ビューティを守る側になってほしい。そんな気持ちで旅から帰ってくる人が増えれば、地球も喜びますよね」

──旅をすると、ふだんは見落としがちな、とても大切なことに気づく瞬間がありますしね。

「人聞はきれいなところに身を置くと、必ず思考が変化すると思うんです。その瞬間に変わらなくても、自分の中に新しい何かが宿って、やがて育つ。人生のあり方や人間のこと、現実のこと。自分がいつも立っている場所を確認するため、そこを一度離れてみると、些細なことばかり気にしていたな、と気づきません? 私は旅に出ると、限りのある地球、宇宙、命の大切さを感じて、そうしたものをポジティブに捉え、行動していこうという原点に立ち返ることができる。きれいな場所があって、素晴らしい人たちが生活していて、最高の音楽を与えてくれて、色々な美しい感覚を授かって、“じゃあ自分には何が出来るんだろう? “って考えて。“世の中を良くしよう!”と決心しても、どうしていいのか考えつかないけれど、行動する以前に、ポジティブに、肯定的に“思う”ことから始める。それが本当は一番の近道で、最大の効果があるはず。そんな勇気を自分に与えてくれるのが、旅なんだな、と」

──旅によって、物事をとても肯定的に捉えられるようになるんですね。

「きっと旅を重ねると、自然と賢くなってゆくんですよ。最終的に“ここはいい星だ”という答えを出せたなら、その人は本当に素晴らしい旅人なのでしょうね」

 
SANDII (サンディー)
シンガ、クムフラ。10代をおもにハワイで過ごし、本格的にフラを学ぶ。2001年「Sandii’s Hula Studio」を設立。2005年には、クムフラの称号を受け継ぎ、アロハとピースの伝道師として活動と進化を続けている。www.sandii.info

『Sandii’s Tahitian Passions』(2007年4月25日発売)
『日本~ハワイ~タヒチ』をコンセプトに、今までに発表された数々のタヒチアン・サウンドに加え、新曲も収録。2007年、日本へ来航した「Hokulea号」とともに、タヒチの風を送るタヒチアン・ベストアルバム。

 
このインタビューは『ペーパースカイ』No.24 (2008年)に掲載されたものです。
インタビュー & 構成:Numa
Interview & Text: Numa

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