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想いは時を超越する|縄文時代早期~晩期 北海道函館市

函館市には、87カ所もの縄文遺跡がある。それほどまでにここが縄文人の人気エリアであったのは、目の前は海、すぐ背後は山、その山から流れる何十もの小川があるという恵まれた環境によるものだろう。現代の感覚ならば大きな街がつくり […]

04/02/2020

函館市には、87カ所もの縄文遺跡がある。それほどまでにここが縄文人の人気エリアであったのは、目の前は海、すぐ背後は山、その山から流れる何十もの小川があるという恵まれた環境によるものだろう。現代の感覚ならば大きな街がつくりづらい住みにくい地形ともいえようが、自然と共生する営みにとってはこれ以上ないほどの場所だったことは想像に難くない。
太平洋に面した丘の上にある大船遺跡では、100棟を超える竪穴住居が見つかっている。なかには2.4mもの深さにまで掘り込まれた大型建物もあり、金属のない時代にこれほどの作業を可能にするには定住と共同作業、社会的ルールが必須条件だっただろう。そこから3kmほど海岸沿いを南下すると、縄文時代早期前半から6,000年間にわたって人々が定住していた垣ノ島遺跡がある。ここには大規模な盛土遺構があり、死んだ子どもの形見にしたと推測される足形付土版や世界最古の漆製品(植物繊維に漆を塗った糸で編んだもの)などが出土している。
大船遺跡と垣ノ島遺跡といういずれも大規模な史跡とセットで必ず訪れたいのが、函館市縄文文化交流センターだ。道内唯一の国宝である中空土偶をはじめとする市の出土品が結集している。上記の漆や土版、土偶など、並べられた遺物はどれも当時の集団意識や精神性を反映しているには違いない。けれどそれ以前に、このものひとつひとつに込められた縄文時代に生きたひとりの人間の心のありようにふれ、ひとりの人間として身体が直接、感応してしまう。見も知らぬ人間同士の時代を超えた交信とでもいおうか、それは生々しく、なかなか衝撃的な体験である。
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