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オレゴンの景勝地と7つの自転車

日本の本州と四国を合わせた面積とほぼ同じ広さを誇るオレゴン州。オレゴン州というと荒々しい海岸線や手つかずの原生林、雪深い山々が思い浮かぶ。実際、総面積の46%を森林が占めており、ここを訪れる人は誰もがその自然美に圧倒され […]

12/04/2019

日本の本州と四国を合わせた面積とほぼ同じ広さを誇るオレゴン州。オレゴン州というと荒々しい海岸線や手つかずの原生林、雪深い山々が思い浮かぶ。実際、総面積の46%を森林が占めており、ここを訪れる人は誰もがその自然美に圧倒されるはずだ。
四季折々の表情を見せてくれるオレゴン州では、州を代表する景勝地が“7ワンダー”と名づけられていることをご存知だろうか。豊かな水量をたたえたいくつもの滝と玄武岩の絶壁が織りなす、全長128km、水深約1,300mの大河、コロンビアリバーの渓谷美。魔法のようなブルーに輝く、アメリカで最も深い湖のクレーターレイク。州のシンボルでもある標高3,424mのマウントフッド、5000万年にわたる気候変動がもたらした大自然のパレット、ペインテッドヒルズ。世界中のロッククライマーを惹きつけるクライミングの聖地でありパシフィック・クレスト・トレイルの象徴、スミスロック。「リトル・スイス」こと、ワローワ山地、そして約583kmにわたって岩場の海岸線が続くオレゴンコーストの7箇所だ。
ここに“7ワンダー”の各スポットにちなんで特別に製作された7台のバイクがある。「7 BIKES FOR 7 WONDERS」というプロジェクトから生まれたもので、いずれも州内を拠点に活動する異なるフレームビルダーが手がけている。デザインやカラーがそれぞれの風景にインスパイアされているだけでなく、各々のスポットを最もエキサイティングにライドできるよう、機能に落とし込んでいるのが特徴で、オレゴンのライディングの多様性を表現しているという点で非常におもしろい。たとえば、地形が複雑に入り組んでいるコロンビアリバー渓谷には、舗装路とグラベル、どちらをも速く楽しくライドできる、ベン・ファーバー(「Argonaut Cycles」)によるロードバイク。ポートランダーにとって最高に刺激的なフィールド、マウントフッドでは、サスペンションフォークとドロッパーシートポストを搭載したシングルスピードのマウンテンバイクを。フリーライドからダウンヒルまで広大な山のすべてを遊び尽くせるよう、「Wolfhound Cycles」が製作したものだ。大学で地質学を学んだというクリストファー・イグルハート(「Igleheart Custom Frames and Forks」)が手がけたのは、ペインテッドヒルズの走行に適した女性用ツーリングバイクだ。この地を形成した地質学的なプロセスに触発されたというこのバイクは、スチールフレームにディスクブレーキを搭載。トップチューブの下にはフライロッド用のケースまで備わっており、数日のバイクパッキングにも適している。クレーターレイクのような澄んだブルーにペイントされたチタン製ロードバイクは、クレーターレイクを一周するリム・ドライブで、自分だけの風景や思い出を見つけられるよう設計されたもの。ビルダーのマイク・デサルヴォがこのバイクで腐心したのは、速く駆け抜けることではなくリム・ドライブでのライディングで体験できる可能性のすべてを追い求めることだった。このように、それぞれの自転車にまつわる背景を探ってみれば、行ったことのない場所の風景や肌を撫でる風、路面の感触までもリアルに想像できそうな「7 BIKES FOR 7 WONDERS」。それぞれのスポットが職人気質のビルダーたちにどんなインスピレーションを授けたのか、その製作プロセスも見逃せない。
このプロジェクトに参加したビルダーのクリストファーは、「オレゴンで自転車に乗るということは、他の州のそれとはまったく意味合いが異なっている」と語っている。自転車に乗ること、それはオレゴンの自然の多様性を身体で感じること。すべての自転車、すべてのトレイルにそれぞれの哲学があるのだ、と。
さて、オレゴンのトレイルを走る自転車の上で、あなたはどんな発見をするだろうか。
» PAPERSKY #61 OREGON | Cycling issue