会わずに済む今の時代だからこその文化｜Sweden Fika Guide 6

ストックホルム郊外の住宅地に、ポツンと赤い屋根のいいたたずまいをしたカフェがある。ジェニファー・リンドステッドが、夫とともにこの「A.B.Café.」を立ち上げたのは2年前。もともと同じ街にある大学で建築を学んでいた彼女が、卒業してすぐに建築事務所として借りた場所だった。
「結婚して子供が生まれると、建築だけではなく食べ物や環境についても深く考えるようになった。アコースティックで居心地のいい空間、フレッシュなコーヒーと食べ物、そして音楽。学生時代からずっと、この街には行きたいと思うようなカフェがなかったし、いい仕事をするにもいいフィーカが必要だと信じていたから、そんな場所がつくりたいと思った」とジェニファー。まずはコーヒーを学ぼうと、評判のロースター、ジョアンナ・アルムのコーヒーテイスティングに参加したことをきっかけに、ふたりは出会い意気投合。「私が何より大切に考えているのはリレーションシップ。毎年コーヒー農園に足を運んで直にやり取りしているからこそ、卸すのは同じ価値観を共有できるカフェだけに厳選している。ジェニファーと話して、彼女とならパートナーが組めると思ったの」と、A.B.Café.のコーヒーのディレクションをジョアンナが手がけることに。そして、逆にジョアンナの店「Drop Coffee」の内装をジェニファーが手がけることで、関係性が築かれていった。
自分たちの仕事はフィーカと密接にあるとふたりは言う。「実際に会わなくてもいろんなことが済んでしまうこんな時代だからこそ、皆がよりフィーカを大切に思うようになった。郊外のこんな離れた場所でも、たくさんの人がいい時間を過ごそうとここへ来るのだから」（ジョアンナ）。
　
ジョアンナ・アルム／Joanna Alm
Drop Coffeeのオーナー、ディレクター、ロースター、生豆のバイヤー。The Roasters Guildの役員も務める。2014年、スウェーデンのコーヒーロースティング大会で3位に入賞し、2015年には世界大会で2位、2016年は4位を獲得している。
ジェニファー・リンドステッド／Jennifer Lindstedt
A.B.Café.のオーナーで建築家。品質の高いコーヒーと食べ物、居心地の良い空間を求めて、ストックホルム郊外のテレフォンプラン地区に、人々が足を運ぶきっかけとなるような店作りを目指している。
» PAPERSKY no.55 SWEDEN | FIKA Issue
A.B.Café.
Valborgsmässovägen 34, 126 37 Hägersten
TEL: 08 18 31 38
Drop Coffee
Wollmar Yxkullsgatan 10, 118 50 Stockholm
TEL: 08 410 233 63
www.dropcoffee.com