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ノルウェー|Detour わざわざ訪れたい寄り道旅

北欧の国々は、すぐれた名作チェアやプロダクトをはじめ、著名な建築家やデザイナーを数多く排出している。デンマーク、スウェーデン、フィンランド、そしてノルウェー。北欧=“デザインの国々”というイメージはたしかに強く、“スカン […]

10/19/2017

北欧の国々は、すぐれた名作チェアやプロダクトをはじめ、著名な建築家やデザイナーを数多く排出している。デンマーク、スウェーデン、フィンランド、そしてノルウェー。北欧=“デザインの国々”というイメージはたしかに強く、“スカンジナビアンデザイン”として日本での関心も非常に高い。さて、ノルウェーといえば? 初めてこの国を訪れたルーカス一行を含め、読者の多くが思い描くのはきっと、フィヨルド、サーモン、北海油田にムンク……。ところが、この旅を通じてもっとも強く印象に残ったのが、すぐれたデザインの国である、ということだった。
「Detour」─まわり道、寄り道と呼ばれるこのプロジェクトは、国内の18のツーリストロードに、休憩所や展望台、トイレなどを整備するというもの。ノルウェーは、1960年代に北海で油田が発見され、経済的に豊かになった。ゆえにデザイン分野での出遅れ、観光に注力してこなかったことを取り戻すべく、国をあげて取り組むことになったのが、このプロジェクトだ。フィヨルドの景観に合う、質の高い建築でもランドスケープでもある現代建築群。わくわくするような空間や建造物が、絶景のなかに点在する。「崖のすぐ目前まで」「なるべく滝のそばへ」「自然の傾斜のまま歩く」など、より風景に近づくことで、その一部になるような錯覚になる。日本であれば危険という理由で許されない建造物も、数多く存在している。とてつもなく大きなプロジェクトのそれぞれは、ほとんどが大げさではなく、自然に、そっと寄り添うようにある。「よりたくさんの人に美しい風景を楽しんでもらう」という共通認識をもった魅力的なプロジェクトに、利用者はもとより、国内外の建築・デザイン関係者からも大きな関心が寄せられている。
雄大なフィヨルドや、迫力ある滝、力強い海岸線が織りなすノルウェーらしいランドスケープ。その一部であるDetourは、ドライブの途中、わざわざ寄り道したくなるものばかり。プロジェクトマネージャーのアシスタントを務めるパー・リズラー氏は、こう話す。
「トイレや休憩所、モニュメンタルなもののほかに、バードウォッチング小屋や釣り場、散歩やウォーキングを楽しめる小径などもある。それぞれが目的をもってその場所にあるので、その意味は、訪れて初めて、その人が自分で発見するもの。だから“実際に利用できる”ことが大切なんだ。そのまんまの自然風景に、できるだけ近づくためのしかけ。それは、誰にでも開かれたものでなくてはならない」
南北に長い国土のほとんどが、山間部や海岸部、いわゆる地方都市にあたる。Detourはときに、そこで暮らす人の経済活動を手助けすることもある。そこに暮らす人たちが、施設の管理を担う例も少なくなく、長く大切に使われる、持続可能なランドスケープとしての役割だけにとどまらないのだ。
文化省により設立されたノシュクフォルムと、ノルウェー道路公団との共同プロジェクトDetour。1994年より始動したプロジェクトは今日、多くの旅行者に利用され、住む人にとっては憩いの場にもなっている。そして2020年までに、その数約350〜400に増える構想なのだという。そのままの自然ではなく、そこに“人”がいることで息づく場所。国内外の若い建築家やデザイナーたちによって、新しい街の風景が描かれていく。すぐれたデザインの国ノルウェーの、ダイナミックながら自然との調和をもっとも大切にした、どこか控えめなこの挑戦は、優雅で、刺激に満ちている。
National Tourist Routes in Norway
www.nasjonaleturistveger.no
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