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Traveling Clothes | BLACK | パルクールトレーサー 鈴木淳

本号よりスタートした、スウェーデンのアウトドアブランド「HOUDINI」とのコラボレーション企画「TRAVELING CLOTHES 」。毎号、アウトドアやストリートスポーツ等、アクティブな動きをともなうスポーツに関わる […]

05/09/2017

本号よりスタートした、スウェーデンのアウトドアブランド「HOUDINI」とのコラボレーション企画「TRAVELING CLOTHES 」。毎号、アウトドアやストリートスポーツ等、アクティブな動きをともなうスポーツに関わる方々に登場いただき、本誌では旅の荷物を、ウェブサイトではインタビューを掲載します。第1回目のゲストは、パルクールトレーサーの鈴木淳さんです。
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パルクールとは、90年代にフランスでダヴィッド・ベルとその仲間たちによって創始された移動術。近年では様々なアクション映画などにもその独特な動きが取り入れられ、見聞きすることも多くなった。だが、その実像を理解している人はほんの一握りなのではないだろうか。一見、超人的にすら見える身体能力を身につけ、危険を顧みず都市を駆け抜けるパルクールのトレーサーたち。そんな彼らの実像に迫りたくて、僕たちは日本を代表するパルクールのパフォーマンス集団、URBAN UNIONの鈴木淳さんにコンタクトを図った。
 
ーまず、すごくざっくりした質問で恐縮なんですけど、パルクールってどんなものなんでしょうか?
基本的にはA地点からB地点まで、そこがどんな地形でもどんな障害物があっても、いかに速く移動できるかを追求する移動術です。でも、実際はそこにスケボーのトリックみたいな感覚で宙返りを加えたりして、魅せる方向でやっている人が多いですね。
 
ー歴史はどのくらいなんですか?
創始者のダヴィッド・ベルも44歳なんで、歴史はまだ浅いです。彼の元軍人の消防士の父親が、障害物コースを使うトレーニング方法を格闘技や器械体操をやっていた息子のダヴィッド・ベルに教えて、そこから発展したものだと聞いてます。
 
ーパルクールが短期間でここまで世界的に広まったのはどうしてなんでしょうか?
やっぱり映画の影響は大きいと思います。リュック・ベッソンが作った『YAMAKASHI』(2001年)という映画がヒットして、日本のパルクール第一世代もその映画に影響を受けた人たちですね。その後もパルクールをテーマにしたりアクションを取り入れた映画がどんどん作られているんで、そういう映画が公開されるとやりたいって言ってくる子が増えます。あと、純粋にはパルクールとは言えないかもしれないけど、レッドブルが主催している〈Art of Motion〉という大会があって、その影響も大きいですね。
 
ー〈Art of Motion〉はどんな大会なんですか?
障害物競争的にタイムを競うわけではなくて、技に対しての芸術点で争われる大会です。ただ、「パルクールは人と競うものではない」と言う人も多いんです。「あくまで移動術であり、トレーニングのなかで自分とどう向き合うか」みたいな。だからパルクールを語るときって精神性が強調されることが多いんですけど、僕個人はあまりそういうのは好きじゃなくて(笑)。
 
ー「パルクールで自分と向き合う」とは?
対戦相手がいるわけじゃないんで、何をやるにも自分次第なんですね。結果自分を見つめることになる。やっぱりパルクールに恐怖心はつきもので、そこで自分とぶつかる。能力的にはできる動きや跳躍も、恐怖心で発揮できないことがよくあるので、いまある身体能力を引き出すために、メンタル面がすごく重要になってくる。
 
ー鈴木さんもきっかけは『YAMAKASHI』だったんですか?
そうです。北海道の大学に通っているときに見たんですけど、その後就職で上京したときに東京にパルクールのチームがあることを知って、練習会に参加させてもらったんです。僕が所属しているURBAN UNIONの連中もそこにいたやつが多いですね。
 
ー当時はそれが東京で唯一の練習会だったんですか?
当時はそうでしたね。そこで主催している人たちは体育館行って練習したりもしてるし、時間あれば練習会じゃない日も集まって練習してるっていうのを聞いて、そこに混ぜてもらえるようになって、そこからですね。
 
ー練習会ってどんな雰囲気なんですか?
練習会だと初心者の子にも教えるので、普通にウォーミングアップから始めて、まず柵を飛び越える動作と着地の動作を練習させるんです。何事も着地が上手くできないとそこで怪我するんで。でも、最初はずっと着地なんで、つまんないかも(笑)。
 
ー練習以外の活動もあるんですか?
練習が実践ですね。練習すること自体が遊びでもあるんで。
 
ースケートボードパークでみんなで集まってやってるのと同じですね。スケボーやると花壇とか見ても「ここであの技できそうだな」とか思ったり、街を見る目線が変わってきますよね。そういう感覚ってパルクールにもありますか?
僕らも「スケボーの人たちもこんな感じだろうな」ってよく話してます(笑)。歩いてて面白そうなとこあったら立ち止まってそこで練習始めたりするんで、目的地になかなか着かない(笑)。
 
ー移動術なのに(笑)。やっぱり子供の頃、木に登ったり、階段の上から飛び降りたりの延長という感覚なんでしょうか?
最初の練習会で感じたのがまさにその感覚で、小さい頃に感じた原始的なワクワク感を感じたのはすごく覚えてます。
 
ーやっぱり木登りが好きな子だったんですか?
いや、家で絵ばっか描いてる暗い子でした(笑)。
 
ーそれは意外ですね。
自分が宙返りできるようになるとは思ってなかったですから。やっぱりみんな怪我はしたくないんで、「これくらいならできる」っていう限界線を能力よりかなり安全なラインに設定してるんですよ。そこから本当の限界までの距離が結構あるんです。外の練習でも無意識の恐怖心で能力が抑えられちゃうんで、体育館とか安全な環境を用意すると自分でもびっくりするような距離を飛べたりする。若い頃はみんなそこを根性で突破しようとしていて逆に危なかった。恐怖心を乗り越えるとか言うとカッコいいですけど、能力が伴っていないとただの無謀行為なんで、そこのバランスは難しいです。
 
ーパルクールのアクションって一般人からすると超人技にすら見えるんですけど、そういう力を手に入れてパースペクティブが変わった部分はありますか?
オリンピックに出るような人って昔は人種が違うくらいに思っていたんですけど、基本は同じ人間なんだと思えるようになりました。もちろん、そこまで行くのにはセンスとか努力とかいろんな状況が重なるとは思うんですけど、大抵のことは練習していればいつかはできるようになるんだろうなって。
 
ー僕らはいま鈴木さんに対して人種が違うと思ってますけど(笑)。
それがやってみると意外とできるようになるんですよ。それまで限界だと思っていたものが、自分が勝手に作っていたものだとわかるというか。限界って、自分で考えているよりもっとずっと先にあるんです。でも、それを「自分を突き詰める」とか言うのは、あんまり好きじゃないですけど。自分にとってパルクールはあくまで「遊び」なんで。
 
ーでも、遊びだとしたら怖いばっかりで楽しくなかったらやらないですよね。鈴木さんはパルクールのどこに楽しさを感じているんですか?
根本的に自由に動きたい、イメージ通りに動きたいっていう欲求があって、それができたときの快感なり達成感なのかな?
 
ーそれって続けるほど増していますか?
そうですね。できることが増えることによって、調子が良いとテンション上がったサルが飛び跳ねているみたいな感覚になる(笑)。
 
ー子供の頃木登りしていた感覚が、続けているうちにさらに原初に辿って、サルの感覚になるんだ(笑)。
だから一時期「ギボン」って手長ザルの動画を仲間内でずっと見てました。その動きを取り入れられないかと(笑)。でも、それもさっきのオリンピック選手の話と同じで、自分たちと地続きだと思えるようになってんです。同じ動物なんだなって。
 
ーそこの垣根が取り払われるって凄いな。さっき「パルクールはあくまで遊び」って言われましたけど、例えばテーマパークに行くのとパルクールやるのって、同じ「遊び」とはいえ全然違いますよね?
そうですね。ひとつ思うのは、パルクールは仲間とか共有できる連中がいるから楽しいっていうのは絶対にあって、だから自己主張というか、自己表現ではあると思います。その流れで、実はいま山の岩場とかでパルクールできる場所を探しているんです。街中とは違う環境でやることで動きも変わってくるはずなんで。動画撮るのも好きなんで、そういう場所で撮ったら面白そうだなって。
 
ーいっそう猿に近づいていきそうですね(笑)。
 
(プロフィール)
鈴木淳 | Atsushi Suzuki
少年時代にバレーボール、学生時代には総合格闘技に触れ、大学卒業後にパルクールと出会い、現在は日本を代表するパルクール・パフォーマー集団URBAN UNION所属。一方で少年時代から絵を描くことが好きで、本業としてはイラストレーター/グラフィックデザイナーとして活動中。
(商品クレジット)
Fast Track Tee ¥ 8,640 color: Rock Black
Trail Shorts  ¥ 12,960 color: True Black
Airborn Hat ¥ 5,400  color: Bleached Black
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FULLMARKS MOUNTAIN CLUB 06 by FULLMARKS
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