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Day6 伊根〜京都 | 舟屋の窓辺に腰かけ、6日間の自転車旅を想う

伊根浦には小さな入江を取り囲むように舟屋と呼ばれる家屋がびっしりと立ち並び、独特の景観をつくり出している。海に面した舟屋の1階は舟のガレージで、道路が整備されていなかった時代、住民たちはどこへ行くにも舟を使っていたという […]

02/13/2017

伊根浦には小さな入江を取り囲むように舟屋と呼ばれる家屋がびっしりと立ち並び、独特の景観をつくり出している。海に面した舟屋の1階は舟のガレージで、道路が整備されていなかった時代、住民たちはどこへ行くにも舟を使っていたという。現在では多くの舟屋が旅館として使われており、旅の最後の夜、僕たちもそこに泊まった。
夕方、海に面した2階の窓からかもめの飛び交う舟屋群を眺めながら、千代田さんとつくづく日本にもまだ知らない景色があるものだと話し合い、来世はかもめになりたいという意見で一致した。夜は魚料理を堪能して旅の思い出を語らい、翌日、船と在来線、新幹線を乗り継ぐ、長い長い家路へと着いた。
今回の旅で、僕たちは6日間も京都にいた。でも、訪れた京都名所らしい場所といえば、この伊根の舟屋群と天橋立くらいで、観光旅行的な観点でいえば、まったくもったいない時間の使い方をしたかもしれない。実際、僕たちのやっていたことといったら、朝から晩までペダルを漕いでいただけだ。アスファルトの路面はずいぶん見た気がするけど、金閣寺も清水寺も東寺も見ていない。ただ、かなりの自信をもって言えることは、死に物狂いでペダルを漕いだ経験は、金閣寺や清水寺を見るよりも僕らの胸に深く刻まれるだろうということだ。
もちろん、こんな旅は絶対にしたくないという人もいるだろう。けれど幸か不幸か興味をもってしまった人は、今すぐ自転車に荷物を積んで、走り出せばいい。道はどこまでも続いている。行き先はどこだっていい。ペダルを漕ぎ出せば、きっと見たことのないものに出会えるだろう。
» PAPERSKY #52 KYOTO | BICYCLE Issue