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Day5 琴引浜〜伊根 | 職人文化と絶景続きの海岸線。丹後の宝にふれた日

弥栄町で染色工房を営む大下倉和彦さんを訪ねた。丹後はかつてちりめん生地の一大産地として栄えたが、時代の変化とともに衰退、大下倉さんのお父さんも工場を営んでいたが廃業してしまったという。わずかに残された工場跡を工房に、現在 […]

02/06/2017

弥栄町で染色工房を営む大下倉和彦さんを訪ねた。丹後はかつてちりめん生地の一大産地として栄えたが、時代の変化とともに衰退、大下倉さんのお父さんも工場を営んでいたが廃業してしまったという。わずかに残された工場跡を工房に、現在、大下倉さんは一点一点手染めを施した製品や作品の制作を行っている。「本当は親父のつくった生地を染めたかった」という大下倉さん。かつて多くの職人でにぎわったであろう工房で、たったひとり黙々と染色台に向かう姿には、丹後のものづくりを継承していく静かな意志を感じた。
大下倉さんのお母さんの手料理をいただき、一路この旅の終着点、伊根を目指す。例によって道はアップダウンを繰り返し、いくつもの峠や岬を越えた。「カリフォルニアの海を思い出すなぁ」とルーカス。確かにこの日本海の地形は、どこか外国の海岸線みたいだ。午後になり、ふと地図アプリを見ると伊根まであと4.5kmを指していた。まだ旅を終わらせたくない。僕たちは迷わず遠まわりでアップダウンの激しい海沿いの道を行くことにした。
すぐに予想どおりの急登が始まったけれど、これが最後の峠だと思うと感慨もひとしおだった。あんな峠、こんな峠、いろんな峠があったなあ……。息を切らせて登りきると、なんと前方にはまだいくつもの峠や岬が連なっているのが見えた。「峠のアンコールだね!」と千代田さん。悪態をつきながら、また死に物狂いでペダルを漕ぐ。
ついに伊根の漁港が見えたときには、嬉しいような、寂しいような、なんとも言えない気分になった。午後の光を浴びてきらめく海へと向かい、僕たちは自転車を走らせた。
» PAPERSKY #52 KYOTO | BICYCLE Issue