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近くなく遠くない、英雄への道

97年にイタリアで始まった「L’Eroica(エロイカ)」。この“英雄”と呼ばれる催しが今年6月「L’Eroica Britannia」としてイギリスで初開催され、ひょんなことから私も参加することになった。見渡すかぎり丘 […]

11/06/2014

97年にイタリアで始まった「L’Eroica(エロイカ)」。この“英雄”と呼ばれる催しが今年6月「L’Eroica Britannia」としてイギリスで初開催され、ひょんなことから私も参加することになった。見渡すかぎり丘陵が広がる美しい田園風景のなか、放牧された牛や馬、ヤギ、沿道の人、各チェックポイントでローカルフードを準備して待っている人らに見守られ、約100kmを走りきった。このときの感動と達成感は「もう、こんなことしたくない!」という直後の正直な弱音を含め、おそらくこのところ感じたことがない価値あるものだったと確信している。
エロイカ創設者ジャンカルロ氏の願いは、スポーツのすばらしさを伝えること。そして、イタリアのトスカーナ地方の田園風景に残る白い石灰質の未舗装路をなんとかして未来へ残したいというものだった。それを20年近く続く自転車の催しへつなげたことはもちろん、心ゆさぶるのは“87年以前に製造されたヴィンテージ自転車で走る”という規定だ。過酷な道を果敢に走ってきた先人の英雄たちに敬意を表するにとどまらない遊び心。自転車愛好家でなくても、苦労して走るなかで過去の栄光や体験へ思いを馳せることができる。ロマンティックな冒険旅なのだ。
とにかく、ヴィンテージ世代のおじいさまたちの参加が目立つ。こちらが坂道を苦戦していると「GO! Japan」と声援とウィンク。そして悠々と先を越していかれる。自らの弱さにがっくり、同時に、彼ら英雄たちへの尊敬の念がこみあげる。最新の自転車と装備をもってすれば、もっとずっと簡単な道のりだろう。そこをあえてヴィンテージスタイル(ウールジャージ、カスクや革靴など装いも含めて楽しむのがポイント!)で挑む。エロイカから学ぶことは多かった。弱音を吐いていた自分でさえ、次はどんな英雄コースを走ろうか思案しているのだから…。そういえば最近、倉庫に眠っていた自転車を引っ張りだした友人の和尚を、誘ってみるとしよう。
 
» PAPERSKY #45 Colorado | Bouldering & Hot Springs Issue (no.45)