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アルゼンチンアートの歴史を創造する新世代

現代アルゼンチンのアーティストたちのアトリエを撮影しつづけている写真家のイグナシオに現在のアートシーンについて尋ねたとき、「若い世代のなかでも特に目立っている、すごくおもしろくて才能のある奴」と紹介してくれたのが、サンテ […]

01/07/2014

現代アルゼンチンのアーティストたちのアトリエを撮影しつづけている写真家のイグナシオに現在のアートシーンについて尋ねたとき、「若い世代のなかでも特に目立っている、すごくおもしろくて才能のある奴」と紹介してくれたのが、サンティアゴ・ヴィラヌエヴァだった。国内で数々の賞を受賞し、新しいシーンを牽引する存在として注目を浴びる彼はなんと1990年生まれ、23歳の俊英だ。
その彼に会うため訪れたのは、市内にある古いマンションを転用し、アーティストのための格安のアトリエとしている施設。このアトリエで日々活動する彼は作品制作だけでなく、批評、キュレーションなどさまざまな形でアートに関わっている。そうしたボーダーレスな活動は、新世代を感じさせるものだが、彼がおもしろいのは、アルゼンチン美術の歴史を積極的に取り扱っているところだ。
「この国では政治的な経緯もあって、自国の美術史についての研究があまり進んでいないんだ。美術大学にも、国内の美術や美術批評の歴史を詳しく教えているところはあまりないし、国内作家の作品を収蔵する美術館も少ない。そうした状況を改善していきたいんだよね」。
南米美術史の博士号をもつ彼はいま、ブエノスアイレス初の現代美術館のプロジェクトにも関わっている。「最近、1970年代の独裁政権時代にあえて果物などの静物画を描きつづけることで抵抗を表明した画家ホセ・ルイス・メンギの作品をインターネットで見つけたんだ。誰も注目していないから、たった300ペソだったよ」と興奮気味に語るサンティアゴ。アルゼンチンアートのミッシング・リンクが取り戻され、新たな歴史が創造されるその転換点で活躍するのが、彼のような新世代の若者であることが、なんとも痛快ではないか。
This story originally appeared in PAPERSKY’s ARGENTINA | ART Issue (no.43)