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種差、極上の海岸トレッキングへ

青森県八戸市の北東部、太平洋に面した種差海岸。この、全長12kmほどの海岸は、岩場、砂浜、海抜0mでありながら高山植物や固有種の草花が咲き乱れる草原、天然芝生地と非常に変化に富む自然景観をかたちづくっている。それには、砂 […]

10/02/2013

青森県八戸市の北東部、太平洋に面した種差海岸。この、全長12kmほどの海岸は、岩場、砂浜、海抜0mでありながら高山植物や固有種の草花が咲き乱れる草原、天然芝生地と非常に変化に富む自然景観をかたちづくっている。それには、砂地と湿地の混ざり合う境界、海からの潮風、夏になると吹き付ける冷たい「山背」など、この地域特有のさまざまな自然環境が強く影響を与えている。その風景に多くの芸術家や文化人が影響を受け、数々の名作が生まれた。東山魁夷の「道」はその代表である。
昭和初期から国の名勝地として知られてきた種差海岸。今年5月には種差海岸を含む三陸沿岸地域が日本でもっとも新しい「三陸復興国立公園」として創設された。東日本大震災の影響で落ち込んだ観光客も年々増えてきているという。
9月22日、PAPERSKY MOUNTAIN clubでは種差海岸を歩くトレッキングイベントを行なった。同行してくれたのはこの海岸の魅力を伝えるネイチャーガイドの関下斉さん。関下さんの話に耳を傾けながら歩くおよそ8kmの道のりである。
秋晴れの青空の下、ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている蕪島からスタート。今は埋め立てられて陸続きになっており、蕪島神社が鎮座されている。ウミネコの繁殖期は終わったそうで巣は見られなかったが、シーズン中には50cm間隔で営巣しているのだそうだ。
トレッキングルートは車道から海岸沿いの山道、漁小屋の脇を通る岩場の道、草原に続く遊歩道、鳴き砂の白い砂浜、天然の芝生広場と変化に富む。大きな岩にまつわる伝承、海鳥や草花のこと、この土地の気候風土や文化風俗のこと・・・関下さんの解説を聞きながら、自分の足でゆっくり歩くと、初めて来た土地にぐっと近づいていくことができる。地元民宿のおかみさんたちが用意してくれた、この土地ならではのお昼ご飯を砂浜の東屋でいただき、松林を抜けて目的地の天然芝生地を目指した。
芝生地に到着したのは午後3時頃。およそ6時間のトレッキングだった。黙々と歩けば3時間ほどで歩けるだろう。しかし、関下さんの話を聞きながらゆっくり歩けばちょうど一日たのしめるコースだ。ほどよい疲れと知的好奇心が満たされて、参加者の顔は充実感でいっぱいだった。
最後に八戸市美術館に行き、種差海岸を写した写真展を鑑賞して終了。東京へ帰る参加者もいれば、さらに青森の旅行を続ける参加者もいて、このイベントをきっかけにそれぞれの旅をたのしむ様子が印象的だった。
おそらく、これほど変化に富んだ自然景観を歩ける海岸は他にあまりないだろう。道もよく整備されているしアップダウンもほとんどないので初心者でも歩きやすい。トレッキング初心者にぜひともおすすめしたいコースである。
関下さんは季節ごとの魅力を熱っぽく語ってくれた。とくに6月や7月は海岸の草原に草花が咲き乱れ、ウミネコが群を成して飛び交うのだという。また別の季節にやってきたい、海岸の宿に数日滞在しながら、この景色をたのしみたい。そう思わずにはいられない種差海岸トレッキングの一日だった。