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ういろうの元祖は、小田原にあり|東海道② 小田原→平塚

横浜市を横断し、平塚を過ぎて大磯に入ると、潮の香りが漂ってくる。西行法師も訪れて歌を詠んだという鴫立庵で小休止。風情に浸りたいところだが腹の虫に邪魔をされ、そそくさと腹ごしらえに。うなぎの名所、浜名湖まで待ちきれずに食べ […]

03/21/2013

横浜市を横断し、平塚を過ぎて大磯に入ると、潮の香りが漂ってくる。西行法師も訪れて歌を詠んだという鴫立庵で小休止。風情に浸りたいところだが腹の虫に邪魔をされ、そそくさと腹ごしらえに。うなぎの名所、浜名湖まで待ちきれずに食べた蒲焼きは、ルーカス日く「すごいパワーフード」で、一行は足取りも軽く小田原へ向かう。
小田原の名物といえばかまぼこが有名だが、隠れた名物がういろうだ。また、そもそもういろうとは菓子の名ではなく、薬の名なのである。約600 年前に中国から帰化し、医術に優れていた外郎家がつくる一子相伝の秘薬「ういろう」はさまざまな効能があり、足利時代から貴紳に珍重されたという。すぐ飲めるよう烏帽子のなかに忍ばせておくとそこから匂いが漂ったといい、時の天皇から「透頂香(とうちんこう)」の名を賜ったという逸話も残る。「この薬を貴族や大名に渡すとき、もてなしの意で菓子をつくってお出ししたら、その味がたちまち評判になったんです。この“外郎家の菓子”が、後に菓子のういろうと呼ばれるようになりました」。小田原城下で外郎家が営む店では、いまも2つの「ういろう」が売られ、盛況だ。歌舞伎役者の二代目市川団十郎は、咳に苦しんだ時にこの薬を飲んで全快し、その効能を行商に扮して謡う『外郎売』という演目をつくった。歴代の団十郎は、演じる前に小田原の外郎家へ挨拶に訪れるという。その『外郎売』は「胃心肺肝が健やかになり、舌も廻る」と1700 余文字にわたって早口で、まくしたてる台詞が名物で「偽物にご注意」とばかり、城のような八棟造りの店構えにも言及する。十返舎一九も『東海道中膝栗毛』で喜多さんに「おや、このうちは屋根にだいぶ凸凹のあるうちだ」と言わせた建物が、小田原名物の目印だ。
 
This story originally appeared in PAPERSKY’s Edo Tokaido Road Issue (no.36)