盆栽界の錬金術師|木村正彦|大宮盆栽 3
皇居の敷地内に「三代将軍の松」と呼ばれる500年物の盆栽がある。人間が植えて世話をしてきた世界最古の盆栽である。より正確に言えば、手入れをしてきたのは何十人という盆栽職人であり、そのなかには将軍も含まれている。盆栽は工芸作品であり、芸術作品だが、ひとりの人間が創り上げるものはない。職人たちが何世紀にもわたって力を合わせ、針金や剪定ばさみなどのシンプルな道具を駆使して五葉松を縛り、刈りこみ、手入れをしながら大自然の風景を鉢のなかに再現していく …»
大宮盆栽 2|千年の眠りから覚めて|山田香織
「盆栽がやがて私の仕事になり人生になることに、中学生のころに気がついて、大きなプレッシャーを感じていました」。山田香織は高名な盆栽園のひとつである清香園の跡取り娘だ。ひとり娘の山田は幼いころから、150年の歴史を誇る清香園の5代目となり、盆栽名人にならねばならないという運命の重みをひしひしと感じていたという。
ある秋の朝、彼女は盆栽の隣に座り、「長い伝統を受け継ぐ重圧」について語ってくれた。「自分にはそれだけの力があるだろうかって悩みました」。山田は現在、30代前半にして実力を高く評価され、日本でもっとも名の知られた女性盆栽家になっている。彼女は伝統的な盆栽の考えに新しい息吹を吹きこみ、これまでの客層とはまったく異なる日本の若い世代に盆栽の魅力を伝えている …»
文化庁「工芸技術記録映画」の特集|東京国立近代美術館 フィルムセンター
加賀蒔絵の松田権六を始め、日本の伝統工芸の優れたわざを記録した「伝統工芸記録映画」(文化庁)のこれまでの作品を、東京国立近代美術館 フィルムセンターにて見ることができます。「伝統工芸記録映画」は、重要無形文化財に指定された伝統工芸のわざを映像で記録することを目的とし、文化庁が1971年より製作に着手。以来、ほぼ1年に1本のペースで継続的に製作が行われ、これまでに42本の映画が発表されています …»
大宮盆栽 1|年老いて、病んで、衰えた植物に向きあう|田畑好信
1923年に関東大震災が東京を襲い、山の手に点在していた盆栽園のうち少数の業者が、東京の北にある大宮に集団で移住した。大宮にはきれいな水と空気、そして小さな木が育つのに最高の土があった。いまや盆栽園は10園ほどに減ってしまったが、大宮の盆栽村は現在も世界の盆栽栽培の中心である …»
擦りながら無に近づく|雨畑硯(3)
暮れゆく日のなかで黒く濃い輝きを放つ。雨畑原石でつくられた硯に少しだけ入っている墨。望月苔雲が竹炭と溶かした魚の骨を混ぜ、乾燥させて固めた特別な墨である。床の上に広げた長い紙の上を筆が走り、言葉、詩、格言などが太い線で現れる。「大好きな言葉がたくさんあります」と望月が笑う。自の前の紙の山を探し、ようやくお目当てのA3サイズほどの大きさの紙を見つけた。彼の好きな言葉を書きだしたリストである …»
石に魅入られる|雨畑硯(2)
硯は日本の書の歴史に欠かせないものである。また、日本の精神的歴史を体現する瞑想の道具でもある。「純粋で、真実に近いものを書きたいなら、心がきれいでなければなりません。硯でおもしろいのは、自分を見つめ直す道具になるところです。彫刻作品と呼んでもいいと思います」。ござの上にあぐらをかいているのは雨宮嫡太郎。雨端硯本舗の13代目職人である彼は …»
硯石の洞窟|雨畑硯(1)
雨畑は山間の小さな村だ。いたるところに野生の猿が生息している。この地は、光沢があり、硬く、水持ちのよい粘板岩の産地として知られている。この岩の歴史は古く、約700年前にこの村の洞窟から初めて切りだされて以来、日本屈指の品質を誇る硯の材料として使われてきた …»






























