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  • Photography: Norio Kidera

大都会の自然を探して、and wander的東京ハイキング

, 2020/05/05

世界のどの都市と比べても、トップレベルで緑が豊かな街、東京。and wanderのふたりと出かけるのは、街を代表するシンボルツリーを巡る約60kmのハイキング。高台にある高級住宅街から向け屋敷の面影残る文教地区、どこか昭和レトロな趣き漂う下町エリアまで、6セクションを歩いてみたら、普段はお目にかかれない、東京の素顔に出合えるかも。

晴れた日も冷たい雨の日も、山はもちろん都会でも。and wander(アンドワンダー)が提案するのは、戸外で過ごすひとときを忘れがたいものにしてくれるウエアやギアだ。外遊びに魅せられたデザイナーの池内啓太さんと森美穂子さんが実際にフィールドに出かけ、そこで得られたリアルな感覚をそのままプロダクトに落とし込む。いわゆるアウトドアブランドと違うのは、外遊びへの思いやこだわり、時代性、デザインと機能性とのバランスなど、つくり手のものづくりへの姿勢やフィロソフィがダイレクトに反映されている点だろうか。

そんなハイク好きのふたりと歩いた「TOKYO TREE TREK(TTT)」は、樹木を目的に、山のトレイルを歩くように東京を散策しようというものだ。都会の舗道や遊歩道をハイクする3日間約60kmの旅はふたりに何をもたらしたのだろう。

「よく知っているようで、じつは知らない東京の風景がたくさんあるんだって実感しました」と森さん。「歩くスピードで得られる情報量って、電車やクルマとは桁違い。歩きながら街を観察してみると、山を歩くのと同じくらいの発見がある」と池内さん。テーブルいっぱいに東京の地図を広げ、歩いたルートをたどって3日間の旅を振り返る。

「大通りではなくてあえて路地を選んだけれども、それが新鮮だった。同じ都内でも、エリアが変わると路地の気配が全然違う。たとえば、御殿山(品川区)と小石川(文京区)はどちらも高級住宅地で坂が多いという共通項はあるけれど、風景がまったく違うんです」(池内)

「山には登山道がついているから、私たちには行くか引き返すかのチョイスしかない。その点、自分のペースで自分の好きなようにルートを設定できる東京は自由度が高いんですね。びっしりと張り巡らされた道路や路地のどれを選ぶかで、見えるものや感じることが違うというのも都会を歩くおもしろさ。今回、東京をスルーハイクしてみて、東京の“トレイル・フィールド”としての可能性に目覚めました」(森)

各セクションでストーリーのある樹木を紹介しているが、そうした木を巡ってみると、いわゆる大木や古木は寺社や公園のなかにしか残っていないことを実感した。実際、このトレイルのリサーチ中にも、リスティングしていた新宿区弁天町の大エノキが伐採されてしまった。地域住民は「エノキの大木は弁天町のシンボル」として保存活動を行っていたが、所有者は「突発的な倒木のリスクがある」という理由で伐採に踏み切った。樹木の保存の難しさを考えさせられるエピソードだ。

「そんななか、地元住民が団結して守っているという谷中のヒマラヤスギは、都会の奇跡のように感じました。都市の緑は防災の役割も担ううえ、その土地の成り立ちや地域の歴史も教えてくれる。都市と自然をどう共生させるのか、これからのまちづくりのヒントがここにあるように思います」(森)

「じつは東京は緑豊かな街。多くの人が『東京=大都会=自然がない』と考えるけれど、パリやミラノ、ニューヨークなど欧米の大都市と比べてみたら緑の豊かさは比較にならないほど。都市のなかの緑という側面に注目してみれば、東京の遊び方も変わっていくんじゃないかな」(池内)

そんな“緑豊かな”東京にあって、他と比べて樹木が少ないのが「セクション5」周辺。関東大震災と東京大空襲で焼け野原になった一帯だ。セクション内の隅田区の横網町公園には慰霊施設が設けられ、かろうじて焼失を免れた浅草寺のイチョウも空襲で焼けた焦げ跡が生々しい。「緑が少ない」という風景の裏側に、東京の歴史の1ページを垣間見ることができる。

6つのセクションそれぞれに思い出やエピソードがあるけれど、誰かに紹介するなら、という前提で、それぞれ好みのセクションを上げてもらった。森さんが選んだのは、「昔の大名屋敷のたたずまいがそのまま残る一方で、関口台の水神社あたりは庶民の生活のにおいがリアルで、その鮮やかなコントラストがおもしろい」という、新宿区〜文京区エリアの神田川沿いを歩く「セクション3」。16世紀後半、徳川家康が江戸城に入城して江戸城下の開発が進められると、この界隈には大名屋敷や武家屋敷、護国寺のような武士とゆかりの深い寺社が置かれた。中山道が整備されると街道筋に商人が移り住み、商業も活発に。「セクション3」の風景に、そんな江戸の成り立ちやかつての東京の営みを見出したようだ。一方、池内さんのチョイスは谷根千を擁する「セクション4」。色濃く残る下町の面影は、バブル期に地上げや乱開発を危惧した地元住民が立ち上がり、住民主導で修復・保存型のまちづくりを行った結果である。ヒマラヤスギはもちろん、家々の軒先を飾る植木鉢やプランターからも住民たちの地元愛が感じられたとか。

「谷中には1泊したこともあって、東京にいながら旅人目線で歩けたこともいい思い出に。自宅に戻ると旅の気分がリセットされてしまうけれど、どこかに宿泊すると旅のモチベーションを高いまま維持できる。自宅のある東京にあえて宿をとり、旅人気分を味わうという遊び方、おすすめです」

住み慣れた東京への新たな視点や気づきを得られたという「TTT」。実際に歩く際のアドバイスは?

「なるべくものを持たず、身軽に歩くこと。山と違って必要なものは現地で調達できるから。身軽であればあるだけ、まわりを見渡す余裕ができます。もうちょっと遠まわりしようとか、どうせならあの樹木も見にいってみようとか、ルートチョイスの幅も広がるから」(池内)

「おいしいおやつやスナックにめぐり会えるのもTTTのいいところ。北品川の和菓子に麻布で見つけたひと口サイズのいなり寿司、千駄ヶ谷のチャイとサンドイッチ、春日の老舗店のいり豆……。歩きながらピンとくるお店を探してみてください。カフェに入ってもいいけれど、テイクアウトしてどこかの木の下で食べるスタイルがTTTっぽいかな」(森)

ハイクの数だけスタイルがあり、発見がある、それが歩き旅の醍醐味。さて、あなたはどんなスタイルで、どんな発見をするだろうか。

and wander アンドワンダー
2011年、コレクションブランドでキャリアを積んだ池内啓太と森美穂子がスタート。共通の趣味である登山やキャンプ、アウトドアアクティビティを快適に楽しむための機能性と、着心地のよさ、無駄のないファッション性を兼ね備えたウエアやギアで、人と自然、都市生活とアウトドアをシームレスにつないでいる。 www.andwander.com

■池内啓太さんプロフィール
1978年、神奈川県出身。イッセイ・ミヤケのデザインチームに在籍後、元同僚の森美穂子と、アウトドアブランド「and wander」を設立。2011年春夏 コレクションからスタート。

■森美穂子さんプロフィール
1978年、東京都出身。イッセイ・ミヤケのデザインチームに在籍後、元同僚の池内啓太と、アウトドアブランド「and wander」を設立。
andwander.com

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