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クレーの心に刻まれた、三角形の山ニーセン

ベルン州南部の高地帯ユングフラウ地方に「ニーセン」というちょっと不思議な山がある。なぜ不思議なのかというとピラミッドのような綺麗な三角形(三角錐)をしていて、その幾何学的な形からか、画家のクーノ・アミエや前出のホドラーら […]

04/13/2020

ベルン州南部の高地帯ユングフラウ地方に「ニーセン」というちょっと不思議な山がある。なぜ不思議なのかというとピラミッドのような綺麗な三角形(三角錐)をしていて、その幾何学的な形からか、画家のクーノ・アミエや前出のホドラーらを魅了した山なのだ。どうやら画家が「描きたくなる」山らしい。20世紀を代表する抽象画家パウル・クレーもそのひとりで、写実的な風景画はあまり残していない彼だが、ニーセンの絵にはめずらしく固有名詞でタイトルがつけられている。ベルンで育ったクレーは幼いころからこの山を見て育ったというから、インスピレーションを受けた大切な風景であったことはまちがいない。
ベルンの街は、中世の雰囲気が色濃く残る美しい旧市街が特徴で、クレーと所縁ある場所も多数ある。初めて絵を描いたレストランやオーケストラで演奏したミュージックハウス、家族で住んだ家などが現在も残っている。また、近郊には2005年に開館したパウル・クレーセンターがあり、4,000点以上の作品を収蔵する。クレーの面影が残るベルンの街では、トレイル案内を計画中なのだとか。
絵に話を戻すと、ニーセンを描いた前年に、クレーはチュニジアを旅しており、そのころから色彩に関心をもつようになった。絵画のニーセンの麓に見られるカラフルな四角形の集合は、木々や家を示している。晩年の1932年には名画『パルナッソスへ』を生み出したクレー(これはベルン美術館で常時見ることができる)。その三角形の山はギリシャにある山で、旅で目にしたピラミッドも影響していると言われているが、幼少時から心に深く刻まれていたニーセンの影響も感じずにはいられない。
パウル・クレー/Paul Klee
1879年、ミュンヘンブーフゼー生まれ。独特の線と色彩を駆使し、音楽性を反映した個性的なスタイルが特徴。バウハウスでも教鞭をとる。1940年没。
 
◼︎取材協力
スイス政府観光局
スイスインターナショナルエアラインズ
スイストラベルシステム
 
» PAPERSKY no.54 SWISS | LANDSCAPE ART Issue