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Day5 | ペダルを漕いで、漕いで、漕ぎまくる

光復からは、昨日走ってきた国道9号線ではなく、よりローカルな県道193号線を選んだ。ここは台湾原住民アミ族の人々が多く暮らすエリアで、人々の顔もポリネシアンのような顔立ちで浅黒い肌の人が増える。 高台のジャングルに伸びる […]

07/09/2019

光復からは、昨日走ってきた国道9号線ではなく、よりローカルな県道193号線を選んだ。ここは台湾原住民アミ族の人々が多く暮らすエリアで、人々の顔もポリネシアンのような顔立ちで浅黒い肌の人が増える。
高台のジャングルに伸びる道はゆるやかなアップダウンを繰り返し、空は晴れ、遠く台湾最高峰の玉山までが見渡せた。頬にあたる風が心地よく、自分自身も風になったような気分で、いくつものカーブ、いくつもの集落、いくつもの橋を越えた。この後に大雨に降られたとしても、今日という日をよい日だったと思うだろう。
そして午後はこの自転車旅で唯一の本格的な峠越えが待っていた。玉里の街から30号線へ向かうとすぐに谷になり、標高がぐんぐん上がる。ギアを軽くし、もう先のことをあれこれ考えるのはやめて、ただ淡々とペダルを漕ぐ。
気がつくとあたりはジャングルに覆われた緑の尾根が広がる山の上だった。ずいぶんと高い場所まで来たものだ。峠の頂上で遅れていた仲間たちを待ち、ハイタッチを交わす。ここを下ればもう海は目の前だ。
一気にギアを重くしてペダルを踏み込み、身をかがめてダウンヒルに突っ込んでいく。スピードはゆうに50kmを超え、景色は溶け出し、大声で叫びたくなる、というか叫ぶ。うぉー! 歓喜の塊となって駆け下りると、あっけないほど一瞬で海に出た。さっきまであんなに深い山の上にいたのに、やっぱり自転車はすごい乗り物だ。
その日の宿まであと1時間の地点で雨が降り出したけれど、もうそんなことはどうでもよかった。僕たちはずぶ濡れになりながら、笑顔でペダルを漕ぎ続けた。
 
» PAPERSKY #59 TAIWAN|Hike & Bike Issue