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  • Photography: Chen Minja
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都市を離れ「森の生活」を送る写真家のレンズに写った台湾の山々

, 2019/05/06

「台湾」と聞いて即座に山のイメージを浮かべる人は、そう多くはないだろう。だが、最高峰3,952mの玉山を始め、戦時中「ニイタカヤマ」と呼ばれた標高3,886mの雪山、「帝王の山」と呼ばれる標高3,742mの南湖大山など、ほぼ九州と同じ面積に250以上もの3,000m峰を抱える台湾は、まさに「山の島」なのだ。

陳敏佳は、自分で建てた森のなかの小屋に住みながら、そんな台湾の山々の撮影を続けている。きっかけは、大学卒業後に従事した兵役時だった。
「自由がない軍隊生活のなかで、それまでそう多くは接してこなかった自然への渇望を覚えたんです。清く澄んだ空気や寒く冷たい雨、森に立ち込める霧など、とにかく自然のなかに身をおきたいと思いました。私にとって自然はありのままの地球の姿であり、そこに強く惹きつけられています」

除隊後、フォトグラファーとして働き始めた陳は、ついに街を離れる決意をする。
「自然や静けさが好きで、山でキャンプをするのも好きでした。それに夜、汚れていない空気のなかで宇宙を見るのも大好きだから、山のなかに小屋を建てました。それ以前は都市部に住んでフォトグラファーとして活動していましたが、森の小屋に引っ越すと、企業や政府から台湾の山林の撮影を依頼されるようになりました」

そんな陳の「森の生活」はどんなものなのだろう?
「私の普段の暮らしはシンプルですね。日常生活は農家とか大工に近いです。以前は常によい作品を撮ろうと考えていましたが、今はすばらしい生活が最もよい作品をもたらしてくれると感じています」

彼のレンズ越しに見る台湾の山々は、どこまでも静謐で荘厳だ。雪を纏った峰々、広大な切り立った峡谷、巨木の立ち並ぶ森。そこに小さく写る人々は、だがとても充足しているように見える。きっとそれはカメラを構える彼も同じだろう。
「大自然を前に人が特別に何かをしても意味がありません。『いい写真を撮りたい』という職業意識を捨てて、ただ、感動したときに写真を撮るだけです」

ときに神聖ささえ感じる台湾の山々の一方で、台北は喧騒の坩堝だ。早朝から深夜まで忙しく人が行き交い、クルマとバイクの騒音にまみれている。そこを抜け出す決断をした彼は、逆に非常に都会的な精神の持ち主といえるだろう。

本号の特集で一緒に旅をした仲間であり、台北でアウトドアショップを経営するヘクター(P.48)は、こんなことを言っていた。
「父親たちの世代はひたすら働いてお金を稼ぐことしか知らなかったけれど、僕たちは『それだけでいいの?』って思うようになった世代なんです。人生に大切なものは、もっと他にあるんじゃないかって」

陳やヘクターのような人々こそが、南の島国から東アジアの新興先進国へと変化を続ける現在の台湾を象徴する存在かもしれない。社会が変わり、人々の意識も変わっていく。そんな陳の意識を、山や森の生活はどう変えたのだろうか?
「森の生活は、私に大工仕事や畑仕事をするたくさんの時間を与えてくれます。そこで雨量や気温の変化なんかを考えながら暮らすことを、私はとても気に入っています。そして以前より広い視野で物事を見ることができるようになったと感じています。もっとも、今でも電動工具や新しくないiPhoneにも関心はありますけど」

最後に彼にいちばん好きな台湾の山を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「私の小屋の目の前にある山がいちばん好きです。毎日いつでも見ることできて、形も美しく、さらに山頂まで続く獣道のような登山道が一本があるから」
 
陳敏佳 Chen Minja
1973年、台北生まれ。グラフィックデザイナー、ダイナミックフォトグラファー。2003年にスタジオを設立し、写真家として、また写真のディレクターとしてさまざまなメディアにも関わる。2015年、森の生活をスタート。台湾北部の山岳地域に小屋を建て、そこに暮らしながら登山を楽しむ日々を送っている。

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