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鮮烈にして芳醇なメキシコの蒸留酒・メスカル

メキシコではマゲイと呼ばれるアガベ科の植物を使った蒸留酒、メスカル。メキシコの酒といえばテキーラが世界的に知られているが、テキーラは特定の地域で、特定の種のマゲイを使ってつくられたメスカルのこと。つまりメスカルと呼ばれる […]

10/02/2018

メキシコではマゲイと呼ばれるアガベ科の植物を使った蒸留酒、メスカル。メキシコの酒といえばテキーラが世界的に知られているが、テキーラは特定の地域で、特定の種のマゲイを使ってつくられたメスカルのこと。つまりメスカルと呼ばれる酒のほうが、種類も生産量も圧倒的に多い国民的な酒なのだ。もともと地域の神事や結婚式などで飲まれていた、いわゆる地酒のような存在だが、その芳醇な香り、複雑な味わいが徐々に広がり、一大産業にもなりつつある。オアハカの街には何軒ものメスカルバーがあり、郊外にはマゲイの畑が広がっていた。街から1時間ほど車を走らせたマタトラン村がオアハカの一大産地として知られているが、さらに奥地へ。「SINÁI」という家族経営の古い蒸留所を訪ねた。エスパディンという種類のマゲイを完全オーガニックで10年弱育て、中心部分のみを蒸し焼きにする。細かく挽く作業は、巨大な石臼を昔ながらに馬が引くのだという。水と混ぜて15日間発酵させ、薪で火を炊いた竃にのせて蒸留する。1度目の蒸留でアルコール度数23度ほど、2度目には65度にも達する。最後に出てくるアルコール度数の低い部分は除き、加水して40~50度の間で調整をする。できたてのメスカルをホーベンと呼び、「SINÁI」のものはシトラスの香りが口のなかに広がる。ウィスキーのオーク樽を再利用して寝かせるほど、角が丸くなり、とろりとした質感へと変化していく。一気に飲み干すのではなく、口中に含んで香りが鼻へと抜け、複雑に変化していくのを楽しむ。驚くほど鮮烈で、同時にとても優しい。たとえラベルを貼って出荷するようになっても「SINÁI」のように、メスカルは今も家庭の味でもある。
>> PAPERSKY #57 MEXICO, OAXACA|Food & Craft Issue