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  • Photography: Nahoko Morimoto

オアハカの豊かな食、美しい色彩

, 2018/08/13

オアハカ郊外にあるヤグール遺跡の洞窟から、紀元前6,000年前のチリ、トウモロコシ、カボチャの種が見つかった。さまざまな野菜の原産地であることが知られるメキシコだが、この遺跡での発見は、それらの野菜がいかに密に人々とつながっているのかを想像させる。紀元前の人々が食べていた原種を、オアハカの人々は「クリオージョ」と呼んで、今でも大切に食べている。

今回、料理をつくってくれた料理研究家のノラ・アンドレアさんは、「祖母の味を途切れなく伝えていくこと」が使命だと語った。そのためには、サルサに使うトマトは「クリオージョ」でなければならない。伝統的な煮込み料理のモレには、あのチリを使わなくては。トスターダスというパリパリのトルティーヤの生地には、紫色のトウモロコシをすり潰して粉にしなくては。それぞれの料理に、家庭のなかで紡がれている伝統が色濃く反映されている。オアハカ近郊に点在する村によって、同じ料理でも味が違うことを考えると、そのバリエーションは無限に広がる。ノラさんは、その料理の系譜を調査している研究者でもある。

オアハカは、豊穣の土地なのだ。サボテンや多肉植物のイメージが強いためか、砂漠地帯のように勘違いしてしまうが、多くを山岳地帯が占める複雑な地形のエリア。雨量の多寡だけでなく、高度の変化によっても植生が異なる。複雑な地形はそのまま食材のバリエーションに表れる。そして、盆地となっているオアハカの街で開かれるメルカドつまりマーケットには、それぞれの村で採れた「クリオージョ」を持って、村人たちが山を下りてくる。メルカドは今も交易の場であり、登場する野菜は季節によってがらりと変わる。取材時には旬を迎えたスイカや走りのキノコが並べられていた。彼らの暮らしが古くからそれほど大きく変化していないことは、料理を盛りつける器を見ればわかる。どの工房を訪ねたときにも、電動ろくろを使っているつくり手には会わなかった。皿を裏返しにして2枚を重ね、下の皿を固定して、上の皿をまわす原始的な方法を採用していた。すると、土が軟らかくとも、ゆっくりと成形できるのだという。近代化を拒んでいるというよりも、その土に合わせた方法を採択しているといったほうが正しいのだろう。変える必要のないものは、変えずに残されている。

ほとんどあらゆるものが手仕事の成果なのだ。マーケットに並ぶ器や籠は、売っているおじさんが家でつくったもの。細かな刺繍の入ったエプロンも、遺跡に記されているのと似た文様の入った織物も、目の前のおばさんやおじさんがつくったもの。そうでなかったとしても、誰がつくったものなのかたどることができてしまう。そして、その素朴さのなかには目利きたちを惹き寄せる、すばらしい手仕事が埋もれている。メキシコはピカソの時代からアーティストたちのイメージソースであり続け、遺跡の壁画はキース・ヘリングそのままだった。

だが、オアハカがおもしろいのは過去がそのまま保存されているからではない。きちんと現代の最先端にアップデートされているのだ。その名も「CRIOLLO」というレストランにはメニューがなく、その日に仕入れられた食材によって提供する料理が変わる。シェフはオアハカの伝統を強く意識しながらも、新しい組み合わせを日々試みている。この店ではメルカドで見かけるような素朴な素焼きの器が、削ぎ落とされた洗練さをまとっているように見える。

遠い国なのに、居心地がいい。オアハカに感じる親近感は、我々がどこかで変えてしまった素朴で洗練された生き方を、今も彼らが続けていることをひしひしと感じるからかもしれない。トマトはあくまで酸味が強く、チリは汗が噴き出すほど辛かった。
 
Alma de ni Tierra
オアハカの伝統料理を学べるノラさんの教室は、マーケットでの食材選びに始まり、オアハカの食文化や調理方法を楽しみながら学ぶスタイル。英語での対応が可能で、さまざまな国籍の参加者が訪れている。
www.almademitierra.net

>> PAPERSKY #57 MEXICO, OAXACA|Food & Craft Issue

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オアハカ
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メキシコ

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