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  • Photography: Shinji Yagi

ヨギーニ・TAMAOさんと、ハワイ島にリトリートへ

, 2018/05/09

近年、新たな旅のキーワードとして注目されている「リトリート」。大自然のエネルギーを感じながら自分を見つめ、自然とのつながりに思いを馳せる。そんな旅の舞台に選んだのは、火の女神ペレの濃密なパワーに包まれたハワイ島。ジャングルやウォームポンドなどパワーみなぎるスポットをめぐりながら、ヨギーニのTAMAOさんと自分を再生させる旅へ。

日本人はハワイ諸島が大好きである。コバルトブルーの海とのどかなビーチ、トロピカルな花々。観光パンフレットそのままのショートトリップも悪くないけれど、「それだけでハワイを通過してしまうのはあまりにもったない」と言うのは、今回のナビゲーターを務めるヨガ指導者のTAMAOさん。各地でヨガトレーナー向けのワークショップを開催する傍ら、SUPヨガやアウトドアでのヨガの魅力を広めているヨギーニであり、サーフィン、SUP、フリーダイビング、トライアスロンと、海のアクティビティをこよなく愛するウォーターウーマンでもある。

今回訪れたハワイ島は、ハワイ諸島のなかで最も若く、とりわけ多彩な表情をもつ島だ。まったく異なる気候帯から生み出される植生の違い、雨や風のにおい。活発な火山が生んだ独特の造形、神話。どこか日本にも通じる、ハワイアンの濃密な文化。観光というベールの裏側には、ずっと奥深い、本当のハワイ島の姿が隠されている。

文化、自然、人……多彩なフェーズがあればこそ、リトリートで得られる体験はより深みを増すはずだ。年に2〜3回の割合でハワイ諸島の各島で、ヨガを中心としたリトリートを開催するというTAMAOさんも、そんなハワイ島に魅了されたひとりだ。

「情報過多で何もかもがお膳立てされた現代の暮らしでは、人間はつい受け身になってしまいがち。感覚や感情のシャッターを下ろしてしまい、周囲で起きていることをシャットアウトしてしまうことも少なくない。そういう自分をリセットするために、日常とかけ離れた環境でのリトリートの必要性が高まっているのかもしれません」

TAMAOさんが伊豆白浜で初めてリトリートを開催したのは10年前。世の中にはまだ“リトリート”という言葉が浸透していなくて、「自然のなかで行う、ヨガを中心とした癒しのレクリエーション」と説明していたという。翻って、いまや欧米の20〜30代が新たな価値観、ライフスタイルに出合いたいと、太平洋の真ん中に浮かぶ島へわざわざ旅する時代である。今回の旅でも、「リトリートに来た」というたくさんの旅人に出会った。彼らに共通するのは、自分の頭で考え、身体を動かし、試行錯誤を重ねるなかで、人生をより豊かにしたいという願い。ハワイ島にそのきっかけを求める者が多いようだ。

リトリートで必要なのは、自然のなかで「なぜ?」と感じる好奇心だ、とTAMAOさんはいう。この花が赤いのも、あの鳥があんなふうにさえずるのも、自然の営みにはそれぞれ理由がある。そうした事象のひとつひとつに好奇心をもち、答えを探るなかで体験を重ね、ただの知識ではなく、生きる智恵を身につける。それがリトリートという旅の醍醐味だと考える。

「海は癒しや浄化の場であると同時に、学びの場と考えています。たとえばサーフィンは爽快感をもたらしてくれるアクティビティというだけでなく、海の恐ろしさや身を守る術も教えてくれる。SUPで海に漕ぎ出せば、潮や風にどう身を任せればいいのか、経験を積むなかでベストな方法を習得できる。それは自らが体験しないと得られないもの。と同時に、自然には自然のリズムがあって、人間の都合や事情にはけっして合わせてくれないことも学べます」

海で、山で、川で癒されたいなら、人間が自然に対して敬意を払い、寄り添うしかない。だからこそ謙虚になれるし、その一瞬に集中する。だから人間は大自然に惹きつけられるのかもしれない。

TAMAOさん自身もリトリートを目的とした今回の旅で、得難い学びや気づき、出会いに恵まれたという。島の東側にあるプナの森では森羅万象に神さまが宿るジャングルを歩き、神々しいまでの緑のなか、風に吹かれて瞑想やヨガを行った。サステイナブルな農業を実践するナチュラリストたちを訪れた際は、土に流れる育みの力を体感した。家庭菜園を趣味とする父親の影響で、「自分の食べるぶんくらいは自分でつくれるようになりたい」と考えるようになったTAMAOさんにとって、プナ地区のファーミング・コミュニティはぜひ訪れたいと思っていたスポットのひとつ。

「けっして肥沃な土地ではないからこそ、ここで農業を実践する人たちには創造性を感じます。試行錯誤から編み出されたリアルな知恵には、伝統文化とはまた違った“生きるヒント”が隠されているようで頼もしい。こういう智恵がたくさん集まったら、地球はもっといい場所になるんだろうな」

ハワイ火山国立公園内の、キプカという古い森に残るトレイルを案内してくれたエコツアーガイド、長谷川久美子さんには、自然を見つめる新たな視点を学んだ。

「彼女の解説を聞いた後では、自分を取り巻く植物の色も香りもまったく違ったものに感じるから不思議。サドルロードをドライブすれば、東から西へと車窓が移ろうにつれて植生も日差しも、風も空気もどんどん変わっていくのがわかる。知識というものがどのようにして私たちの経験に深みを与えてくれるのか、彼女とのトレイル歩きで実感しました。同時に、私はこの島にまつわる物語の、ほんの1万分の1も知らないということも」

そしてもちろん、ハイライトはこの土地、人、自然に息づくアロハのスピリッツである。島のエネルギーそのもののように自分を包み込んでくれた、ホ・オポノポノのクム・カオプア夫妻の温かなチャント。ハレマウマウ火口では火の神ペレの存在を感じ、マウナ・ウル溶岩台地では、溶岩が形づくる複雑怪奇なフォルムに神秘を見出した。

「結局、こうした体験で行き着くのは“愛”なんだと思います。家族や友人への愛、土地や自然への愛、自分への愛。神さまというのは、自分のなかにある愛情のことなんですね」

もちろん、自分のなかにある愛情を感じるためには、心の内側にある執着や感情を解き放たなくてはならない。そんなとき、ハワイ島の森羅万象がその手がかりをくれるはずだ。たとえば、満天の星の下、溶岩大地に横になってみる。そしてはるかな空の彼方へ、思いを巡らせてみよう。壮大な宇宙のほんの片隅に小さな銀河系があり、太陽系があり、さらにちっぽけな地球の上に自分が存在していることを。数十万年という、宇宙の歴史からみたらほんの瞬き程度の時間で造成された、火山と大地の作品の上に横たわっていることを。自らを許し、手放し、解放するインナートラベルは、そんな気づきから始まるのだ。
 
TAMAO |ヨガ/SUPヨガインストラクター
ヨギーニにして、海をこよなく愛するパドラー、サーファー、トライアスリート。湘南を拠点にアウトドアフィットネスを取り入れたビーチヨガやチャクラワークを指導する。海上のSUPの上で行う”SUPヨガ”の日本におけるパイオニアとしても活躍中。ハワイ諸島、バリ島ほか、国内外でサーフ&ヨガリトリートを開催するなど、自然のなかで心と身体の調和を図るプログラムに定評がある。gypsea by HONEYプロデューサー、ROXY、Hydro Flaskアンバサダー。 www.tamaoyoga.com

*衣装提供いただいた、新しいスポーツライフスタイルを提案する「NEUTRALWORKS.」では、町歩きからアクティビティ、リラックスウェアまで、リトリート旅におすすめのアイテムを取り揃えています。 www.goldwin.co.jp/neutralworks
 
» PAPERSKY no.56 HAWAII | RETREAT Issue

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