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絵本から垣間見る、グアルダの素朴な暮らし

アルプスの雄大な自然と人々の素朴な暮らしを絵本のなかで表現したのが、イラストレーターのアロイス・カリジェだ。カリジェはグラフィックデザイナー、絵本作家としても活躍したアーティスト。『フルリーナと山の鳥』や『ウルスリのすず […]

10/31/2017

アルプスの雄大な自然と人々の素朴な暮らしを絵本のなかで表現したのが、イラストレーターのアロイス・カリジェだ。カリジェはグラフィックデザイナー、絵本作家としても活躍したアーティスト。『フルリーナと山の鳥』や『ウルスリのすず』など、児童文学作家のゼリーナ・ヘンツの原作に挿し絵を手がけた作品がよく知られている。
ウンターエンガディン地方のグアルダを舞台に、幻想的なタッチと美しい色彩で描かれた絵本からは、この地方独特の生活様式も垣間見ることができる。スイス東部に位置し、イン川沿いのエリア一帯は、ドイツ語の他、スイスでも希少なロマンシュ語を公用語として、古いしきたりを守る村も多い。
今回訪れたグアルダは『ウルスリのすず』の舞台になった村で、物語に出てくる祭りは、実際に毎年3月に行われている。グアルダの魅力はなんといってもスグラフィートと呼ばれる民家の壁に施された美しい装飾画だ。色の違う漆喰を重ねた壁を削り出して模様を描く手法は、代々受け継がれたこの地方独特のもの。モチーフは植物や動物、文様、あるいはファミリーヒストリーなどさまざまで、各家庭が自由にオリジナルの装飾を施している。
村を散策していると、ゼリーナが住んでいたという家を発見。彼女の自宅に招待されたカリジェはいちばん上の部屋に案内され、その窓から見えた左の家屋をウルスリの家のモデルにしたという。滞在中、どこからともなくカウベルの音が響いてきた。まるで絵本のなかに迷い込んでしまったよう。カリジェの世界をまるごと体感できる小さな村は、中世の風情そのままに、穏やかな空気に包まれていた。
 
アロイス・カリジェ/Alois Carigiet
1902年、トゥルン生まれ。チューリヒでグラッフィックデザイナーとして活躍。1940年、ゼリーナ・へンツとの出会いから絵本を手がけるように。1985年没。
 
◼︎取材協力
スイス政府観光局
スイスインターナショナルエアラインズ
スイストラベルシステム
 
» PAPERSKY no.54 SWISS | LANDSCAPE ART Issue