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ニッポンの魅力再発見の旅・秋田 / 田沢湖

, 2017/08/07

秋田犬、あきたこまち、温泉、田沢湖、稲庭うどんにいぶりがっこ……私たちが知る秋田のキーワードは、どれも間違いなく名物。訪れればもう、心を掴まれてはなれない。春夏秋冬どんなときも私たちを癒しほぐしてくれるニッポンのふるさと、秋田へ。

「人の気持ちがそのまんま、この子たちに乗りうつるようなんですよね。」かれこれ40年近く、数々の秋田犬を愛情いっぱいに育てている武田幸士さん。お母さん犬で6歳の紀子と5歳のきらり、青春真っ盛り11ヶ月の由美。それに、紀子が4月に産んだばかりの八光と武士。優しいまなざしで犬たちのことを話す武田さんに似てか、5頭そろってとても愛嬌にあふれている。

「大先輩たちが長きにわたり大切に残そうとしてきた秋田犬。保存は意義あることと思っていますが、何よりこの子たちに私が癒されているんです。」
どんな犬よりもやさしく、“さかしい”(=物覚えもよく賢い)のが秋田犬の特徴なのだとか。65歳の武田さんにとって、できる範囲で朝晩二度、愛犬との散歩を欠かさない。対話を大事にしながらのブラッシングもある。愛犬たちとの日常は、使命というより穏やかな家族の営みなのだろう。

私たちが秋田の仙北市を訪れたのは、緑の苗が一面に広がる田んぼの風景が無性に嬉しくなる頃。市のほぼ中央に瑠璃色の湖水が美しい田沢湖があり、東に乳頭温泉郷、南西に武家屋敷で有名な角館を有する。県の面積の約7割が森林というだけあって、周囲の山々を見れば、植林された秋田杉のとんがり姿がすくっと立っている。東北の他県に比べ、なだらかだと聞いていた秋田の山の表情は、人柄同様に穏やかだ。内向的と思いきや、会う人たちはみな親しみやすい。情緒ある角館で訪ねた「民芸イタヤ工房」の菅原清澄さん・文子さんご夫婦に、私たちはお会いしたそばから、ぐっと引き込まれていた。

200年以上前から伝わるイタヤ細工は、野や山で採取したものを入れて持ち帰る、農具としてのカゴなどからはじまった。イタヤカエデの幹を帯状に裂き、薄くしなやかな材料へ削り出して編む。「手提げにしたり、花器にしたりというふうに、農具から民芸へ、工夫と進化をさせたのは三代目の父・昭二です」。民芸展や物産展がおよそ月に二度のペースで行なわれるほど人気は根強い。向かい合って黙々と作業をする夫婦の掛け合いは、軽やかで微笑ましい。朝から夕方まで規則正しい手しごとの時間は流れ、話しながらも手は決して止まらない。美しく編み込まれた模様には温もりもある。二人の娘さんも家事や育児との両立で制作に携わる。残る職人は菅原家のほか二世帯のみ。「やってみたい人がいれば、ぜひ」と清澄さんは話す。きっと普段づかいの日用品をつくる姿を惜しみなく見せてくださるだろう。

このような手しごとを行なう農家は減ったものの、秋田の農家はとりわけ元気だ。住居を旅行者へ提供する、いわゆる農家民宿を営む家庭が県下で90軒近くもある。なかでも、県内で2番目に始め、今秋で20年を迎える仙北市内・西木地区の「星雪館」へお邪魔した。柔和な笑顔であたたかく迎えてくれたのは、門脇昭子さんと長女の富士美さん母娘。畑では昭子さんのご主人・征志さんが農作業に勤しんでいた。「母にとってはここが、町へ出た人たちの帰ってくる場所になれば、という思いも強かったようです。私は知らない人がたまに家に泊まりにくるのも楽しそう、という気持ちでしたね(笑)」。決してアクセスが良いとは言えない立地で、周囲には特にこれといった名所もない。それでも、ここを自分の第二のふるさとと感じ、何度も訪れるリピーターも多い。最近では、台湾やタイなど、アジアからのお客さんも増えているのだそう。「できるだけ手をかけたものを食べてほしい」という昭子さんの思いもあって、主力の野菜はもちろん、春は山菜や川魚、冬は名物のきりたんぼ鍋と、この民宿ならではのおふくろ料理に誰もが舌鼓を打つだろう。ほんの少しの間いただけで、一行の心はすっかりほぐれたのだった。

景色に人に、安堵する秋田。その上、この地には乳頭温泉郷という憧れの温泉宿七湯が、訪れる者の身も心も癒す。広くてポンポン湧いていた源泉の様子からその名がついたという「大釜温泉」は、40年前に市から廃校舎を譲り受けてこの地へ移築。主に杉材を用いた改築により、木造校舎の名残がある趣のある湯宿だ。乳頭温泉唯一の足湯もあり、湯めぐり客もその泉質を存分に味わってゆく。新緑美しい初夏、澄んだ水と水底の白い岩石により、水中での光の反射がエメラルドグリーンの神秘的な風景を見せてくれる「抱返り渓谷」へも足を伸ばした。もとは秋田杉を搬出するための森林軌道跡につくられた散策路。流れる水の音を聞きながら無心に歩いていると、渓谷を彩る紅葉、一面黄金色の稲穂、乳頭温泉の雪見風呂に田沢湖の桜。それは格別であろう四季折々の風景が浮かんできた。どの季節も、秋田らしい。田沢湖を含む壮大な自然公園の四季の移ろい。まだ見ぬ季節の秋田がすっかり憧れとなって、帰路に着いていた。
 
Feel NIPPON!心の故郷をめぐる旅へ ツール・ド・ニッポン in 秋田/田沢湖
9月23-24日の週末に開催!
http://www.papersky.jp/tour/akita-tazawako/

秋田ツアーではこれまでとひと味ちがったお楽しみが待っています。紅葉を待ちわびる初秋、青く澄んだ水面が美しい田沢湖を自転車で走ったら、渓流沿いの駒ヶ岳温泉へ入湯。夜は湖畔のキャンプ場泊、地域の食材たっぷりの外ごはんを楽しみます。翌日は一路、山を抜けて角館へ。山裾の暮らし、おふくろの味、イタヤ細工体験と2日間で田沢湖エリアを満喫。外国からの参加者も交え、インターナショナルなツアーになる予定です。ただいま参加受付中!

» PAPERSKY no.54 SWISS | LANDSCAPE ART Issue

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name
角館
place
秋田

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