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Glyph.と旅のビジュアル化|PAPERSKY book club

柳本浩市さんが亡くなってもう1年になる。稀代のコレクターであり、出版社の経営者であり、デザインを通じたブランドコンサルタントやディレクターも務めた彼の活動は多岐にわたる。もうすぐ行われる『柳本浩市展』では主に彼が集めたコ […]

05/30/2017

柳本浩市さんが亡くなってもう1年になる。稀代のコレクターであり、出版社の経営者であり、デザインを通じたブランドコンサルタントやディレクターも務めた彼の活動は多岐にわたる。もうすぐ行われる『柳本浩市展』では主に彼が集めたコレクションが展示される。会場で配布される小冊子で、彼の出版活動について書かせてもらったので、ここでも少し紹介したい。というのも彼がGlyph.という出版レーベルで行ってきたことのひとつは「旅のビジュアル化」だと思うからだ。
2002年に発行された『Departure』は、世界の航空会社各社のチケットやラゲッジタグ、タイムテーブル、果てはエチケット袋までを集めて、縦長の判型の1ページにつき1アイテムずつ収めた本。会社も時代もバラバラ、(語るだけの知識は当然あったにもかかわらず)テキストもほとんどない。パラパラめくって楽しむのにうってつけの本だ。
そんな本づくりの姿勢は、彼の旅そのもので、空港のカウンターで彼はとにかく手に入るものはすべて持ち帰ったという。本に載せるのはすべて自分のコレクションから。ただし過度な分類や取捨選択はしない。キャッチーなものばかりでなく、なんでもないもの、みんなが持ち帰らないものを入れた。使用済みの荷物タグなど手書きのものも入れたりする。旅をしながらコレクションするワクワクした感じをそのまま感じてほしいという思いがあったという。
『Departure』が好評だったため、翌2003年には鉄道会社版の『Mind the Gap』、2004年にはエアライン第2弾『Transit』が刊行された。一方で60年代に就航していたテキサスの航空会社ブラニフ・インターナショナルのグッズ化も行った。
結果、起こったことはエアラインマニアやデザインオタクのものだった航空会社のビジュアルやデザインを、みんなが気にするようになったことじゃないかと思う。どうせ乗るならデザインのいい航空会社のほうがいいし、気持ちのいい空港を選びたい。移動という手段から、旅の目的へ。旅のビジュアル化によって生じた気分の変化は、僕らの旅のスタイルをちょっとだけ変えた。
「柳本浩市展 アーキヴィスト – 柳本さんが残してくれたもの」 2017年4月29日~ 6月4日
six factory 東京都目黒区八雲3-23-20
Departure, Mind the Gap, Transit
柳本浩市 Glyph.