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  • Photography: Hideaki Hamada
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ルーカス B.B.と歩く、小豆島88カ所 歩き遍路の7日間

, 2017/05/17

ここ数年、古道歩きに夢中のPAPERSKY編集長ルーカス B.B.が降り立ったのは、瀬戸内海で2番目に大きな小豆島。険しい山々の奥深く、絶景に彩られた古道があるという。島の人々とともに、白装束を身にまといお遍路さんの気分で歩く7日間。150km の旅へいざ!

PAPERSKY編集長のルーカス B.B.が古道歩きにハマったのは、2009年の東海道の旅がきっかけだった。日本橋から京都へ、江戸文化を育んだ約490kmの日本の大動脈は、新幹線を使えばたった2時間半の距離である。日帰りで往復できるこの区間に、あえて2週間近くを費やす。このとき、時速5km弱の速度だからこそ得られるものの大きさを知った。

「道というのは人や物資だけじゃなく、文化や歴史も行き来するものだよね。おいしいものを食べて温泉に浸かり、昔の宿場町に宿泊する。道に紐づいたカルチャーや、峠を登り下りするたびに変化する風景を間近にすると、自分のなかの気持ちも移ろっていく。それが歩く旅のおもしろさなんだって発見したんだよ」

で、小豆島だ。じつはルーカス、小豆島の歩き遍路はこれが2回目。昨年末、プライベートで同じ行程を歩いたのだが、この島の遍路道の奥深さにすっかり魅了された。

「小豆島のお遍路はたった150km。その短い距離に、島のいろいろな要素がぎゅっと凝縮されている。海沿いをのんびり歩いていたかと思えば、一気に山道を登って鎖を使い、断崖にあるお寺にたどり着いたり。海、山、岩、森と、風景がダイナミックに変わるのは、離島ならでは」

今回の旅は、歴史や文化という古道でおなじみの概念に加え、宗教をベースにしている点で、様相が少しだけ異なった。多くの古道を歩いたルーカスにとっても、お遍路は小豆島が初である。

「遍路道というだけで身構えてしまう人は多いと思う。実際に歩いてみて、島外の人はもちろん、島の人たちにも同じような心理的ハードルがあるってわかったんだ。島の人に『遍路道を歩いたことある?』と尋ねると、多くの人が『(歩き遍路なんて)考えたこともない』と言っていたから。お遍路道は信仰の道だから自分たちには関係ない。島ではそういう考えが一般的なのかもしれない」

今回はPAPERSKY一行もお遍路さんの白装束を意識して、白いものを身につけて歩いてみた。それは信仰心の表れというよりはお遍路文化に対するリスペクトだったが、歩いているうちにそれらしい気持ちになってくるから不思議である。実際、その日最初に訪れた寺院で線香をあげ、ご真言を唱えるとなんだか清々しい気分になれるのだ。それは、1,000年以上もこの島で受け継がれてきたお遍路文化の末端に、今まさに自分たちが連なろうとしている、そんな自負心がもたらしたのかもしれない。

「でも、信仰の道だからといって敬遠するのはちょっともったいないよね。この道は日本にしかないスペシャルな要素が満載で、これまで歩いてきたなかでベストトレイルのひとつ。そんな魅力的な道だから、自分の仲間や島の人にもぜひ、一緒に歩いてみてほしいと思った。べつにお参りをしなくてもかまわないんじゃないかな。実際に歩いてみたら、お遍路という文化に興味が湧いてくるはずだから」

旅ではいつもたくさんの人と親交を温める。今回は島のキーパーソンを案内人に迎え、一緒に歩いて同じ風景や体験を共有した。

「たとえば、2日目を一緒に歩いてもらったいのうえただひろさん。彼は島生まれ・島育ちなんだけど、フットワークが軽いからどこにでも出かけていって、新しい情報をインプットして帰ってくる。そうして自分が得たものを島に活かせないかっていつも模索しているような人だ。同時に、島のよさも積極的にアピールして、島外の人を巻き込んでおもしろいことを始めてしまう。こういう人が島や地方をおもしろくしていくと思うんだよね。彼と1日歩いたことで、お互いの視点を深く共有できたこともいい思い出」

地方を旅して気になるのが、ときに都会から田舎へ移住した人が抱く“都アレルギー”とでもいうべき都会への拒否感だ。それは本当に残念なことだと、ルーカスはつねに思っている。都会にも田舎にもそれぞれにいいところがある。どちらがいいとか悪いではなく、どちらのよさも取り込んでいこうという姿勢がおもしろいムーブメントを醸成すると信じるからだ。その点、いのうえさん他、小豆島で出会ったユニークな人たちには、そうしたニュートラルな視点が感じられて頼もしかった。

「3日目の渡利知弘さんは、あらゆる点で僕たちの旅のモデルケースだと思った。渡利さん自身はアウトドアが大好きだけれど、歩くことにはまったく興味がなかったんだよね。でも、実際に歩いて島の文化を訪ねてみたら思いのほか楽しくて、いろいろな発見があったみたい。『今回の旅をきっかけに歩くことへの見方が変わった』と言ってくれたから。彼がもともと興味をもっていたクライミングの要素に島のカルチャーが加われば、彼の活動の幅も島のクライミングシーンも、もっと大きくなると思うんだよ」

お遍路道に関わるあれこれでもうひとつ感慨深かったのが、先達の存在である。先達とは巡拝経験を重ねた、お遍路のリーダー的存在のこと。小豆島では地元の先達が率先して遍路道の整備・保全に努めている。1,200年前、弘法大師が歩いた修験の道を現代に生きる我々がたどることができるのは、こうした方々の尽力あってこそ。それでも、こうした文化も風前の灯火だという。

「1,200年前に起きた出来事を数十年前のことのように語る日本の文化は、この国の財産だと思うんだよね。でも現代の日本は、効率と引き換えにせっかくの財産を捨てようとしているんじゃないかって危惧している。初日に案内してくれた先達の森下さんが、お遍路の数はここ20年くらいで激減していると言っていた。歩く人の数が減れば自ずと道は荒れてしまう。じゃあメディアに携わる僕たちがこの道のためにできることはなんだろう。それはこの道を歩いて、文化を発信することなんだよね」

ジョン・ミューア・トレイルで知られるナチュラリストのジョン・ミューアも、トレイルに出かけるときはつねに友人を誘い、連れ立って旅したという。そんな話を聞いて以来、ルーカスもなるべくいろいろな人を誘って歩くようにしている。一緒に歩くことで、その旅や道への理解者を増やすことができるからだ。

「今回は僕たちが島を訪ね、島の人と歩くという試みがうまくはまった旅だったと思う。歩いたみんなが遍路道に興味をもってくれたから。8年前、東海道を歩いたときは“490kmを歩く旅”なんて誰も見向きもしなかった。でも最近はみんながおもしろがって一緒に歩こうと言ってくれる。歩く旅には発見がある、このトレイルはおもしろい、そう伝え続けることが日本の財産に光を当てることになるなら、自分がやっていることもあながち無駄じゃないなって思えるよ」
 
» PAPERSKY #53 SHODOSHIMA | HIKE Issue

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