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  • シャベルを握り、ハナミズキの木を校庭脇の花壇に植える。
  • 植樹の前には教室でペドロ・レイエスのプレゼンテーション。
  • 銃を溶解して作ったシャベルを手にするペドロ・レイエス。
  • クラスメイトとの共同作業もこのプロジェクトの醍醐味。
  • 子どもたちの様子を撮影するレイエス。
  • 植樹を終えると、グループごとに記念撮影。

回収した銃をシャベルにして、小学校に木を植える

, 2017/03/06

メキシコ人アーティストのペドロ・レイエスが、森美術館主催の「ラーニング・ウィーク」の一企画として、東京都港区立笄(こうがい)小学校を訪れた。《銃をシャベルに》と題するレイエスのプロジェクトに四年生の子どもたち60名が参加し、一緒に植樹を行ったのだ。

「アーティストってどんな人だと思う?」
朝の教室。問いかけられた子どもたちが、口々に回答する。
「絵を描いている人」
「ものを作っている人」
「いろんな発想を生み出す人」
「自然のものを生かして、いろいろなものを作る人」
「美術品を展示して、大勢の人を幸せにする人」
子どもたちの回答を聞きながら、レイエスは満面に笑みをたたえて頷いている。

人や動物の生命を奪ってしまう銃という武器を回収し、木を植えて新たな生命を生み出すための道具に作り変えることを目的に、このプロジェクトは始まった。隣国であるアメリカとの3200kmの国境沿いには、7000軒に及ぶ店で銃器が販売されており、一般市民に銃を持つ権利が与えられた国と接していることへの危機意識を表明することが大きなモチベーションになったという。そしてレイエスは、このプロジェクトと日本との関係を表す2つのエピソードを子どもたちに語った。

「日本には芭蕉という有名な詩人がいます。俳句という詩の形式を作った人物です。ある日、弟子が芭蕉に『師匠、私に俳句のアイデアがあります』と、一句詠みました。『赤とんぼ 羽をむしれば 唐辛子』。芭蕉は弟子を叱りました。『ひどい詩です! 唐辛子 羽をつければ 赤とんぼ と詠むべきです』。アートには、ある題材を別のものに変える力がありますが、ただ変えるのではなく、ネガティブなものをポジティブに変容させることがとても大事なのです」

《銃をシャベルに》では、市民から1527丁の銃を市役所で集め、それを溶解して1527本のシャベルに作り変え、1527本の木を植えるというプログラムを実行した。植えた木はやがて成長し、豊かな環境が生まれる。そのポジティブな一連の流れこそが、アートという行為の意義なのだと、まずレイエスは子どもたちに伝えた。そして次に話したのは、かつてメキシコに住んだ日系移民のエピソードだ。

「メキシコシティにはかつて、マツモトというとても有名な花屋がありました。一人の日系移民がオープンした花屋です。素敵なフラワーアレンジメントで有名になったそのお店には、多くの有名人や政治家が訪れました。ある日、マツモトさんが市長と会う機会があり、マツモトさんは市のすべての通りにハカランダの木を植えましょうと提案しました。そして、間もなくして実現したのです。現在では、3月になると熱帯の桜とも呼べるムラサキのハカランダの花がメキシコシティに咲き誇り、市民は毎年その風景を心待ちにしています。ある一つのアイデアによって、街のイメージや人々の暮らしを明るく一新してしまう。このエピソードは私にとってアートとは何なのか、という話を説明しています」

今から100年以上も前の1910年、松本辰五郎さんという一人の日系移民が、美しい日本の桜の木を街に植えて欲しいと依頼された。雨の少ないメキシコの気候と植生を考慮して、彼が最適な木として代わりに選択したのがハカランダだった。実際はブラジリアン・ローズウッドとも呼ばれるブラジル原産の木なのだが、今ではメキシコ国民でも自国が原産の木だと思うほどにシンボル化している。

教室でレイエスのプレゼンテーションが終わると、校庭に出て、キンモクセイ、ハナミズキ、プラタナスという3種の木をグループに分かれて2本ずつ植える。子どもたちはシャベルを握り、苗木を植えるとそこに土をかぶせていく。そして作業を終えると、一緒に植樹を終えた達成感と、この木が育っていくことへの期待感とが真剣な表情から伝わってくる。

「このプロジェクトの目的は、平和主義を共有することです」とレイエスは最後に語る。「平和と友情の象徴として、私たちは一緒に木を植えました。今10歳のあなたたちが成長していくのとともに、今日植えた木もすくすくと育っていきます。私も今度来日するときには、ここに来てどのぐらい木が育ったのかを確かめたいと思います」

アートの閉じた世界から外に出て、現実社会の問題と積極的に関わるソーシャリー・エンゲイジド・アート。その実践を重要なものとして捉える森美術館がペドロ・レイエスの活動に着目し、笄小学校とのコラボレーションを実現した。シャベルを握りながら、木を育てることの意義やアートにできることが何なのかを子どもたちが考え、体感したことが、植樹後に感想を述べ合う姿から伝わってきた。社会とつながりながら行動するアーティスト、ペドロ・レイエスとの出会いは子どもたちに大きな印象を残したに違いない。

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