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  • Photography: Takashi Ueda
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ムーンライトギア・千代田高史さんと走る バイクパッキング6日間の旅

, 2016/12/07

東京・岩本町にあるアウトドアギアのセレクトショップ、ムーンライトギア。その代表兼バイヤーを務める千代田高史さんは、ウルトラライト・ハイキング(UL)やファストパッキングといった現在のオルタナティブなアウトドアカルチャーの日本におけるキーパーソン。彼のユニークな点は、そのバイイングのセンスはもちろん、自らが積極的にフィールドで遊び、その情報を発信していることにある。そんな彼の最近のSNSの投稿に、じつはハイキングよりも頻繁に登場しているのがバイクパッキングだ。

「僕はアウトドアの入り口がマウンテンバイクだったんです。大学4年のとき、最初は単純にファッションとして買ったんですけど、やっぱり使いこなさないと格好よくないということで、当時は暇で時間だけはあったから、いろんな場所に走りに行くように。その後、山歩きをするようになり、ULと出会ってからは、その道具を売ることを仕事にするまでになるんですが、じつはいちばん好きなのは今もマウンテンバイクなんです。夜のうちにマウンテンバイクを押して上がって山の上でキャンプして、早朝にトレイルを下るような、キャンプ&ダウンヒルみたいなスタイルが好きなんですけど、自転車と自分のライフワークであるULは、安易につなげてはいけないと最近まで思ってた。自分のなかで『自転車は趣味、ULは仕事』って線引きがあったんです」

千代田さんのなかでその両者がひとつになったきっかけは、やはり、バイクパッキングという新しいカルチャーの登場にあった。
「5年くらい前から、海外のサイトで自転車に変なバッグをつけた画像を見るようになって。そのうち、バイクパッキングは欧米で大きな潮流になってきて、ついには『ウルトラライト・バイクパッキング』っていうキャッチコピーを掲げているブランドなんかも登場してきたときに、『これは俺たちが語らないといけないぞ』って思ったんです。そこからは水を得た魚になって、最近はバイクパッキングばっかり(笑)」

だが、当初はアメリカという広く平坦な場所が多いフィールドで生まれたバイクパッキングという方法論を、急峻な山岳地帯の多い日本にいかに「翻訳」するのか、手探りの状態が続いたという。
「日本でのバイクパッキングを確立する使命感を勝手に背負っていたんです。だから最初は『バイクパッキングは長い距離を行かないと』とか『なるべくダートを走らないと』とか、ちょっと肩肘張っていたかもしれません。でも、能登半島を一周したり、八ヶ岳をパスハンティングで横断してみたり、伊豆大島とかで島旅をしてみたり、いろんなスタイルのバイクパッキングをすることでその旅の感覚がだんだん体になじんできて、今は逆にいろんなバイクパッキングがあってもいいと思うようになりましたね」

PAPERSKYがプランニングした今回の旅は、普段の千代田さんからすると幾分スローな旅だったが、そこではどんな発見があったのだろう?
「いつもは1泊2日や2泊3日が多いから、それで旅の満足度を上げようとするとあえてハードなことをするとか、もっと遠くまで行こうとか思いがちなんだけど、今回は6日間あったから浜辺で焚き火したり、朝ゆっくりコーヒーを飲んだり、そういう旅もいいものだとあらためて思いました。『ゆっくり』っていっても、今回もそれなりに走っているし、峠も越えているから、それでも楽な感覚でいられるのは、やっぱり荷物が軽いっていうのは大きいですよね。」

今回はスローなだけでなく、たくさんの人々との出会いと別れが印象的な旅でもあった。
「1日目はヴィンセントさんの『オラが山』を一緒に走れたのはよかったな。『京都はいっぱいトレイルあるよ。あそこの山もこっちの山も下れるよ』って話してて、ちょっと羨ましくなった。男前豆腐店も、普段のバイクパッキングでも工場見学するのは全然アリだって思いましたよね。だっておもしろかったもん(笑)。あと、峠のパン屋さんにしても、二日目に泊まったぼっかってにしても、なんでそこに移住したのかって話も含めて、その地方に住んでいる人と話をするのはやっぱり楽しいですよね。それに自転車の旅では、そこに着くまでに厳しい峠を越えていくわけじゃないですか。そこまでして会いにくると、相手も『よく来たね』ってなる気がする。ぼっかってのアキさんもその空気感を感じたから、一緒に走ることになったんじゃないかな? 峠では何度か死にかけたけど(笑)」

そう、今回の旅で僕たちが最も苦しめられ、かつ最も印象的だったのは、毎日数えきれないほど越え続けた峠だった。国土のほとんどを山岳地帯が占める日本を自転車で旅する以上、避けては通れない峠。けれど幾多の峠を越えていくうちに、不思議なことに峠がそれほど嫌いではなくなっている自分がいた。気が遠くなるような峠にもいつか終わりはあるし、山登りと一緒で、登りきればやっぱり気分がいい。峠を越えるか越えないかだったら、越えたほうがまちがいなく充実した1日になる。でもそれって、「1日」を「人生」に置き換えたって同じことなんじゃないかって、峠で歯を食いしばりながらいつも考えていた。

「たしかに峠はキツいし、距離やスピードを考えたら国道沿いを行くのが正解かもしれないけど、旅の楽しさを考えたら絶対峠を越えたほうがいいですよね。1日1峠は欲しいって僕も思う(笑)。それに峠があるおかげで日本は景色が単調じゃなくて飽きない。峠を越えると平地に出て、また峠を越えると平地があって、ひと苦労して峠を越えるごとに次の街や集落に出る感覚が、すごく『旅感』があってよかった。そんなことも今回の旅で気づけたことですよね。自分は今までバイクパッキングをアクティビティ寄りに捉えていて、『この下り坂のカーブをどう駆け抜けるか』みたいな部分にフォーカスしていたんです。でも、旅なんだから訪れる先が自分に何かをもたらしてくれるんだっていう、当たり前のことを思い出させてくれた。移動して景色が少しずつ変わっていって、自分の気持ちも変わって、それが楽しい。バイクパッキングっていうとちょっと難しそうに思われるかもしれないけど、じつはこんなふうに肩肘張らずに楽しめる旅の方法なんですよね。自転車で走る気持ちよさや自由さを感じながら、どこまでも旅ができる。今回より旅が長くなったって、装備は変わらないですからね。半日洗濯物を乾かす時間があれば、いくらでも旅を継続できる。今回京都だけでもすごく発見があったし、まだまだ日本国内にも見たことのない景色がたくさんある。帰ったら、また日本地図を見返してみようと思います」
  
千代田高史 | Takashi Chiyoda
東京・岩本町にあるアウトドアショップ・ムーンライトギアの代表とバイヤーを務める傍ら、海外ブランドのディストリビューション、イベント運営、オリジナルプロダクトの開発など、アウトドアシーンを舞台にさまざまな活動を展開中。自身もハイキング、ファストパッキング、バイクパッキングなどを通じてチャレンジングな旅の発信を行っている。

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