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  • Photography: Yasuyuki Takagi

リオで生まれた世界的な発明。ボサノヴァ的ミクスチャーの美学

, 2016/05/11

「私たちブラジル人は小さいころからとにかく“楽しむ”ことで、サッカーのスキルを磨いていく。空き地に子どもが数人でも集まればすぐに組み分けが始まり、ゲームがスタートする。しかも30点取ったほうが勝ちなんていうルールで、1点くらい取られても関係なし。狭いスペースだから、ぶつかり合い、さまざまな人種の仲間と協力しながら、個人個人で工夫する。なにより点を取る機会が多いから、その喜びを体感するシーンも増える。楽しいと感じればみな、人一倍、がんばるでしょう。そういう環境が当たり前だから、この国では偉大な選手が数多く育つんだと思う」

日本でもサッカー解説者として知られるブラジル人のマリーニョさんは、こんな話をしてくれた。言葉どおり、原っぱに転がる石ころやゴミをものともせず、サッカーに興じる子どもたちをリオでは多く見かける。失点も、障害物も、関係なし。あらゆる状況を受け入れ、貪欲に楽しむことだけを考えて夢中になる姿は、この国のマインドを象徴しているようにも見えた。ブラジルではいかに楽しむかが人生最大の目的であり、その成果としてさまざまな発明、天才が育ってきたのだ。

1500年にブラジルが発見されて以来、この国はじつに多くの人種を呑み込みながら、飛躍的に成長してきた。ポルトガル人を筆頭に、オランダ、フランスやドイツ、日本などからの移民を積極的に受け入れ、アフリカからは膨大な数の労働者を移り住ませながら、自国の経済を発展させてきたのだ。おまけに、日本の22倍以上という広大な国土には、西方にアマゾンの大河、南方にパタゴニアといったエリアも含まれ、古くからさまざまな部族、先住民がこの土地で暮らし続けていた。こうした事情を背景に、ブラジルという国は「よいものをミックス」していくという文化を磨き上げていく。異種のカルチャーや人間が交わるにはそれなりの拒否反応が伴うはず。そのまま相容れないものと諦めてしまい、お互いが譲らなければ双方の距離は離れていく一方だ。だからブラジルには、相手をまず許容し、楽しみながら複数のものを混ぜ合わせるという文化が根づいたのだろう。その最大の成果物が音楽だという声を、現地では多く耳にした。リオを拠点に活動を続ける音楽家のジョイス・モレノは、こんな意見を聞かせてくれた。

「私たちカリオカ(リオデジャネイロ出身者のこと)は、スペシャルな楽観主義者。どうすれば楽しくなるかを考え、日々、暮らしている。こういった街の空気が個性的な音楽を生んだのだと思う。もちろん、ブラジルの他の地域にだって音楽はたくさんあるけど、リオは特別。この街でいろいろなものが混ざり合えたからこそ、ショーロやサンバ、ボサノヴァといった音楽が育った。ひとことで言えば、リオはいつもスイングしている街。だから今でも新しいものが生まれ続けている」

そんな話をしながらボサノヴァを聴いてみると、この音楽はたしかに多様なリズム、メロディ、アイデアのミクスチャーだということがおぼろげながらわかってくる。そこから薫るのはクラシックやジャズ、ショーロやサンバといったさまざまな音楽の香りだ。

旅を続けるにつれ、トム・ジョビン(アントニオ・カルロス・ジョビンの愛称)やヴィニシウス・ヂ・モライス、ジョアン・ジルベルトらが何を重視し、どうアイデアを重ね、なぜボサノヴァができ上がったのかを少しずつ理解できた。彼らは街が発するヴァイヴに影響されながら、混ぜ合わせることで生まれる化学反応を楽しみ、その完成物が発散する先進性を精いっぱい愛でた。たとえ旅人でも、歩けば歩くほど染み込んでくる、ブラジル人のマインドセット。これからも、この国からは偉大な発明が多く生まれるだろう。そんな思いが、次第に確信へと変わっていった。

» PAPERSKY #50 Rio de Janeiro | Bossa Nova Issue

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リオデジャネイロ
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