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  • Photography: Kiyoshi Nishioka
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日本の魅力再発見の旅 奈良/天理

, 2016/05/09

日本では古来より山を神と捉え、崇めた山岳信仰があった。吉野に広がる山々や大神神社などがその名残を今に伝える。周囲に古墳が密集し、日本書紀に記される古道、山の辺の道が奈良へと続く。うるわしき、まほろば。奈良と天理をめぐる旅へ。

日本書紀で表記される日本武尊※1は、ヤマトタケルノミコトのこと。日本と書いて大和、すなわち奈良県を指す地域名でもある。「大和は 国のまほろば たたなづく 青垣山ごもれる 大和し うるはし」死を目前にしたヤマトタケルノミコトは、故郷を懐かしみ歌った。ここでの大和は、奈良であると同時に、美しいニッポンの風土。自然のなかで自然に立ち向かいながら重ねられてきた、先人たちの営み。それによりつくりあげられたのが、世界に誇る日本の原風景であろう。

訪れるたび、日本人であることを強く実感したり、何度も訪れなくてはならないなぁと、不思議にそう感じることがある。ただ、奈良といえども広い。点在する名所への交通の便は、決してよいとはいえない。それならば、公共の交通機関や車以外の手段でめぐってみようとする思考を持てないものだろうか。

宗教法人・天理教が本拠地を置く天理市。掃除が行き届いた駅前に掲げられていた「山の辺の道」の案内板。南は三輪山の裾に広がる桜井市から天理市まで約16km。さらに北へ約12km、奈良まで続く。日本最古の道とされ、いにしえの人々が生活道として行き来していた名残に、神話の世界へたびたび誘われる。山々に抱かれた盆地・奈良ならではの風景。大和三山の美しい眺望もみごと。日常の暮らしを、集落に垣間見るのも楽しい。小さな丘と思しきもののいくつもが古墳であったりと、稀なる体験が待ち受けている。歩く、奈良。私たちの手段は、そうと決まった。

今も儀礼を重んじ、日ごと、白い衣を纏い、お山へ向かう修行者たち。足元は素足。「大神神社」は、三輪山そのものがご神体にされている。国をつくった神であり、農工商すべての産業、酒づくりの守護神で、三輪明神と親しまれている。ここ10年ほどで入山者も増えているというが、足を踏み入れることさえ恐れ多いという人もいるという。約2時間の登下山に際し、水以外の余計な飲食はもちろん控え、私語も慎み、敬虔な気持ちで登拝する。無言でひたむきに歩みを重ねるにつれ、五感も研ぎ澄まされる。

登拝を終えて下山すれば、褒美も待っている。大神神社の二の鳥居前には、特産品の三輪そうめんをいただけるお店が並ぶ。茶屋のような趣の「森正」名物は、冷やしそうめん、柿の葉ずし、寒い時期にはにゅうめん。下山後の、どこかすっきりとした心身の奥へ、すーっと気持ちよく、美味しく届く。

三輪山を後にして、山すそに広がる桃や柿、みかん畑で四季の移ろいを感じながら北上する。山の辺の道には、記紀万葉※2の歌碑が点在している。いにしえの人たちの往来を感じながら、古典の言葉や暮らしや心を、歌で鑑賞する。日常から少し離れたようなそんな一歩一歩は、なんとも乙なのだ。景行天皇陵から崇神天皇陵へ抜ける展望コースからの眺望は、この道最大のご馳走である。加えて、あちら側から見る私たちは、きっと、柿畑の景色に溶け込んでいる。絵画のような情景の一部になっていることを思うと、少し嬉しい。

山の辺の道は、奈良に現存する貴重な環濠集落のいくつかを抜ける。周囲に濠をめぐらせた集落の、細い道の左右に並ぶ家々からは現在の暮らしが垣間見え、無人販売の小さな売り場も目立ってくる。集落を抜けたところで、一際目立っていたのが「せんぎりや」の店先だった。近所の農家から出たイチゴの端物が、ヘタも取られパックに並べられて100円! 冷蔵庫の中で行儀良く、私たちを待っていた。休憩用の机や椅子、無料のお茶、楊枝まである。好天のその日、裏の住まいではここの主が、切り干し大根の準備に追われていた。

趣ある「長岳寺」も、妙に心惹かれる場所であった。玉眼を使用した最古の阿弥陀像や、にゅうめん、抹茶などを目当てに立ち寄るのもいいだろう。その近くには、ハイカーのための休憩所「天理市トレイルセンター」や、少し北には「天理観光農園」もある。みかん狩りやBBQなどを楽しめるほか、カフェも併設。農家の東新治さんがつくる野菜や果実を、娘さんが“おいしい”魔法をかけ、訪れる人の胃と心を充たす。寺社仏閣、トレイルセンターに、地域の人と味覚を堪能できる観光農園。歩いてこそ出会うことができる景色が、山の辺の道にはいくつもあった。

三輪から1日かけてゆっくり歩くならば、「石上神宮」の神々しい静寂が、ちょうどよい終着地となる。地域の案内人も神主も、神宮のことを歌った短歌を自信をもって紹介くださった。住宅地や幹線道路に寄り添うようにある古道。古墳は、公園のように親しむこともでき、敬虔な心持ちで寺社を訪れることもできる。地域の人も訪問者も、誰もが気ままにふれたり散策できるということに、幾千年に渡る先人の業績、ロマンを感じずに歩くことはできなかった。

※1 古事記では「倭建命」と表記される
※2 古事記、日本書紀、万葉集の総称
 
PAPERSKY Tour de Nippon in 奈良・天理(2016.5/28-29開催)
http://www.papersky.jp/tour-nara-tenri

PAPERSKY Tour de Nippon in 奈良・天理 Movie
https://youtu.be/4vwcUsT-PQY

» PAPERSKY #50 Rio de Janeiro | Bossa Nova Issue

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