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  • グシュタード駅に到着する列車に乗り込む。
  • 車窓からは牧歌的な風景が広がる。
  • レマン湖が見えてきた。
  • 斜面を利用したラヴォー地区のブドウ畑。
  • Domaine Bovyのエリック・ボヴィーさん。
  • グラスから鮮烈な香りが立ち上る。
  • レマン湖の対岸はフランスだ。

ローマ時代から続くワイン作り|スイス、持続可能な食 (5)

, 2015/11/28

ロープウェイで山を下り、グシュタードの鉄道駅までは車で15分ほど。アルプスの山間の景色を堪能できる『ゴールデンパス』と名付けられたパノラマ列車に乗り、モントルーを目指す。牧場や湖、優雅なシャレーなどの景色が車窓を移ろい、背景にはスイスアルプスがそびえる。グシュタードからレマン湖の東端に位置するモントルーまで、90分弱の鉄道の旅。レマン湖畔に位置するフランス語圏のこの街で列車を下りると、グシュタードよりも随分と気温が高い。この辺りで海抜300メートル台後半。スイスで最も標高の低いエリアに数えられる。

モントルーから西に向かい、ローザンヌとの間に位置するレマン湖北岸の丘陵地帯がラヴォー地区だ。この地域では、ローマ時代よりブドウ栽培が行われていた痕跡が見つかっている。そして、現在のような傾斜地を利用した段々畑の歴史は、11世紀にまでさかのぼる。ベネディクト修道院とシトー修道院が土地を治めていた当時より、ブドウ栽培とワイン作りが行われてきたのだ。景観を守りながらワイン生産の文化が受け継がれてきたことが評価され、2007年には「ラヴォー地区の葡萄畑(英 Laveaux, Vineyard Terraces)」の名称でユネスコの世界文化遺産に登録された。代々この地区に受け継がれるワイナリーの経営に携わり、11ヘクタールのブドウ畑とワインの製造保管設備を保有するドメーヌ・ボヴィー(Domaine Bovy)のエリック・ボヴィー(Eric Bovy)さんに話を聞いた。

「ラヴォーでは、氷河期末期の11000〜12000年前に、石灰質の豊富な氷堆石の土地が生まれました。その地質がブドウ栽培に適しており、現在のラヴォーを代表するシャスラというブドウの特性を伸ばすことができました。ほどよくドライで果実味の豊かなシャスラ種の白ワインは、ここの地質と3つの太陽によって生まれているのです」

南西に面したブドウ畑の斜面に対して空から注ぐ陽光。レマン湖面を鏡にして照り返す反射光。そして、段々畑を形成する石垣に吸収され、夜間の気温の落ち込みを防ぐ輻射熱。それがボヴィーさんの語る「3つの太陽」だ。繊細なシャスラ種をうまく栽培できる土地は非常に限られているという。斜面の水はけなども含めた様々な条件が重なり合い、透明感があり喉越しがよく、爽やかな香りと柔らかな酸味を備えた黄金色の白ワインを生み出すのだ。

夜も更けると、ほろ酔いのボヴィーさんが「なみなみ?」「てんこ盛り?」と片言の日本語で白ワインをグラスに注いでくれる。ヨーロッパの言語はもちろん、日本語のほかに中国語や韓国語も少し覚えている。「グラスにワインを注ぐまでのコミュニケーションがとれれば、あとはワインのアロマとテイストがすべて語ってくれる」と笑顔で話してくれた。

世界遺産に登録されたラヴォー地区では、指定のエリアに新たに建物を建てることができないなど、いくつもの条件が課されている。景観保護を目的に経済発展を妨げられるのは不本意だと考える住民ももちろんおり、議論は常に続いている。しかしながら、この景観も含めた地域の伝統がワイン生産を守り続け、また観光客を呼び寄せているという認識は、景観保護論者も反対者も共有しているという。論点となっているのは、規制の度合いなのだ。

今回の旅を通して、持続可能な食を実現するために必要な精神性が見えてきた。おそらく老荘思想でいうところの「足るを知る」なのだ。権力者や大規模な事業の経営者に対して、「足るを知る」を重んじる住民たちがストップをかけ、文化的伝統と自然環境、そして多くの人にとっての豊かさとは何かを共有しようと声をあげる。伝統的な取り組みを見ても、現代の環境から生まれたイノベーションを見ても、それは共通している。チューリッヒからラヴォー地区までスイスを横断する旅を通して、そんなことを実感することができた。

取材協力:在日スイス大使館
https://www.facebook.com/SwissEmbassyTokyo

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