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  • アルプスのキャビアは格別だ。
  • トロッペンハウスの貯水槽を泳ぐチョウザメ。
  • グシュタードのマティ家のロッジ。
  • アルプケーゼは結婚式でも振る舞われる。
  • 伝統の手仕事で仕込まれるチーズ。
  • 4代目のドミニクさんと奥さんと長男。
  • 取材当日はアルプホルン奏者が特別参加。
  • 山を下り、鉄道の駅を目指す。

山中のキャビア生産と伝統的なチーズ作り|スイス 持続可能な食(4)

, 2015/11/24

ベルン州南部の街、フルティゲンに位置するトロッペンハウス(Tropenhaus)を訪れた。トンネルを掘削する工事で確保した地熱エネルギーと湧き出た地下水を利用し、温室で果物を生産する施設だ。数々の熱帯植物に加えてチョウザメの養殖も行い、良質のキャビアを生産する場所としても注目を集めているという。

水温が10度以下になると、チョウザメは餌を食べなくなり体が大きく育たなくなってしまう。しかし、トロッペンハウスの貯水槽の水温は、地熱を活用することで年間を通じて18度に保たれており、チョウザメにとってストレスのない環境を実現している。また、魚油や魚粉、大豆などを混ぜ合わせた有機飼料を与えることで、健康で美味なキャビアを採取し、レストランで提供している。

レストランの指南で、親指と人差し指の付け根の間にひとさじのキャビアを乗せる。ヒヤリとする冷たさが常温に戻ったら食べごろだ。たしかに美味しい。キャビアを食べ慣れているわけではないので質のレベルを明言できないのがもどかしいが、新鮮で味わい深く、しつこさは感じられない。舌の上のキャビアを上あごに押し付けると味わいが広がり、塩気のあるパンとの相性もたまらない。自然エネルギーを現代の技術で有効活用し、思いもかけぬ「持続可能な食」と出会うことができた。

フルティゲンから西へ、グシュタードを目指す。ベルン州の高地、ベルナー・オーバーラント地方の山岳リゾート地で、冬になるとスキー客で賑わう場所だ。ゴンドラに乗り、山の中腹で降りてしばらく歩くと壮大なロッジが見えてくる。裏手に牛舎があるマティ家では、4代目が現在も伝統的な方法でチーズ作りを行っている。
搾りたてのミルクを巨大な釜に入れ、火にかけて32度まで温める。凝固剤とバクテリアを入れ、撹拌すると徐々に固まってくる。分離した乳たんぱく質を布で引き上げ、上澄みを搾り、圧をかけて固めてチーズを作る。薪をくべながら火力を調整するなど、驚くほどに昔ながらの製法で作られている。4代目のドミニク・マティ(Dominik Matti)さんは、一家に伝わるチーズ作りに胸を張る。

「ベルナー・アルプケーゼと呼ばれる伝統的なチーズをうちでは作っています。私は祖父からつくり方を学んだのですが、シンプルな方法で作られた祖父のチーズが好きだったので、やり方を変える必要など全く感じませんし、その方法を踏襲しています。チーズ作りは夏に行うのですが、年によっても日によっても気温や湿度は変動するので、常に丁寧なチェックは欠かせません。15分ごとにテイスティングをして、どのようなチーズになりそうかを確かめながら火にあてる時間や釜との距離を調整しなければいけません」

夏の間は標高の高いこのロッジに牛を連れてきて、涼しい場所でチーズ作りをする。そして冬には、麓のグシュタード村に移り、飲用の牛乳を出荷する。さらに、山頂にももう一軒家があり、牛の放牧のためにそこまで連れて行く日もある。ひと夏に生産するチーズの総量は2700kg。職人であるマティさんの手仕事と、毎日のテイスティングで培われた味覚と嗅覚が高品質なチーズを安定して生み出す。「花と緑が多く、山の澄んだ空気で健康に育った牛の乳から、味わいと香りの豊かなチーズができあがるのです」。伝統的な技術に誇りを持ち、その味を大切に守り続ける。文化を守るという意味でも、そこには持続可能性を感じられた。

トロッペンハウスの先進的な取り組みと、グシュタードで見たチーズ作りの伝統。アルプスの気候や自然エネルギーの恩恵を受け、謙虚に生産する姿勢がいずれにも共通している。次回はグシュタードからパノラマを満喫できる鉄道の旅。レマン湖畔のワイナリーがスイスの旅の最終地点だ。
 
取材協力:在日スイス大使館
https://www.facebook.com/SwissEmbassyTokyo

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