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生きている木を活かす、ホンカのホームづくり

北欧の深い森から生まれ、長い歴史をもつログハウス。その文化を現代に継承しながら技術革新を続け、現代の暮らしに求められる機能とデザインを提案する「ホンカ」。そのメイド・イン・フィンランドの現場を訪ねた。  国土の多くを針葉 […]

09/10/2015

北欧の深い森から生まれ、長い歴史をもつログハウス。その文化を現代に継承しながら技術革新を続け、現代の暮らしに求められる機能とデザインを提案する「ホンカ」。そのメイド・イン・フィンランドの現場を訪ねた。
 国土の多くを針葉樹の森に覆われた北欧諸国では、開拓のために伐採した丸太を積み重ね壁として利用するログハウスが古くからつくられてきた。住宅が近代化しブロックや2×4工法が広まった現代においても、古来、自然とともに暮らしてきたフィンランドの人々の間ではその人気は根強く、サマーハウスをはじめ、ログハウスを心の癒しの場として愛好する文化が受け継がれている。
大径の丸太から職人が一本ずつ皮を剥き、斧やチェーンソーなどを使い人力で刻んでいく。「ハンドカット」と呼ばれる伝統的なログハウスは迫力と野性味をもちながら、その自然に任せた工法ゆえに気密性や快適性において不安定な面があった。こうしたデメリットを解決するべく、独自開発したマシンを用いて精密に製材することで居住性・耐久性の高い家づくりを可能にする「マシンカット」の技術を世界で初めて導入したのが、1958年、フィンランドで創業したホンカ社だ。
創業以来、高品質なログホームづくりのための革新的技術を次々と開発し、今や世界最大のログホームメーカーとなった同社の「心臓部」ともいえる工場が、フィンランド中央部の街カルストゥラにある。豊かな緑に囲まれた風光明媚なエリアにある広大な敷地を、工場長の案内により見学させてもらうことになった。「私たちはつねに一貫してハイクオリティな製品を提供するため、東京からロシア、アパラチアン山脈に至るまで世界中から届く図面をすべてここに集め、スタッフが一棟ごとに作図し、オーダーされるすべてのログホームの加工をここで行っています」。
工場内でまず圧倒されるのが、数千本にもおよぶ原木のストック。ログ材として使われるのは、北の大地でじっくりと育った、強度が高くカビの生えにくいポーラーパイン。これらの原木は重機で運ばれ、木材の内部をスキャンする機械で診断・選別される。皮を剥いだ原木は高精度なコンピュータで太さや長さなどのサイズを測り、ログや板材など用途別に振り分けられる。こうした作業はマシンで行われるとはいえ、その素材はあくまで天然のもの。操作する人々には高い専門的知識と職人的技術が求められることは言うまでもない。
木は乾燥庫で乾燥され、製材した後さらに数週間も自然乾燥させる。乾燥庫などで使われる電気は、ログ材の製造時に生じるチップや木くずを燃料にした自前のパワープラントで発電しているという。構造材や床材、仕上げ板などに加工されたパーツは大量にストックされ、これらをアソートし、ラッピングを施したうえで、最終的にここから世界中へとコンテナ輸送される。
ていねいな工程と徹底的な品質管理のもとで製造されるホンカのログホームは、通常、想像されるログハウスのそれと比べて非常にモダンなデザイン性を備えており、またその機能においても現代の一般的な木造住宅を上まわるという。「厚みのあるログ材は中心まで火が入るのに時間がかかるので燃えにくく、また軽くて強いため、抜群の耐震性をもっています。また天然木にはセルロースと呼ばれる空気を多く含む細胞がつまっているので、優れた断熱性もあります」と工場長は胸を張る。そして、彼らがログホームづくりにおいて最も大切にしているのは「住み手が健康に暮らせる、安全な家」だという。
工場から車で1時間ほどのユヴァスキュラにある、彼らの「ホンカ・ヘルシー・ホーム」で暮らすロンクヴィストさん一家を訪ねた。昨年、開催された「ハウジング・フェア」のモデルハウスとしてオーダーされた家である。「以前は子どもたちがカビやダニなどが原因のアレルギーに悩まされていたのですが、ここに移住してから、すっかり良くなりました」と母のマルヨさんは満足そうに語る。家になった後も呼吸を続ける木の家は、細菌・ダニの発生を抑える調湿機能があり、室内を理想的な相対湿度に保ってくれるという。調湿・断熱の他にも、天然木には蓄熱の機能もある。冬は日中の光を蓄積し、夏は夜の涼しい空気を貯め、昼の時間に放出する。なるべくエネルギーを浪費せず、最先端の技術開発をとおして自然の力を最大限に引き出す。ホンカのログホームには、森の恵みを生活の糧とし、あらゆる知恵を蓄えながら生活してきたフィンランド人のスピリットが反映されている。
 
ホンカ・ジャパン
www.honka.co.jp