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旅の記憶を持ち帰り一杯に込める、浅草のバーテンダー

お酒の勉強と称して、いつもの酒屋さんをブラブラしていると、ウィスキーの棚に一冊の本が差してあるのを見つけました。白壁の蒸留所の写真が気になって手に取ると、浅草、隅田川沿いで「DORAS」というバーを経営する中森保貴さんの […]

08/27/2015

お酒の勉強と称して、いつもの酒屋さんをブラブラしていると、ウィスキーの棚に一冊の本が差してあるのを見つけました。白壁の蒸留所の写真が気になって手に取ると、浅草、隅田川沿いで「DORAS」というバーを経営する中森保貴さんの紀行文でした。彼は1年に1回、2週間ほどヨーロッパの蒸溜所を訪れる旅に出かけます。行き先は毎回異なり、スペインならアブサン、フランスならコニャック、スコットランドならウィスキー、ポルトガルならポートやシェリーといった具合に、その土地固有の酒があるところ。先々で生産者と会話をし、製造工程を見学、もちろん飲みます。表紙の写真はスコットランド・アイラ島のラガヴーリン蒸留所。アイラ・フェスティバルという年に一度のお祭りに合わせて上陸した彼は、島の8つの蒸留所をすべて訪れ、ひとり1本しか買えないその年限定のフェスティバル・ボトルを朝から並んで全種類買うというタフネスっぷりを見せてくれます。なんと彼のバーに置かれている酒は、ほとんどこのようにして実際に訪れて買いつけたものなのだそうです。
しかし彼の旅はバイイングだけではありません。蚤の市で骨董品のグラスを探し、昼や夜には郷土料理とそれに合わせたお酒を楽しむ。パリではシャトレ劇場でオペラを鑑賞し、スペイン、バスク地方の海辺の街、ピアリッツでは地元のサーファーに混じって波に乗る。「その土地の酒はその土地の空気のなかで飲むのがいい」という持論をさらに深めるがごとく、貪欲にその土地と関わりをもちながら、お酒と立ち向かっていくのです。
さて、この本を読んだ僕が向かった先は、もちろん浅草のバー「DORAS」。カウンターにわずか7席、いわくありげなボトルが棚に3列編隊で鎮座します。本の続編の計画も教えてもらいつつ、飲ませてもらったのはボウモアの2012年のフェスティバル・ボトル。これがすごくてって話は、ぜひご自身で体験してみてください。
旅するバーテンダー
―浅草発。究極の一杯に向けてヨーロッパを駆ける
中森保貴 双風舎