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ものづくりの村を支える「Nikari」のデザイン哲学

ヘルシンキの東、車で90分ほどの場所にあるフィスカルス。この小さく美しい村の名前は、かつてこの地を本拠地にしていた有名な鋏メーカーのブランド名として、今や世界中で知られている。17世紀から鉄製品の製造が盛んになったフィス […]

08/24/2015

ヘルシンキの東、車で90分ほどの場所にあるフィスカルス。この小さく美しい村の名前は、かつてこの地を本拠地にしていた有名な鋏メーカーのブランド名として、今や世界中で知られている。17世紀から鉄製品の製造が盛んになったフィスカルスは、1970年代に同社がこの地を去った後も、その伝統に惹かれたクリエイターたちが移り住んだ。そして、かつて工業地帯として栄えた19世紀の建築を再利用して彼らがアトリエを構えたことから、“アーティスト村”として人気の観光地になったのだ。多くの職人やデザイナーが住むこの村のなかでも、1967年に同地で木工家具メーカー「Nikari」を興し、本社と工房を構える家具デザイナー、カリ・ヴィルタネンは特別な存在だ。アルヴァ・アールトやカイ・フランクといったフィンランド・デザインを代表する巨匠たちと協働してきた彼は67歳になる今もほぼ毎日、腕のいい家具職人たちが集まり仕事に精を出す工房に顔を見せる。
ヴィルタネンに始まるNikariの家具デザインの特徴は、徹底的にシンプルで無駄のないフォルムと、素材本来の持ち味を活かしたナチュラルな風合い。形状として美しいだけでなく、組み立てのしやすさや輸送コストといった面のバランスまで追求したトータルなデザインは、素朴さと合理性を兼ね備えており、木工家具づくりの盛んな北欧諸国のなかでもフィンランドらしいもの。オークやアッシュを除き木材の多くはフィスカルス周辺の森で伐採したものを使い、エネルギーは近くの流水を使った水力発電を利用するなど、ローカルな資源を活かしながら世界22ヵ国に製品を輸出中。創立以来のフィロソフィーが、現在に至るまでフィスカルス村のものづくりを支え続けている。
Nikari
http://nikari.fi/
 
» PAPERSKY #48 Finland | Wood Issue